所属俳優にあてた一人芝居シリーズの
一作『ゴールデンバット』で、大池容
子率いる〈うさぎストライプ〉が三重
に初登場!

劇作家・演出家の大池容子が主宰し東京・仙台・豊岡の三拠点活動する〈うさぎストライプ〉が、来る12月19日(日)、三重県津市の「三重県文化会館」に初お目見えする。
「どうせ死ぬのに」をテーマに、演劇の嘘を使って死と日常を地続きに描く作風を特色とする〈うさぎストライプ〉が今回上演するのは、大池が劇作と演出を務め、所属俳優の菊池佳南が出演する一人芝居『ゴールデンバット』。本公演とは別にレパートリー化を進めている一人芝居シリーズの一作で、12月19日(日)のマチネとソワレ、1日限りの2回公演のみ上演が予定されている。
昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、劇場へ足を運ばずとも演劇を鑑賞できるオンライン上演が増え続ける中、「三重県文化会館」では、「それでもやっぱり生の舞台をお届けしたい!」という思いのもと、《オンステージシリーズ》を企画。900名近く収容できる広大な中ホールの舞台上を使い、100席限定の自由席から俳優の演技を間近に楽しむことができるプレミアムプログラムで、今回の〈うさぎストライプ〉公演は、Vol.1 烏丸ストロークロック『祝・祝日』(2021年1月上演)、vol.2 ままごと『反復かつ連続』『あゆみ(短編)』(2021年5月上演)に続く第3弾として行われるものだ。
うさぎストライプ『ゴールデンバット』チラシ表
本作『ゴールデンバット』は、何度も芸名とキャラクターを変えながら、東京で地下アイドルとして活動していた梅原純子と、路上で誰にも相手にされず歌い続ける老女・海原瑛子の人生が重なり合う物語だ。昭和歌謡をモチーフに、ビールケースとギターという最小限の小道具と、役者・菊池佳南の身体ひとつのシンプルな構成で紡がれていくこの作品は、2017年に東京で初演して以降、宮城県(東松島市、仙台市)、兵庫県豊岡市など各地で上演されてきた。
この『ゴールデンバット』誕生の経緯や一人芝居シリーズについて、また劇団本公演との違いや、初の三重公演にかける思いなどを、大池容子に聞いた。
作・演出を手掛ける大池容子
── 初めてお話を伺うので、創作における根本的なことから伺っていきたいのですが、死と日常を地続きに描いた作品を手掛けられることが多いとか。
そうですね。今回の『ゴールデンバット』に限らず、わりと作品の中に「死」というものを描くことが多くあります。「死」ってすごく特別なことというか、そうなったら終わり、のことではあるんですけども、我々は必ずいつかは死んでしまうわけで。普段はそんなに意識せず生きていると思うんですが、演劇は虚構の世界なので、死んだ人も生きている人も同じように一緒に存在できたりもする、そんなことを作品の中でよくやっています。死んじゃう前に言えたら良かったな、とか、死んじゃっても傍にいればこんな会話をするのかな、とか。「演劇の虚構」と、「死と生きていることが地続きである」ということは結構親和性が高いんじゃないかな、と思って作品を創っているんです。
── 演劇を始められた当初から、そうした作風だったんでしょうか。
〈うさぎストライプ〉を旗揚げして3年目に創った『おかえりなさいII』(2012年上演)という作品があるんですけども、飛行機事故で亡くなってしまった人達がそれぞれ、その飛行機に乗るまで何をしていたか、ということを描いていく作品だったんですが、そこからたぶんそういうことを意識するようになりました。「死と日常を地続きに描く」ということをはっきり意識したのは、『バージン・ブルース』(2017年上演)という作品だったかな、と思います。
── 今回上演される『ゴールデンバット』は、菊池佳南さんの一人芝居として創られて、昭和歌謡を通して2人の女性の人生が描かれる作品ということですが、昭和歌謡をモチーフにしようと思われた理由というのは?
一人芝居については元々書こうと思っていて、劇団に所属している俳優が3人いるんですけども、俳優がみんな一人芝居を持って各地へ上演しに行けるようになったらいいなぁ、ということもあって。じゃあ、一人芝居で何をやるか、というのがスタートだったんですが、台本にもあるように、菊池は実際に「ジュニアのど自慢」で優勝しているんです。歌うのが好きな人なので、菊池が一人芝居をするとしたら歌をモチーフにしよう、と。
それから、この一人芝居をずっと長く続けていけたらなぁという願いも込めて、30代と60代、2人の人間を一人で演じてもらうことにしました。台本を書いた当初は、菊池は30歳になったばかりだったんですけど、これから歳を重ねていくにつれて、もう一人の海原瑛子さんの歳に近づいても成立するようにしたい、と。全然違う、別々の人の人生が混ざり合う、すれ違うぐらいだった人の人生が自分の人生に介入してくる、ということって、意外と気付いていないだけでもしかしたら我々にもあるのかな、ということで、2人の人生を「歌」というひとつのモチーフが繋ぐことがやりたかったんです。
── 歌の中でも、昭和歌謡(渡辺真知子「かもめが翔んだ日」、ちあきなおみ「喝采」など)に特化して選曲されたのはなぜでしょうか。
もともと私が、ちょっと昔の歌が好きなんですね。父親がフォーククルセイダーズが好きで子どもの頃から親しみがあったのと、あとは趣味として、’ 70年代の歌謡曲…沢田研二とかが好きで。あの年代の、特に歌詞は恋愛の話を歌っていてもなんかそれだけではない人生そのものの話だったりとか、歌詞の一部を切り取っても、どういう風にも受け取れるなぁという感じで作られていることとかがすごく好きで、自分の好きな曲から、このシーンに使うならどういう曲かな? というので選曲していますね。
── 1曲だけ、昭和歌謡ではない歌─カーペンターズの「イエスタデイ・ワンス・モア」も使われていますね。
これは、元「ゆらゆら帝国」の坂本慎太郎さんが訳した日本語の、「忘れたくない思い出が 消えかけている…」という訳詞が好きだなぁと思って。年代は違いますけど、やっぱり歌詞で選んでいるみたいなところはありますね。
── 演じる菊池さんの実年齢が上がっていくにつれて、演者としての視点や取り組み方が変化していったり、観客側もそれぞれの年齢によって観点が違ったり、また何年か経って再演を観ることで感じ方の変化も楽しめるような仕掛けのある作品ですね。
そうですね。作品と共に、みんな歳を取っていくという。
── 初演からは4年経っていますが、大池さんご自身が作品に対して感じている変化というのはありますか?
初演の頃よりも作品全体を我々が俯瞰して見ている、という感じはあります。アイドルのライブで勢いよく持っていく、みたいな作品だったのが、じっくり腰を据えてこの2人の人生を見てくださいね、ということをやれているような気がします。
── そうすると、演出的にも変わってきた部分などがあるんでしょうか?
そうですね、台本も上演するたびにちょこちょこ書き変えたりしています。あと、豊岡ではスタジオでやったこともありますし、野外でやったこともあるんです。宮城では、旧酒造店を改修した日本家屋が会場だったりして、会場が変わるたびに演出を当て直すというか、そういったことはしていますね。
── 劇場やスタジオ、野外、日本家屋では雰囲気が全然違って、登場人物の人生の背景も違って見えてきそうですね。
いずれも素敵な場所だったので、その場所の素敵さを最大限使いつつ、その場所をお借りして、それを背景にどういう風に創っていこうか、と。毎回その「場所」からスタートするということで、一回一回立ち上げ直してきました。
── 過去の舞台写真を拝見すると、基本的な舞台セットはビールケースとギター。あとはミラーボールとか?
ミラーボールも無くていいな、というのが野外で上演してわかったので、どんどん削ぎ落とされていきました。
── 今回は900人近く収容可能な「三重県文化会館 中ホール」の舞台上での上演ということで、新しい演出を考えたりされているんでしょうか?
そうですね、下見に行かせていただいた時に、舞台上から見た常設の客席というのがかなり壮観だな、と思ったので、これを背景に作品を上演するのは面白そうなので、それを何か使いたいなと思っています。
── この作品には、梅原純子と海原瑛子以外にも多数の登場人物が出てきますが、演じ分けの見せ方としてはどんな感じになるんでしょう?
そのシーンによってまちまちなんですけども、その人の立ち位置に忙しく移動して、俳優、劇中ではアイドルですが、一人の人間が一生懸命やっているっていうことを見せながら上演するのがベースになっています。まぁそれに限らず、という感じです。基本的には、(梅原純子の代わりにステージに登場する)憂井おびるちゃんのトークショーである、ということですね。
── 菊池さんは宮城県のご出身ということで、ネイティブな宮城弁を話されるということなんですよね。
訛りのところは私が標準語で書いたものを菊池にお願いして、翻訳してくれました。瑛子さんの親戚の人たちなどですね。
── 東海エリアの観客が、音として宮城弁のセリフを聞くのも、とても面白い体験だと思います。
だいぶ新鮮だと思います。
── 宮城でも上演されていますが、各地でお客さんの反応は違ったりされましたか?
そうですね、仙台は本当にライブに来たお祭り感みたいなのが初演の時はありまして、そのあと東京で上演した時は、みんなドライなんですけど、それぞれが楽しんでくれたみたいな感じがありました。豊岡のスタジオでやった時はまだコロナ前だったので、「ご一緒に」という菊池のセリフは冗談として書いたんですけど、豊岡の観客の方は本当に一緒に歌ってくださって。それぞれで面白かったですね。
── この一人芝居シリーズと本公演では、作品のテイストは違ったりするのでしょうか。
そこまで大きくは違わないのかもしれないんですけれども、一人芝居はみんなタバコの銘柄をタイトルにしていて、いずれも、夢に破れたりだとか、昔のことをちょっと忘れられないでいる、みたいなことをモチーフにしています。亀山浩史という俳優が『セブンスター』という一人芝居を持っていて、菊池が『ゴールデンバット』で、もう一人、小瀧万梨子という俳優にも一人芝居を創りたいなと思っているんですが、今は絶賛子育て中なのでちょっと落ち着いたら。タバコって大人の嗜好品と言いつつ、始める時はちょっと背伸びしたイメージがあるので、なんか“大人になれない人たちの話である”っていうことが、この一人芝居シリーズの特徴ではあったりはしますね。
── 聴かれてきた音楽も、タバコの銘柄などもご自身の年代のものよりかなり古いものを好んで作品に取り入れていらっしゃいますが、先ほども仰ったお父様の影響が大きいんですね。
父はタバコは吸わないのですが、フォーククルセイダーズを知ってる友達はいなかったですね(笑)。なんでしょうね、中島みゆきとか、ちょっと暗くて子どもにはわからないようなことを悲しげに歌う…みたいな曲ばっかり聴いて育ってきました。でもそれが嫌いじゃなかったので、子どもの頃のことって結構、脈々と自分の中に根付いてるんだな、と最近つくづく思います(笑)。
── また本公演でもぜひ東海エリアにもお越しいただきたいと思いますが、今後創りたい作品はどういったものなんでしょうか。
たくさんありますね。新作もやっぱり創りたいっていうことと、今までやってきたものの再演というのにもちょっと力を入れていきたいな、と思っています。レパートリー化をしていっていろんなところで上演するというのもそうですし、各土地での俳優さんとのクリエイションというのも、レパートリー作品としての強度があれば、そういう創作の仕方も出来るだろうな、と思いながら。でも、そういうことを考えだした途端にコロナが感染拡大してしまって、なかなか難しいなとは思っているんですが。そんな中でも、菊池はいま宮城に住んでいるのでオンラインで稽古をしていて、今のところ結構満足に出来ているなという感じが意外とするので、夢は絶やさぬままに、野望は野望として持っていよう、と思っています(笑)。
取材・文=望月勝美

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