Blu-ray化タイトルをまとめて振り返
る/TRUMP解体新書 Vol.7【作品編】

2021年6月からスタートした<TRUMPシリーズ>Blu-ray Revival発売記念連載『TRUMP解体新書』。
毎月1タイトル、8か月連続リリースする舞台<TRUMPシリーズ>について、脚本・演出の末満健一さんのインタビューと共に、毎月たっぷりじっくり振り返ってきた連載も、今回を含め残り2回。そこで今回は、Blu-ray Revivalで発売されたタイトルを一気に語っていただきました。
■Dステ 12th『TRUMP』TRUTH・REVERSE
D ステ 12th『TRUMP』TRUTH(撮影:渡辺マコト)
――まずはDステ 12th『TRUMP』TRUTHとREVERSEを、2作まとめてうかがおうと思います。
この作品に関しては、『TRUMP』シリーズとしてというよりは、「D2メンバーが総出演した舞台である」ということがやっぱり見どころだと感じています。「D2」というワンチームが「クラン」という閉鎖空間で生きる少年たちの姿と重なりましたし、まだキャリアをスタートして間もなかった彼らの思春期の名残りが、物語以上の価値を作品に与えてくれたからです。
D2の存在自体が青春群像劇で、それが作品に強く反映されている。そういう意味では、『TRUMP』という作品がD2と出会ったタイミングにも恵まれました。もし今同じメンバーが集まっても、ああいう未完成の鮮烈さは出ないですよね。あの時だからこその空気感、肌触り、きらめき、熱量が出せたんだろうなと思います。
――あの瞬間だけのものが映像にも映っていますよね。
どんな人生の瞬間にも言えることですけど、あの頃にはもう二度と戻れないということに感傷的にはなってしまいますね。今は芸能活動から退いたメンバーや、事務所を退所して別の道を歩んでいるメンバーもいます。演劇を主戦場として活動しているメンバーや、映像の分野で頑張っているメンバーもいます。個人的には「D2という種が、それぞれの場所で花を咲かせている」という感覚なので、感傷的なことばかりではないんですけど。でも時々ふと妄想はしてしまいます。今のD2で集まったらどんな『TRUMP』になるんだろうって。それはきっと実現はしないんでしょうけど、その後のTRUMPシリーズに大久保祥太郎や陳内将、三津谷亮らが出演してくれていることで、あの頃に蒔かれたD2という種がうちの畑でも花を咲かせてくれていることが嬉しくもあります。
――この作品はTRUTHとREVERSEという2バージョンがあり、同時上演されました。バージョンの違いは配役の違いですが、その配役はただのシャッフルではなくて、ソフィとウル、クラウスとアレン、というような組み合わせがあり、そのふたつの役を二人一組の役者が入れ替わって演じる、という特徴があります。
Dステ 12th『TRUMP』REVERSE(撮影:渡辺マコト)/左・アレン、右・クラウス
『ソフィ・トリロジー〈TRUMPシリーズ戯曲集I TRUMP/LILIUM/SPECTER〉』より(撮影:iwa)
Wキャストでも「作品的に必然性のあるWキャスト」にしたくて、対称関係や対立関係となる登場人物同士でキャストを入れ替える方法を取りました。それは、シンメトリーとアシンメトリーが相互によって概念として成立しているような、二元性のある配役を試みたものです。相互によって成り立つふたつの役を演じ合うことで、自分の言葉が相手の言葉に、相手の言葉が自分の言葉になる。感情もまた然り。役や台詞、場面に必要な感情の流れは同じはずなのに、すべてが全く同じにならない。この体験は役を深めていくうえでも面白い効果があるだろうと思いました。
実際に稽古場では、通常のWキャストや、初演と再演で役者が代わるといったキャスト替えにはない、独特の緊張感が漂いました。うまく言えないんですけど例えば、「稽古場で自分のドッペルゲンガーに遭遇する」みたいな、他では味わったことのない異様な感覚でした。
物語としても”演劇的輪廻転生構造”というか……作品では、最後にウルがソフィに「生まれ変わったら僕は君になりたいな」と言い残して事切れます。すると昼公演で「君になりたいな」と言って死んでいったウルが、夜公演ではその“君(=ソフィ)”になっている、ということになる。同じ物語を何度も繰り返さないといけない演劇の”業”のようなものが、ウルの言葉と役の入れ替えによってより浮き彫りになったんです。
Dステ 12th『TRUMP』REVERSE(撮影:渡辺マコト)/左・ソフィ、右・ウル
『ソフィ・トリロジー〈TRUMPシリーズ戯曲集I TRUMP/LILIUM/SPECTER〉』より(撮影:iwa)
――Wキャストで同時上演という構造が、輪廻転生を起こしている。
はい。だから千秋楽では、その台詞を最後まで言わせるわけにはいきませんでした。ウルは「僕は君に……」とまでしか言えない。なぜなら千秋楽には次のステージがないからです。演劇の千秋楽の独特の喪失感が、ソフィとウルの関係性にももたらされました。そういう輪廻構造は、特殊な交互上演をする中で自然と行きついたものですね。
■Patch stage vol.6『SPECTER』(2015)/Patch ✕ TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』(2019)
Patch stage vol.6『SPECTER』
――Patch stage vol.6『SPECTER』はどんな作品ですか?
シリーズの幅を広げられると思えた作品です。『TRUMP』にしろ『LILIUM』にしろ、クランという閉鎖空間を舞台にして、そこにいる繭期の少年少女たちを描いてきました。この作品では初めてクランの外側を舞台にし、主人公を人間にしたことにより、「クランじゃなくてもTRUMPの世界は成立するんだ」とわかりました。このことが『グランギニョル』や『マリーゴールド』にも繋がりました。
『SPECTER』の見所としては、劇団Patchというひとつの団体で4年後に再演したことも挙げられます。『TRUMP』も再演を重ねてきましたが、上演ごとにキャストがほぼ入れ替わっていて、それぞれが別物なんです。『SPECTER』に関しては同じ劇団で上演しているので、初演と再演で劇団員の成長を見比べる面白さもあると思います。劇団の勢いという意味ではきっと初演には敵わないけど、再演には時間と経験を経ただけの熟成された味わいがある。それぞれに異なる魅力があるんですね。脚本もちょっと直しているので、僕の脚本家としての成長も感じてもらえるかなと思います(笑)。
――その再演となるのが、Patch ✕ TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』です。
この作品は、「劇団という団体で作品を再演する時にどう再構築するか」のひとつのケーススタディとしても面白いんじゃないかなと思います。当初の劇団の方針としては、初演から引き続き出演するメンバーには同じ役を演じてもらう予定だったそうです。でも劇団員の顔触れが変わった再演で、それは成り立たなかった。それで演じる役が変わったのですが、だからこそ彼らの成長と変化が見て取れることになりました。
Patch × TRUMP series 10th ANNIVERSARY『SPECTER』
例えば中山(義紘)は、初演では主人公の臥萬里を演じ、再演ではキーパーソンのクラウスを演じています。クラウスは非現実的な世界においても特異なキャラクターで、それに説得力を持たせて演じることはなかなか難しい。だから初演では、ベテランの客演さんに演じてもらっていたんです。でも4年経って、キャリアを積んだ中山になら任せられるんじゃないかと、配役に踏み切ることができました。他にも、松井(勇歩)は初演時には経験がまだ浅く、『SPECTER』のような等身大では演じられないタイプの作品で主演を任せることは考えられませんでした。それが再演では主人公の臥萬里を演じることになりました。右も左もわからない演劇初心者として入ってきた彼が、主役として座長として座組みを牽引する。そういうひとりの役者の成長譚としても見所のある作品ではないでしょうか。
――再演では、初演にはなかったキャストパレード(オープニングパフォーマンス)ができ、本編のダイジェストのようになっているのですが、これは再演だからこそできたのですか?
いえ。初演の時は単純に、ルーティンのように同じことを繰り返すことが思考停止のように感じられて、恐れがあったんですね。だから、僕の作品ではお約束化していたパフォーマンスを一旦手放すことにしました。でも再演することになって、せっかくなら初演でやらなかったお約束を復活させようと……ただそれだけの理由ですね。それにあたって、音楽の瓢箪島光一さんには「とにかく変な曲が欲しい」「キャッチーじゃない曲にしてください」とお願いして、このための主題歌もつくってもらいました。そしたらこちらの予想を超える悪夢のような楽曲がやってきて。『SPECTER』の世界を瓢箪島さんはこんな風に捉えてくれているんだと考えたら、嬉しくてしょうがありませんでした。
■ピースピット2017年本公演『グランギニョル』
ピースピット2017年本公演『グランギニョル』
――ピースピット2017年本公演『グランギニョル』はいかがですか?
『グランギニョル』は<TRUMPシリーズ>として「改めましてよろしくお願いします」という作品です。僕が活動の軸足を東京に移して、いろんな方に作品を観てもらえるようになったので、ここらでひとつド直球の球を投げてみようと。シンプルでわかりやすいエンターテインメント作品として、少年漫画のようなイメージでつくりました。主人公のふたり、染谷(俊之)くん(ダリ・デリコ役)と三浦(涼介)くん(ゲルハルト・フラ役)の、役へのハマり具合もひとつの見どころです。ふたりの役者としての相性も良かったので、その二本柱が作品を支えてくれたなと思います。
シリーズ初心者の方にも入ってもらいやすい作品だと思うので入門編として勧めたいですね。いや、でも『TRUMP』を観てから観てもらいたい気持ちもあるので……勧め方が難しい作品です。
――『グランギニョル』は、『TRUMP』を知らずに観るのと知ってから観るので、感じ方は随分変わりますよね。
そうですね。『TRUMP』から『グランギニョル』、『グランギニョル』から『TRUMP』、両方の順番から初見してもらいたいですよね。まあ、無理なんですけど(笑)。
■ミュージカル『マリーゴールド』
ミュージカル『マリーゴールド』
――ミュージカル『マリーゴールド』は、シリーズとして初のミュージカル作品になります。
もちろん<TRUMPシリーズ>としても楽しんでいただける作品ですが、ミュージカルとしてもとても見応えのある作品になったと思います。和田俊輔さんの楽曲が素晴らしく、キャストも歌唱力の高い方に集まっていただきましたから。
そしてシリーズの可能性を広げてくれた作品でもあります。昨年上演した音楽朗読劇『黑世界』もそうですが、同一シリーズの中にこういうミュージカル作品があることで、演劇としての振れ幅がすごく広がると思うんです。僕は飽き性ですが、「あ、これは飽きずにやっていける」と思いましたし(笑)。
――ミュージカルをつくるってどうでしたか?
歌ありのものは『LILIUM』で経験がありましたが、「演者がアイドル」という前提でないものは初めてで(※『LILIUM』には、モーニング娘。'14メンバー、スマイレージハロプロ研修生メンバーが出演した)。ミュージカルとしてのクオリティがシビアに求められると思いました。僕はミュージカル畑の演出家ではないので不安がなかったわけではありませんが、なにが大変なのかもわからなかったので、とにかくまずは飛び込んでみようと。
――飛び込んでみてどうでしたか。
もちろん普段の稽古にはない歌稽古があったり楽譜があったり、ストレートプレイとは勝手が違うところもあります。だから、西野誠という優れた歌唱指導者と出会えたことは大きかったです。西野くんは音楽的な造詣も深く、かつ、役者への指導がとても上手で。わかりやすいし、知識も豊富だし、説得力もある。本人が役者もやっているので、「役者はこういうところに引っかかるんじゃないか」とか「疑問に思うんじゃないか」とかも踏まえて指導してくれるんです。今や歌唱指導者としてあらゆる現場に引っ張りだこの方ですが、役者としても魅力的なので、次回のミュージカル『ヴェラキッカ』にも歌唱指導兼出演者として参加してもらいます。
■『COCOON 月の翳り』『COCOON 星ひとつ』
『COCOON 月の翳り』
――『COCOON』はシリーズ10周年記念公演で2本立てでした。まずはそのひとつ、『COCOON 月の翳り』はいかがですか?
『月の翳り』は、『TRUMP』にも登場したラファエロとアンジェリコの物語です。「いつかやりたい」ということを昔からSNSでも公言していて、ようやくシリーズとしてそれができるところまでたどり着いたというのと、ゴシックファンタジーの世界で青春群像劇をやってみたいというところから生まれました。<TRUMPシリーズ>でやると青春もこんなことになっちゃうんだな、って感じではありますけど、僕の中では純然たる少年の友情を描いたものです。
――その少年たちを演じる主演のおふたりも魅力的でした。
いつかご一緒してみたかった荒木宏文くんと、舞台『K』で創作を共にした安西慎太郎くん。14~15歳という、実年齢とはかけ離れた少年たちを演じることは挑戦でもありました。とてもセンシティブな演技を見せてくれるふたりの共演は、『月の翳り』における「在りし日の友情と、その崩壊」というテーマを色濃いものにしてくれました。
――もうひとつの作品『COCOON 星ひとつ』はいかがですか?
『星ひとつ』は、製作サイドから「『TRUMP』の再演を」と言われていて、でも『TRUMP』は自分の中で2015年版でやり尽くした感があったんです。だからせめて、もうひとりの主人公であるウルの視点から見た『TRUMP』として、脚本を半分ほど書き直させてほしいと相談してできたものです。なので企画段階では『TRUMP-ウルside-』というタイトルだったんです。でもそれだとタイトルでネタバレだし、さらに「ダリは『グランギニョル』の染谷くんが演じます」となると、目指している物語の終着点が薄らぼんやりとバレてしまう……と思って(笑)。それでいろいろ悩んだんですけど、タイトルでは『TRUMP』の物語であることを伏せて、『星ひとつ』にしました。半分は新作ですが半分は再演なので、それを完全な新作のようにして宣伝することには申し訳ない思いでした。でもネタバレを回避するためには、他に方法を思いつくことができませんでした。
――たしかに『TRUMP』の話ですが、また違うものを観られたように感じました。
この作品は、『TRUMP』がシリーズとして10年続いたことに対する、ある種の決着をつけるものとなりました。半分はソフィの視点として語り直す『TRUMP』の表側、半分はウルの視点が強調された『TRUMP』の裏側。あとは『グランギニョル』から続くダリの物語の結末でもある。そういう総決算的なものをやれたことで、シリーズ「第一章」が終わったなという心境になりました。<TRUMPシリーズ>は、パンフレットなどで発表している年表に沿って物語を重ねていますが、ソフィはともかく、ダリやウル、ラファエロやアンジェリコたちの物語はここがピリオドです。二人の息子を失った後のダリの行く末には興味がありますけど。
『COCOON 星ひとつ』

『COCOON 星ひとつ』

――それはかなり興味があります(笑)。『星ひとつ』には本当に泣かされましたし。
公演初日のエピローグの場面でのお客さんの反応はすごくて、強烈に心に残る光景でした。僕は原作者ですが、ああいうエモーショナルが生まれるシリーズに育ててくれたのはお客さんだという感覚があります。びっくりはしましたけど、とてもありがたかったです。みんながウルの友達で、亡くなったウルの葬儀に参列してくれているかのような雰囲気で、演劇の客席の空気ではなかったです。20年以上演劇に関わっていますが、創作者としても観劇者としても、あれは経験したことがない瞬間でした。
――すごいことですね。
10年続けてきた中でお客さんにここまで育ててもらったんだと思うと、一区切りついた気持ちにもなりました。でも僕は、イギリスにシェイクスピアがあるように、アメリカにブロードウェイがあるように、日本に歌舞伎があるように、体系化されたコンテクストに対して憧れがあるんです。だから、<TRUMPシリーズ>を通して、ひとつの大きなコンテクストをつくろうとしているのかもしれません。ここまで続けて来られたという感慨はありますが、まだまだこれからという気持ちもあります。
――「まだまだこれから」なんですね。
2020年には『キルバーン』という、それまでのシリーズにはまったくなかったタイプの作品をやる予定でした。それがコロナ禍で中止になり、代替作として『黑世界』を上演したのですが、結果的にシリーズのさらなる可能性を探る実験作となりました。その『黑世界』から<TRUMPシリーズ>第二章が始まったという感覚です。コロナのおかげとは言いたくないですけど、『キルバーン』が公演中止になったことを考えると、不幸中の幸いだったと思います。『黑世界』でドラマに対する視野が広がって、まだまだいろんな面白いものをお客さんに提案していけるなと思えたので。

次回は最終回。総括とこれからのお話です。

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