the quiet roomが1stフルアルバム『
花束のかわりに』と共に回ったツアー
で見せた変化

the quiet room Tour 2021 “日常と愛のうた” 2021.12.10 渋谷WWW X
the quiet roomの1stフルアルバム『花束のかわりに』のリリースツアー『the quiet room Tour 2021 “日常と愛のうた”』のファイナル公演が、渋谷WWW Xにて行われた。今年の春に5都市を巡るワンマンツアー『[You e.p.] Rlease Tour 2021』を行い、今回のツアーではさらに規模を広げ、全国10か所を回ってきたthe quiet room。初のフルアルバムのリリースと2本の全国ツアーを行ってきた彼らは、この日に至るまでにどんな成長を遂げてきたのだろうか?
この日のチケットはソールドアウト。多くの期待に満ちた拍手に導かれながら、斉藤弦(Gt)、前田翔平(Ba)、菊池遼(Vo/Gt)、サポートドラマーのぴのり(Dr)の4人がステージに登場すると、最新アルバムの1曲目を飾る「Leo(a new day)」でライブがスタート。<さあ/取り戻すのよ/日常と愛の歌を>という歌い出しが、開会宣言のように高らかに響くと、その言葉に賛同するかのようにオーディエンスのハンズアップが広がり、クラップが鳴り渡る。依然としてライブ中に声は出せない状態ではあるけれど、それでもバンドとオーディエンスの意思疎通はしっかりとなされているという実感があったし、ハンズクラップを楽曲の一部に組み込む「Fressy」や、疾走感溢れる「(168)日のサマー」、さらに前田のベースの抑揚が足元を揺らす軽快なダンスナンバー「平成ナイトコウル」と、高揚感を掻き立てるポップチューンが一気にプレイされる中で、メンバーの笑顔も絶えなかった。
この日のライブ中に、菊池は何度も「リラックスして楽しんでください」とオーディエンスに呼びかけていたが、その言葉を自ら体現するかのように、肩肘張らない自然体な状態で自由に音を鳴らし、歌っているメンバーの様子が印象的だった。ステージ上にて、メンバー同士で顔を見合いながら笑い合うシーンがこれまで以上に多く見られたように思うと同時に、以前菊池にインタビューをした際に、コロナ禍を有効的に過ごしたことで「音楽の楽しさに改めて気付けた」と話していたことを思い出した。
コロナ禍以前、コンスタントにリリースをしてはツアーを行い、それと並行して楽曲制作を行うというルーティンの中でぐんぐん成長し続けてきたthe quiet roomではあるが、彼らの心のどこかに「もっと頑張らなきゃ」「立ち止まってはいけない」というプレッシャーがあったのかもしれない。そうした力みから上手く脱却できた状態で生まれたのが今作『花束のかわりに』であり、内容的にも「攻める」というよりは、これまで彼らが培ってきたものを開放的に昇華させながら、今まで以上に「寄り添う」にフォーカスを当てた作風に仕上がっている。だからこそ、アルバムに収録されている「やわらかな気配」のまったりとしたメロディや、大事な人を想う気持ちが込められた「フローライト」は、普段の生活の中で荒みがちな心にじんわりと深く染み渡った。
そして「みんなで身体を動かして楽しみたい」という言葉と共に、前田の力強いスラップと斉藤の艶っぽいギターフレーズがムーディーな「Landscape」をプレイした後のMCにて、メンバー同士でご飯を食べる機会が多かったという今回のツアーを振り返った菊池が「今までで一番楽しいツアーだったかもしれない」と言っていたこともまた、今のthe quiet roomの雰囲気の良さを確信させるものだった。
中盤セクションでは「大人っぽいセットリスト」と題して、ジャズテイストの「シュガータイム」や、洗練された音数の中で菊池の歌唱力が発揮されるバラード「カフネ」、クラップに乗ってリズミカルにリリックを届けるアダルティックな「グレイトエスケイプ」に加え、『花束のかわりに』の中でも異彩を放つ「Cut」をプレイ! この「Cut」は、デジタルサウンドをフィーチャーしたダンスチューンで、the quiet roomの新たな一面を感じることができる楽曲だ。菊池は「ツアーしっかり回ってきたけど、未だに「Cut」が終わった後だけは、どういう表情でいたらいいのか分からない」と戸惑いを見せていたものの、この曲があるからこそセットリストがぐっと引き締まるようにも思えたし、こうしたギミックの効いた楽曲ができたことも、バンドが好奇心に促されるまま、自由なスタンスで音楽と向き合えている何よりの証明だろう。
そして、「Cut」を喜怒哀楽の“怒”と評しつつ、「ここから先は、どちらかというと“喜”と“楽”寄りのセットリストなので、思い残すことのないように楽しんでいってください」と声をかけ、サマーチューン「Number」、盛り上がり必至のキラーチューン「Instant Girl」で一気にラストスパートをかけていく。長年プレイし続けてきた楽曲なだけあって、メンバーもステージ上を自由に行き来しながら、オーディエンスを鼓舞しつつ、遊び心たっぷりなステージングでフロアの熱をぐんぐんと上げていった。
次に「あなたが踏み出したその一歩を肯定する為の曲です」とプレイされた「You」は、爽やかなメロディの中に滲む心強さが背中を押してくれる、the quiet room流の応援ソング。コロナ禍になり、踏み出すことを躊躇してしまうことが増えたが、それでも「踏み出したら君は自由さ」と励ましてくれるこの曲は、今の時世を生きる人の希望の兆しのように思える。
ここで菊池は、「徐々に徐々に、日常を取り戻せているなという実感があります。でも、取り戻すだけじゃなくて、これから先の未来のことをみんなと考えていきたい。もしまた困難にぶつかったとしても俺たちなら、あなたたちとなら、乗り越えられると信じています。これから先も、the quiet roomを宜しくお願いします」と丁寧に伝えつつ、「これから先のあなた達ひとりひとりと、俺たちの、大切な未来の曲をここ置いて帰ります」と、至極のラブソング「キャロラインの花束を」をラストに贈った。<ねえ/君のその薔薇色の未来に僕は含まれますか>という歌詞から始まるこの曲の“君”と“僕”との関係性は、恋愛関係にある者同士だけではなく、バンドとリスナーの関係性にも捉えられる。花束も、音楽も、日々も、毎日異なる表情を見せてくれるものであり、そこで生まれる些細な変化を見逃さないように、未来に向かってこれからも一緒に歩んでいきたいという、the quiet roomから私たちに向けた、渾身のラブレターのように思えた。
アンコールにて、本編で唯一披露されていなかったアルバム収録曲「ノンフィクションの日々に捧ぐ」と、「この先のみんなの生活が、少しでも良いものになりますように」との願いが込められた「パレードは終わりさ」を届けた彼らは、来年の5月から対バンツアー『the quiet room Tour 2022 “知りたい、高鳴りの正体を”』を行うことを発表。「ただツアーをやるだけだと今回と同じになっちゃうから、何か色々あるんじゃないですか……?」と、新曲をほのめかすような発言もあったので、引き続き楽しみに待っていよう。

取材・文=峯岸利恵 撮影=山川哲

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