岡田将生・倉科カナ・竪山隼太・麻実
れいが不朽の名作を切ないながらもあ
たたかく紡ぐ 『ガラスの動物園』会
見レポート

『ガラスの動物園』は、劇作家テネシー・ウィリアムズの出世作。1945年にブロードウェイで初演が行われて以来、70年以上にわたって繰り返し上演されてきた。家族への愛情や不満、単調な日々に対するやりきれなさをノスタルジックに描いた本作に、上村聡史の演出のもと、岡田将生・倉科カナ・竪山隼太・麻実れいが挑む。初日に先駆けて行われた囲み取材と、一幕冒頭のフォトコールの様子をお届けしよう。
岡田将生
ーー初日を控えた今の心境とご自身の役についてお願いします。
岡田:1ヶ月半弱、4人で物語を作り上げてきましたが、初日にお客様が入ってくださって、やっとこの劇が完成するんだろうなと思っています。感染症対策も気をつけながらみんなで作ってきたので、純粋に開幕が嬉しいです。厳しい演出家なので、語り手とトムの切り替えがなかなかできなかったりするとたくさん怒られながら1ヶ月半やってきました(笑)。一生懸命トムという役を全うしたいなと思っています。
ーー上村さんとは再びのタッグですもんね。
岡田:前回の『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』もシアタークリエで。僕の俳優としての力量なども全部、上村さんにはバレているので。稽古初日から全開で、僕がやりたいトムと上村さんが求めているトムを擦り合わせながらここまできました。初日を迎えて、皆さんに見てもらえたら、トムもまたひとつ違う階段に登れるんじゃないかと思っています。
麻実れい
麻実:私の場合は、長台詞がずっと続くんですね。だから、上村さんにアクセントをつけていただきました。上村さんとは『炎 アンサンディ』、『森 フォレ』からご一緒していますが、この作品は私にとって大変手強いです。でも、豊かな作品なので、なんとか4人で大千穐楽を幸せの中で迎えたい、そのために日々努力をしていきたいと感じています。
倉科カナ
倉科:テネシー・ウィリアムズはすごく好きな戯曲家で。シェイクスピアやチェーホフよりは上演される機会が少ない中で、今回ローラという役のオファーをいただいて感謝しています。ただ、憧れの作品だったからこそ、やってみると「作品をぶち壊してしまうんじゃないか」「以前上演されたローラはどうだったんだろう」と自信がなくなってくるというか。でも、このキャストで、上村さんの演出で、シアタークリエで、今回のスタッフの皆さんと作品を紡いでいけたらと思っています。プレッシャーはありますが、日々、舞台に立てることを楽しみながら作品に取り組みたいです。
竪山隼太
竪山:テネシー・ウィリアムズの作品が本当に大好きなんです。小学生くらいの時に初めて見て素晴らしいと感じ、いつか自分もやってみたいと思っていました。だから、素晴らしいキャストの皆さんに支えられてできるのが本当に嬉しいです。名作と言われるだけあって、読み込めば読み込むほど新しい解釈が見つかって、いい意味で分からなくなっていく。そこに上村さんがアドバイスをくださったり、稽古で戦っている仲間を見て僕も頑張らなきゃと思ったり。初日が無事に開けそうでよかったです!
ーー上村さんに怒られたという話がありましたが。
岡田:すみません、怒られてはいないです(笑)。お互いの人柄も分かっているので、気を遣わずにやりとりができています。上村さんが気にしているのは、僕が演じるトムは語り手としてずっと1人で皆さんの前で喋り続けないといけないということ。お客さまにこの作品を理解してもらえるように説明しつつ、空間を共有して、楽しんでいただけたらと思っています。
ーー今回、岡田さんは倉科さんとの初共演です。印象を教えてください。
岡田:カナ様は本当に素敵な女優さんです。ローラという役はとても繊細で、でもチャーミングな部分もある。そこを絶妙に演じられているのを稽古から見ていて、素晴らしいなと。
ーー倉科さんはいかがですか?
倉科:岡田さんはすごくお芝居に誠実な方だという印象があったんですが、実際そうでした。読み合わせの時点で台本が分厚くなっていて、見えない部分で努力なさってるんだろうなと思いました。この作品は少し物悲しいところがあるんですが、座長の岡田さんの人柄のあたたかさが作品の世界観にも浸透しているような感じがあります。
ーーちなみに「カナ様」という呼び方は……。
岡田:ある日、稽古中に突然生まれたあだ名というか。
麻実:上村さんから生まれたんですよね、「カナ様」って呼び方(笑)。非常に和気あいあいとしつつ、上村さんの厳しさが根底にある、良い稽古場でしたね。
ーー改めて、皆さんへのメッセージをお願いします。
岡田:不朽の名作と言われる『ガラスの動物園』を楽しみに待っている方はたくさんいらっしゃると思います。たくさんの方が演劇をやっている中で、僕ら4人で作る『ガラスの動物園』はとても優しい空間になると思っています。悲劇的なことはもちろんありますが、希望もある作品なんじゃないかなと。ぜひたくさんの人に見ていただきたい作品ですので、よろしくお願いいたします。
【あらすじ】
1930年代、アメリカ。アパートの一室では、母と姉弟の3人が暮らしていた。
南部にいた頃の華やかな生活や、自分に夢中なボーイフレンドたちといった過去が忘れられず、子供たちに期待をかける母のアマンダ(麻実れい)。内気な性格で、ガラス細工の動物たちと過ごす時間が唯一の拠り所であるローラ(倉科カナ)。そして、倉庫での単調な仕事や口うるさい母にうんざりしながらも家を支えるトム(岡田将生)。
ビジネススクールでの職業訓練もうまくいかないローラを心配したアマンダは、トムに「ローラの結婚相手になるような紳士を連れてこい」と言いつける。そこでトムが招いたのは、職場の同僚・ジム(竪山隼太)。彼はハイスクール時代にローラが淡い恋心を抱いた相手だった。再開した2人は、言葉を交わす中で心を通わせていくが――。

『ガラスの動物園』フォトコールより
『ガラスの動物園』フォトコールより
岡田は、語り手として観る者を作品の世界に誘いつつ、どこか歪な家族の中で苦悩する青年・トムの葛藤を生々しく見せてくれる。家族を支えなければいけないという義務感や親の期待と、自らの夢の間で揺れる彼の姿に共感を覚える方も多いのではないだろうか。岡田は軽妙な口調で客席に語りかけたかと思うと、次の瞬間には母親に憤りをぶつける息子や、姉に寄り添う弟に。ちょっとした話し方や表情の変化で、語り手とトムを見事に演じ分けている。
『ガラスの動物園』フォトコールより
倉科が演じるローラは、心優しく、母と弟の間を取り持つ清涼剤のような存在。だが、母が夢見心地で語る青年紳士は自分の元にはやってこないと話す寂しげな瞳が印象的だ。ローラにとって唯一の楽しみであるガラス細工の動物たちに話しかけ、愛おしそうに動物たちを磨く表情や、家の中をできるだけ明るく保とうとする健気さにも胸が締め付けられる。
『ガラスの動物園』フォトコールより
『ガラスの動物園』フォトコールより

麻実が演じる母・アマンダは、過干渉でヒステリックな母親といった雰囲気。だが、かつてのボーイフレンドたちについて楽しそうに語る様子や、機嫌よく子供たちの世話を焼こうとする様子は実にチャーミングだ。厄介だがどこか憎めない、絶妙なバランスを保っている。
『ガラスの動物園』フォトコールより
そして竪山が演じるジムは、フォトコールを行った冒頭のシーンでは残念ながら出番なし。閉じた世界で暮らす家族に波紋を呼ぶ「リアリスティック」な存在としてのみ登場する。物語に流れ続ける閉塞的な空気を吹き飛ばすような明るさとロマンスで強いインパクトを残していた。
『ガラスの動物園』フォトコールより

『ガラスの動物園』フォトコールより
『ガラスの動物園』フォトコールより

一人ひとりが悩みや問題を抱えており、家族の暮らしには鬱々とした雰囲気が漂っているものの、会見でキャスト陣が語っていたようにどこかあたたかく、希望も感じられる本作。家族への愛や情があるからこその苦しみに触れ、自らの人生への向き合い方にも思いを馳せることができる物語を、ぜひ劇場で見届けてほしい。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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