リーガルリリーが通じ合うPeople In
The Box、崎山蒼志と作り上げたイベ
ント『cell,core』の充実

リーガルリリー『cell,core』

2021.12.10 立川ステージガーデン
師走の立川に唯一無二の3組が集ったーーいや、唯一無二なんて言葉は逆に表面的で軽い。やりたいことや言いたいことに蓋をせず、分かりやすいカテゴライズに押し込められることのない自律した存在。そうしたスタンスがリーガルリリーとPeople In The Box崎山蒼志という3組に共通していた。ライブ後、一体自分は何を言い訳に縮こまっていたのだろう?と思うほど、自由で楽しい心持ちが充満した。
たかはしほのかの誕生日の恒例イベント、今年は『cell,core』というタイトルを冠し地元・立川の新しいホールである立川ステージガーデンでの開催だ。
崎山蒼志
静かな興奮を胸に開演を待つファンの前に現れたのは崎山蒼志。サディスティック・ミカ・バンド「よろしくどうぞ」をSEに登場し、突然歌い出す潔さで「国」からスタート。まるで一度世界が終わったあとに僕と君だけの世界を作ろうと歌うような決意を感じる。弾き語りの常識を超えるエクストリームなストロークに引き込まれる「ソフト」と続けたあと、今日この日を非常に楽しみにしていたと感謝を述べた。崎山もまたPeople In The Boxからは多大な影響を受けていると語り、また初めて「過剰/異常」でコラボレーションしたリーガルリリーに対するリスペクトも言葉の端々から窺えた。ファルセットも美しい「嘘じゃない」、バックトラックを流しハンドマイクで歌った「waterfall in me」では、間奏のアブストラクトなエレクトロビートで世界観に引きずり込まれる。
崎山蒼志
後半のMCを挟んで、2月2日リリースのニューアルバム『Face To Time Case』から、初披露の「Helix」をパフォーマンス。さらに代表曲「Samidare」で全身を駆使した弾き語りを届け、エレキに持ち替えての「Video of Travel」では声ネタのリフレインや変化していくビートが徐々にカオスの色合いを強める。ラストはエレキの響きを自在に操るバージョンの「夏至」。彼の脳内世界に迷い込んだ時間はあっという間だった。
崎山蒼志
崎山がリスペクトを示していたことで、会場全体がより良いムードで転換の時間を待つ。時計のカウント音のSEとともに登場したPeople In The Boxの3人はさりげなく分厚いアンサンブルを鳴らし、そこに明瞭な波多野裕文(Vo/Gt)の声が響く。楽器の分離が良く、PAのバランスの良さを体感しながら1曲目に「かみさま」という、不条理や運命の中をそれでも進まなければいけない人生を思わせるレパートリーを持ってきたことに唸らされた。客席では何人かが彼らの登場とともに立ち上がったのだが、それも自発的でこのイベントらしく感じたことの一つだ。福井健太(Ba)のベースラインが五臓六腑に響く「ミネルヴァ」でBPMを上げ、ギター、ベース、ドラムがバトルするようなイントロ、波多野のトーキングボーカルも不穏な「無限会社」がヘヴィににじり寄る。
People In The Box

People In The Box

圧巻のアンサンブルに大きな拍手が送られる中、波多野が「すごく楽しみにしてきました」と挨拶。暗黒からパッとサビで光が指すような「聖者たち」、山口大吾(Dr)が刻むヒップホップ的なキック&スネアと波多野の架空のフォークロア的なメロディラインが特徴的な「ニムロッド」、山口の鼓動のような二連のキックが印象的な「懐胎した犬のブルース」。1曲ごとに物語に没入させる精緻な演奏を聴かせる。演奏の緊張感からギャップを生む山口の素っ頓狂とも言える(ファンにはお馴染みだが)MCと煽りを経て、ここまでもかなり攻めたセットリストだったが、最終兵器めいた怒涛のリズムチェンジやせめぎ合いが立体的に展開する「旧市街」をラストに演奏。変な喩えだが銃撃戦を疑似体験したようにあっけにとられているうちに3人はステージを後にしていた。
People In The Box
People In The Box
People In The Box
手際の良い転換を経て、フォークトロニカ風のSEが流れる中登場したリーガルリリーの3人は、2アーティストのライブにエネルギーを得た様子で、見ているこちらも音が鳴る前からワクワクする。張り詰めたムードで始まることが多い彼女たちのライブでは珍しい感覚だ。そこに空間を震わせる海の太いベースフレーズが鳴る。「1997」だ。7月の企画ライブもこの曲で始まったが、今夜はたかはしの生誕祭でもあり、かつ生誕の地で歌われるこの曲はスタートにふさわしい。語り部分もニュートラルに自分の生を歩くムードで重すぎない。この曲から「東京」に繋げたのも、ライフストーリーとして納得。〈月の照明弾〉のあとに伸びる残響の美しさと、マイナーコードの上で不敵に発する〈何にも問題ないです。〉の痛快さ。シューゲイズ的なギターでありつつ、たかはしの一言で定義できないコードの響きが早くも没入体験を作り出す。『the World』の曲順通り、続く「地獄」ではチョーキングのイントロが少しワイルドでもある。歌メロの裏を行く海のベースフレーズがはっきり聴こえることで、快感も明らかに上昇。ホールの大きさはもはや壁じゃない。要は演奏のバランスがしっかり伝わればいいのだ。
リーガルリリー

リーガルリリー

最初のMCでたかはしは「どうやら私とゆきやまは立川の病院で生まれ落ちたようなんですが、この場所にたくさんの人がよく来てくれたなって楽しくなっちゃって」と、喜びを溢れさせる。フロア全体が温かな空気になったところで新曲「アルケミラ」を披露。ハチロクの大きなグルーヴを生み出すゆきやまの深化したタイム感、轟音から静寂への転換、さらにはたかはしの高音の伸びやかさにも目をみはる。海がつけるサビのコーラスもホーリーで美しい。この1曲を体験したあと、なんだかSF映画を観終わったような心地になったところで、名曲「蛍狩り」へ。粒だったアルペジオがこの日はPeople In The Boxを迎えた対バンなせいか、連綿と続く先人へのリスペクトに感じられたりもした。物語性の高い歌詞もそう思えた理由かもしれない。たかはしの〈輝きを放て。〉の繰り返しはこれまで観たどのライブより力強く聴こえた。さらにたかはしのソロの歌い出しから始まる静謐な「高速道路」の丁寧なアンサンブルが浮かび上がらせる、今はなきもの、正確には目には見えない歴史。魂がのぼっていくようなフィードバックノイズの残響に身を任せていると、いまいるこの土地の足元に思いが及ぶ。崎山がニューアルバムの中の言葉“タイムケース“について説明していたことを思い出した。アプローチはそれぞれだが、彼らのインスピレーションはどこかリンクしているのだろう。
リーガルリリー
リーガルリリー
そしてここ立川と都心を繋ぐ中央線を歌った新曲「中央線」が演奏されたのもいい流れだ。久々にアッパーでまさに移動する・走る感覚をもたらし、フィードバックでそのまま「GOLD TRAIN」に突入したのもひと連なりのストーリーを聴き手にもたらす。リーガルリリーのバックボーンでもあり、誰しもが持つ記憶とも共振していた。
後半のMCで、企画の命名者である海が「企画タイトルの『cell,core』は、『cell』が細胞、『core』は核を意味するのですが、ライブ空間に集まるお客さんは細胞で、みんな大切なアーティストの存在=核を持っているなと思って名付けました。今年はリーガルリリーの活動の中でも色んな経験を重ねられて、細胞が増えていくんだなって思った1年になって」と、今年の手応えを話す。そしてPeople In The Boxのライブは崎山も含めて袖で体育座りで凝視していたとも。客席がリラックスしたところで、「そして4回目のほのかのお誕生日企画です」という紹介に拍手が起きた。たかはしは「こないだ生まれたような24年。24歳らしく生きていきます」と宣言していた。
リーガルリリー
最後のブロックは一つ一つの音の強度が増した「the tokyo tower」、改めて始まりと現在地を確認するように「リッケンバッカー」が鳴らされた。今も刺さる言葉だらけだが、この曲が刺さった人たちが最初に細胞分裂を始めて、リーガルリリーという核を心に持ったのだと思う。対バンのセットリストとして今のベスト的な内容で届けた3人は笑顔でステージを後にした。
リーガルリリー、崎山蒼志
アンコールでは、期待されていた崎山との生「過剰/異常 with リーガルリリー」も実現。崎山がセミアコをストロークすると彼の世界が立ち上がるが、リーガルリリーのバンドサウンドと融合することで、両者のイノセンスと毒がともに際立つ貴重なコラボを体験できた。1月19日リリースの2ndアルバム『Cとし生けるもの』からクリスマスイブにプレゼントとして「惑星トラッシュ」という新曲を先行配信することを発表。そして、2ndアルバムのリリース記念東名阪ワンマンライブへの意気込みが語られた。東京は過去最大キャパの中野サンプラザでの開催となっている。ラストに演奏された「教室のしかく」の大きな演奏を聴いて、ますますホール公演が楽しみになったのは言うまでもない。
リーガルリリー、崎山蒼志
リーガルリリー、崎山蒼志

文=石角友香 撮影=MASANORI FUJIKAWA

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