『speakeasy podcast』×SPICE連動企
画、第八回ゲストは三船雅也(ROTH
BART BARON)ーーバンドの新章が始ま
った新作『無限のHAKU』

海外音楽情報専門Podcast『speakeasy podcast』とSPICEの連動インタビュー企画。第八回のゲストには、日本のみならず世界にその活動範囲を広げているROTH BART BARONの三船雅也。12月1日(水)にリリースのニューアルバム『無限のHAKU』について、緊急事態宣言下の真っ暗な東京の街からインスピレーションを受けて制作した楽曲や「二面性」というテーマなど、制作過程で辿り着いた思考やこれまでと異なるサウンドアプローチについて、アルバムの真髄に迫る濃厚なインタビューから抜粋して掲載する。より詳しく内容を知りたい人は12月8日(水)と12月15日(水)の18時に配信される『speakeasy podcast』をチェックして欲しい。
●真っ暗闇の東京、行き場のない人たちにも音楽を鳴らせたら●
竹内琢也(MC):ニューアルバム『無限のHAKU』が配信リリースになりました。僕もすでに何周か、歌詞もじっくり読みながら聴いておりますけど、感想としてはみんな明るいと言ってくださる感じなんですよね。
三船:そうなんです。去年のアルバム『極彩色の祝祭』は、ガラッと変わった世界のみんなと一緒に、みんなのために歌うような音楽だったんですけど。今回は、みんながひとりひとりだと認識して、一対一で向き合っていく、ピンと張り詰めている感じになった。だから、それをみんなが明るいと言ってくるのは、時代のせいなのか、みんなが本当にそういうことを求めているのかわからないんですけど、すごく面白い感想でした。
竹内:アルバムを作るキッカケとしては、明るいものではないですよね?
三船:そうですね。でも癒しだったり、去年1年間ばずいぶんタフな時代を過ごしてきたので、人間はすごく回復に向かっていくんじゃないかと。「鳳と凰」は、不死鳥がテーマだったので、不死鳥が生まれ変わる時に一回死んで灰になって、そこからもう一度、火が生まれて鳥になっていくとしたら今の俺たちは灰の状態なんじゃないかと。一回、潰えるけれど、変わっていく時代の過渡期のような、静かな状態なんじゃないかとずっと思ってたんです。
竹内:今の時代が、不死鳥でいうと灰の段階。
三船:そうそう。あんまり絶望感はないけど、もう少し時間がいるよね、ちょっと静かに待っているような。一度止まった心臓がもう一回動き出す、その最初の一音を待っているみたいな感じですね。その状態の今生きてる僕たちの歌を歌いたいなと。それが明るいか暗いかは簡単には言えないんですけど。この歌が聴いてくれるリスナーのみなさんに優しく寄り添って、ある種の逃避じゃない、リラックスだったり癒しだったり、自分の気持ちを少し救済してくれる瞬間ができるといいなというふうに作りながら思っていました。
竹内:資料に、緊急事態宣言下の東京の夏にネオンが消えた渋谷の街で見た光景が制作のひとつのキッカケになっていると書かれていましたが、これについても詳しく聞かせていただけますか?
三船:「鳳と凰」のMVの監督が「三船くんが気球に乗って、朝日を迎える姿を撮りたいんだ」ということで、夜中に渋谷のど真ん中に集合して現地に行くプランだったんです。ちょうど小池都知事が街に人がたむろしないように「東京の電気を全て消してください」みたいな時で、深夜0時に真っ暗な渋谷に集合すると、スクランブル交差点とかも大停電に。そんな中で、家に帰れない人や集まれない人たちが、地面に座りながら話したりドリンクを持ち寄ったりしていて、居場所がなくなると最後は真っ暗でも外に出るんだなと思ったんです。みんなすごいピリついて悪者探しをしているシーズンだったから、若い子たちがすごい標的になっていた。でも、彼らは彼らなりに何かしようとか、一生懸命に生きていたわけで。でも、彼らサイドのことを語る人も歌う人も誰もいない。
竹内:たしかにそうですよね。
三船:僕らもこの街の真っ暗の中で座っている超幻視的な景色の一員で、行き場所がないのは家にいない人たちも一緒なんじゃないかと。この真っ暗な街で若者だけじゃなく、行き場がない人たちに音楽が鳴るといいなと考えていたことが、「Ubugoe」のキッカケになりました。
竹内:それは、さっきの寄り添うということになるんですかね。
三船:ある種、人間が持つ原始的な力を感じたんですよ。
竹内:なるほど。
三船:都合よく働くためにニョキニョキとビルを建てて、そこでたくさん経済を回していたのに全く人が集まっちゃいけなくなった。意味のないハリボテみたいな街に真っ暗の中で集まって、なんか起こそうというか、この先わからない世界を友人たちと過ごしている人たちがいる。僕はそういう時に渋谷へ行かないタイプなので、友達になれるような人は少ないのかもしれないけれど、通じる部分があった。そのエナジーみたいなものが、人間が持っている力のひとつなんだろうなとすごく感じたから、これを歌にしたいと。
●二面性がひとつのテーマに。新しい扉が開けたサウンドアプローチ●
竹内:アルバムのタイトルの「HAKU」という字は、すごくいろんな意味が込められていて、いろんなふうに捉えることができるなと。楽曲には「鳳と凰」(ほうとおう)や「霓と虹」(にじとにじ)というタイトルもある。これは今回、考えていたことのテーマのひとつでもありますよね?
三船:ふたつでひとつのものが多かったですね。音楽もバンド全員で一発録りする肉体的なところもあれば、すごくデジタルでプログラミングされた構築の美学みたいなもの混ざっている。室内楽っぽいんだけど、音像やアルバム自体の空間がものすごく広かったりする。これは最初の発想が千利休や「わびさび」で、シンプルな畳二畳だけの空間で一対一でお茶を飲むけど、ものすごい行き届いたデザインがされていてスッゲー広い空間に感じるような、そんなアルバムにしようと思っていたんですよ。ちっちゃい畳二畳から宇宙が見えるとみたいな、相反する二つのアイディアが共存しているのが面白いなと。それで、京都へ行って勉強したりして(笑)。天守閣とかについている伝説の鳥の鳳凰も、もともとは「鳳と凰」でオスとメスだったのがぎゅっと混ざっていたりする。「霓と虹」も、龍の一族でオスとメスがいたんじゃないかと中国の人が考えていたりするそうなんです。
竹内:そうなんですね。このタイトルを最初に見た時、僕は恥ずかしながら「ニジ」と読めなかった。調べてみて分かっても、ちょっと違う意味を持つ「ニジ」かなみたいな。
三船:混ざり合うふたつのことが、もう一度見直して両方認識できると楽しいなとか思ったり。
竹内:二面性とか同じ意味を持つというのは面白いですよね。
三船:一貫して、そのテーマがアルバムに秘密のように全部散りばめられてますね。
竹内:サウンド面ではヒップホップ的なアプローチも多いと思うんですけど、どんなことを意識しましたか?
三船:前作は緊急事態宣言の中で、僕たちも二度とライブができないかもしれないし作品を作れないかもしれない世界だったから、火事場のなんとやらというか生命力に溢れたアルバムになったんですね。けど、今回はすごく静かな時間を生命力でいっぱいに満たそうと、違うアプローチで音も作ろうとシンプルに楽器ひとつひとつの音を美しく録ろうというテーマがありました。だから、今まで一番よくストリングスも録れたし、ホーンも力強すぎず優しさをもった小さい音でディティールを作る。今にも消えそうな線香花火を、スゲー贅沢に楽しむようなディティールなんですよね。
竹内:あー、なるほど。たしかに、ディティールでいうとそうですよね。
三船:線香花火を見惚れてると惑星に見えてきたなら、そっちの方がスケールが大きいんじゃないかとか。
竹内:おお! 二面性というか。おもしろいですね。
三船:ストリングスを極上に録れるから札幌のスタジオへ行こうとか、新しいドラムのアプローチをしようとか。たぶんね、新しい章がこのアルバムで始まったんですよ。2020年代の初手なのか分からないですけど、新しい扉が開けたサウンドアプローチだったと思います。

ROTH BART BARON 三船雅也
→これまでに観た海外アーティストのベストライブを教えてください。

アメリカのブルックリンにあるクラシックホールで観た、僕が大好きなニュートラル・ミルク・ホテルのライブはすごく感動しました。ずっと憧れてきた人を間近で観れた感動もあるんですけど、バンドが鳴らす自由なサウンドと、それを楽しんでいるお客さんの空気。クラシカルなオペラハウスみたいな伝統的で高級な空間でインディーキッズたちにまみれながらまん前で観る、えも言えぬ感動があって全部が完璧だった。
→影響を受けている海外のカルチャーがあれば教えてください。(ファッション、国、シーンなど)
アメリカのインディーミュージックシーンの音楽的な豊かさです。アイディアの出どころがいろいろあり多種多様で、ひとつのことを流行り廃りで追いかけていないし、自分がいいと思うサウンドをとことん自分なりに突き詰めているところは、本当に素晴らしいと思う。自分たちのやり方で『グラミー賞』を獲ったりノミネートされてたりして、ちゃんといろんな人にアプローチできて扉を開ける力があるなと。
→現在、よく聴いている海外アーティストの曲を教えてください。
ビッグ・シーフ「Time Escaping」「Sparrow」
取材=竹内琢也 文=大西健斗

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