札幌の劇団「yhs」代表・南参に聞く
~コロナ禍で挑む連続公演企画「Re:
BoostAge」と劇団公演『幕あけ前』

札幌を拠点に活動している劇団「yhs」が、2021年9月、11月、12月にわたり、連続公演企画「Re:BoostAge(リブーストエイジ)」を開催している。
同じく札幌を拠点とする2劇団にyhsが声をかける形で立ち上がった本企画は、お互いに手を取り合うことでアフターコロナへ向けた創作体制の強化と、札幌演劇の活性化を見据えたものになっている。第一弾企画は9月に札幌・シアターZOOで上演された、演劇家族スイートホームによる公演『砂浜も冷えるから』、第二弾企画は11月に同じくシアターZOOで上演された、演劇公社ライトマンによる公演『T.C.R/S.P.T』、そして第三弾企画は12月9日(木)~10日(金)に札幌市教育文化会館にて上演される、yhsによる公演『幕あけ前』だ。
本企画、そして間もなく上演される『幕あけ前』について、yhsの主宰で劇作家・演出家の南参(なんざん)に話を聞いた。
■一つの劇団だけでは難しいことも共に乗り越えられたら
ーーまずは「Re:BoostAge」という企画を立ち上げたきっかけや意図を教えてください。
今年の4、5月くらいだったと思いますが、演劇公社ライトマン(以下、ライトマン)が6月に予定していた公演を新型コロナ感染症拡大の影響で中止することになってしまったんです。そもそもライトマンは昨年11月に公演をやる予定だったのが延期になった上で今年6月に公演をやろうとしていたのに、それも再び延期になってしまった。これは大変なことだなと思いました。他の劇団の人たちとも話をしてみると、やはりみんな大変な思いをしていて、今後どうやっていったらいいのかわからない、公演を予定してもまたいつ中止になるかわからない、という思いを抱えていたんですね。
yhsは中止になった公演もありましたが、それでも昨年8月から何回か公演をやって来ているので、コロナ禍でも上演してきた僕らの経験を伝えたりしながらお互いに協力していけたらいいな、と思って声をかけたのが、ライトマンと演劇家族スイートホーム(以下、スイートホーム)でした。

演劇公社ライトマン『T.C.R/S.P.T』舞台写真

ーースイートホームは20代が中心、ライトマンは30代が中心、yhsは40代が中心、と世代がきれいに分かれているのが面白いなと思いました。
それはたまたまだったんですけど、でも特に若手の劇団は他の世代の人たちと一緒にやる機会があまりないと聞いたので、こういう時だからこそ一つの劇団だけでは難しいことも、違う世代の劇団同士で共に乗り越えられたらいいな、と思いました。
――本企画に際して、ライトマンの代表・重堂元樹さんが「声をかけてもらってなかったら、演劇の活動自体やろうという気が湧かなかったかもしれない」という発言をされていました。この状況下で演劇をやることの困難さが伝わってくる重い言葉だなと思いました。
yhsは昨年の8月に公演をやりましたが、準備段階から「本番の頃は状況がどうなっているんだろうか」と全く予測がつかなくて不安でしょうがなかったです。正直、上演できたのは運がよかったというのもあると思います。もちろん感染対策はしっかりやっていましたが、昨年の段階ではまだ今ほどウイルスに対する知見も蓄積されていなかったですし。これまでは作品が面白いかどうかということだけ考えて稽古すればよかったのに、それ以外にも感染対策とか考えなければならないことが増えて、心労が厳しかったです。
それでも僕たちはまだ昨年公演をやれていたので、今回も何とかなるんじゃないかという気持ちを持てたんですけど、スイートホームはコロナ禍になってから1度も公演をやれていなかったし、ライトマンは2回も公演が中止になっていたし、不安の方が先に立ってしまっていましたね。スイートホームは本企画の第一弾として9月に公演をしましたが、無事に終わったときにはみんな本当に安堵して、ちょっと涙していました。
演劇家族スイートホーム『砂浜も冷えるから』舞台写真

■『幕あけ前』は誰もが楽しめるドタバタ喜劇
――昨年8月の公演のときには、コメディを楽しんでもらえるのか正直不安だったとお聞きしました。この状況下で演劇をやっていいのか、コメディをやっていいのか、という葛藤もあったのだとお察しします。
昨年は春から7月ぐらいまでほぼ演劇公演が行われなかったので、8月に上演したときにどういった状態でお客さんが見に来てくれるのかわからなかったんですよね。見に来てくれる人はきっと「楽しみたい」と思っているはずだけど、とはいえこれまでのように見てもらえるんだろうか、楽しんでもらえるんだろうか、とすごく考えました。
――昨年8月に上演された『ヘリクツイレブン』は、2011年が初演で、昨年は再々演でした。テンポもよくスピード感もあるワンシチュエーションコメディで、素直に楽しめる作品だなと思いました。劇団で上演される作品はコメディが多いのでしょうか?
元々コメディが好きだったので、いろんなタイプのコメディをやろうと思っていたのですが、年齢を重ねるうちに社会的なことにも興味が出てきたので、シリアスな作品のときもあります。劇団の代表作と言われている『しんじゃうおへや』という作品は死刑執行のお話なんですよ。死刑を題材にした重い作品で、それまではほとんどコメディしかやっていなかったので、2009年の初演のときはみんなに驚かれましたね。コメディにしてもシリアスにしても、何かしら社会と繋がれる作品を作れたらいいなと今は思っています。
yhs『ヘリクツイレブン』(2020年上演)舞台写真 撮影:高橋克己
――今回上演する『幕あけ前』はコメディですか?
ものすごいわかりやすいコメディです。コロナ禍になって改めて自分の周りを見たときに、もちろんみんな大変なんですけど、裏方のスタッフさんの大変さについてものすごく考えました。演劇公演が行われなかった間、スタッフさんの仕事もなくなってしまいました。でもそれでスタッフさんが廃業してしまったら今後の演劇公演は立ち行かなくなるわけで。それで裏方の話を書こうと思いました。最初はちょっとシリアスな作品にしようかなとも考えたんですが、でもやっぱり、今作を上演するときに状況がどうなってるかわからないけれど、何かしら楽しい気持ちになれることが今は必要なんじゃないかなと思って、それで子どもからお年寄りまでみんな楽しめるようなわかりやすいドタバタの喜劇にしようと考えました。
■やっぱり劇場で見たいな、見て欲しいな、という気持ちが強くある
――yhsは1997年に旗揚げして、札幌で24年続けてこられました。
僕らの上の世代あたりは、地方で演劇を続けていくのがなかなか難しい時代だったんだと思うんです。だから、札幌で駄目だったら東京に行くかお芝居自体やめちゃうか、という選択をする人が多かったので、その流れに負けたくないと思いました。90年代後半ぐらいから、青森の弘前劇場とか、北九州の飛ぶ劇場とか、地方でも面白い作品を作って評価されている劇団がいろいろ出てきたので、札幌でも何とかできるんじゃないかと思って、劇団としてはいろいろ形を変えつつではありますが、なんとか続けてきています。
――これまでの上演記録を拝見したら、北海道以外でも公演をされていて、大阪公演が多い印象ですが、何かご縁があるのでしょうか。
大阪の劇場「インディペンデントシアター」を拠点に開催されている「INDEPENDENT」という一人芝居フェスティバルが2012年に札幌でも開催されて、僕の作・演出で劇団員の小林エレキが参加したのが最初のきっかけです。その後、劇団で『しんじゃうおへや』を上演している時期にたまたまインディペンデントシアターの方が札幌に来ていて公演をご覧になって、そうしたら「ぜひ大阪に来てください」と熱心に言ってくださって、それで2016年に初めて大阪公演をやって、そこからはほぼ毎年のように行かせてもらってますね。

yhs『しんじゃうおへや』(2016年上演)舞台写真 撮影:高橋克己

――北海道以外の場所で公演をするということは、創作や劇団活動の上で何か刺激になっていますか。
北海道だとどうしても他の地域に行くというのが地理的に大変なのでなかなか機会がなかったんですが、初めて北海道以外で公演をしたのが2010年の福岡でした。そのときは「全く知らない劇団を見て楽しんでもらえるのか」と思いながら臨みましたが、やっぱりいい刺激になりましたね。「楽しんでもらえた」という手ごたえを感じられたのは大きかったです。
様々な地域で演劇活動をしている仲間が増えるというのも、メリットの一つです。活動する上でのモチベーションにも繋がりますし、そういった出会いを求めて地元以外の地域でも公演を行っている面もありますね。東京にも2018年に『きつい旅だぜ』という作品で行って、本当は昨年も行こうと思っていたんですけど、コロナ禍で状況的に厳しくて断念しました。また機会があればぜひ東京にも行きたいです。
――地域の枠を超えた横の繋がりがもっとできていくと、また何か新たな面白いことが生まれてくるかもしれないですね。
そうですね。また普通に行き来できるようになるのにまだあと1、2年くらいかかるかもしれないですけど、今やれない分これからはもっといろいろな機会が持てるようになるといいなと思います。コロナ禍で無観客の配信公演とかZoom演劇とかも行われるようになって、離れた地域の公演も見られるというメリットももちろんありますが、やっぱり劇場で見たいな、見て欲しいな、という気持ちが強くありますし、それが早く以前のようにできるようになって欲しいですね。
――「Re:BoostAge」という企画が演劇を持続可能にしていくことの一助になることを期待しています。この企画はこれからも継続していく予定ですか?
今回の企画に参加してくれたライトマンとスイートホームはもちろん、他の劇団とも困ったら助け合えるような何かが今後もできたらいいなと思っています。もちろん個人同士の交流というのは今までもあったと思うんですけど、団体として話し合う機会は意外となかったので、いろいろ相談したり、良い作品を作れるように協力したり、お互いに切磋琢磨していけるような繋がりを作っていけるといいですね。
取材・文=久田絢子

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