DEEN 今年3作目のニューアルバム『
シュプール』に詰め込んだ、AOR~シ
ティポップへの思い

“シティポップ”というテーマを掲げ、2021年を走り抜けてきたDEENから届けられた、なんと今年3作目のニューアルバム。DEEN初の“冬のラブソング集”というコンセプトで作られたニューアルバム『シュプール』は、DEENの本質であるAORの再確認であり、2020年代のシティポップ・ムーブメントへの回答でもある、魅力いっぱいの作品だ。AOR~シティポップへの思い、制作エピソード、そしてリリースライブにかける思いを、池森秀一(Vo)と山根公路(Key)に語ってもらおう。
――今年はカバー→オリジナル→オリジナルと、アルバムを3枚出すことになりました。
池森秀一:アルバムを3枚出した年は、今までたぶんなかったと思うんですが、それはコロナ禍だからできたクリエイティブというか、外に向かうよりもスタジオに入って作り込む時間が多かったということも後押ししていると思います。でもカバーを出してオリジナルを出して、という順番は実は逆で、先にオリジナルを作っていたんですよ。まずAORのアルバム(『TWILIGHT IN CITY~for lovers only~』)を制作したのですが、シティポップ・ムーブメントが国内外で盛り上がっていたこともあり、今年のDEENのコンセプトをより明確に表現するため制作したのがカバーアルバム『POP IN CITY~for covers only~』です。久々にAORのアルバムを作りましたというよりも、カバーを先に聴いてもらいオリジナルにつながるという流れはすごく良かったなと思います。
――シティポップというテーマは、もともと用意していたものだったと。
池森:シティポップというよりは、自分たちにとってはAORなんですよ。呼び方がシティポップになって、今はネオシティポップとか、ヒップホップが入った今どきの感じになっていく、そういう枝分かれはあると思うんですけど。「プラスティック・ラブ」(竹内まりや)と「真夜中のドア/Stay with me」(松原みき)の2作を中心としたシティポップというジャンルが海外で注目を浴びているという情報を受けて、“だったらやろうよ。AORだし”ということですね。だから、今シティポップが注目されてるからDEENもやってみた、ということではないんです。急にやったらおかしいでしょ?
――もともとDEENはAORという看板を掲げて、長年やってましたからね。
池森:最近はビルボードツアーで、AORな曲たちが似合う会場でやることも多くなったので。前回のビルボードライブが終わった後に、“久しぶりにAORに特化したアルバムを作ろうか”という話はしていたので、そこにシティポップというムーブメントが重なったということですね。でも、うれしいですよね。40年前の作品が、しかも海外からの逆輸入で入って来るというのは。「プラスティック・ラブ」をカバーしている外国人の歌を山根に教えられて、“かっこいいね”と思ったし、そこで新たな刺激も受けて、DEENなりにシティポップをアレンジしてみようという気持ちがどんどん広がってきたという感じですね。
山根公路:SNSとかで情報が得やすい時代になってきて、若い子も聴いているんですよね。それは“いいものはいい”ということだと思うし、人の琴線に触れるメロディや歌は、どの時代にもどの年齢層にも触れるんだなと思いましたね。
――たとえば『POP IN CITY~for covers only~』を作って、AORの楽曲をカバーして、どんな発見がありました? シティポップの法則というか。
山根:基本はアレンジじゃないですか。メロディとかは日本に昔からあるもので、洋楽とはまた違う、Aメロ、Bメロ、サビがちゃんとあったりとか。それこそ「真夜中のドア/Stay with me」とかもそうだし、メロディというよりもアレンジで、お洒落な感じになるんじゃないかな。それにシティポップという名前をつけたということだと思います。
池森:あの時代にAORと呼ばれていた外国の音楽に憧れを持って、どうしたら日本人の我々がああいうかっこいい音楽を作れるのか?ということを考えた、先人たちが作り上げたジャンルがシティポップということですよね。AORはソウル、ジャズ、フュージョン、全部の音楽がミックスされた音楽だから、一番出し惜しみがないというか、あの時代に錚々たるミュージシャンを集めて作った音楽だから、かっこいいんじゃないですかね。ただ、じゃあアレンジさえかっこよくすればシティポップになるのか?というと、それはちょっと違うと思うんですね。それなりの要素が必要というか、たとえばフォーキーなコード進行をシティポップにしようとしても、それはたぶん無理。いくらお洒落にしてもちょっと無理がある。コードがCから始まるのではなく、Fメジャーから始まるとか、そういうちょっとしたことで全然違うので、ある程度の条件はあると思います。
――サウンド的には、サックスをはじめとして、ブラスセクションの音も大事な要素な気がします。今回のニューアルバムでも大活躍していますけれども。
池森:ブラスはマストですね。“ここはサックスソロで”“ここはブラスセクションで”とか。
――山根さん、ニューアルバム『シュプール』の作曲に向かう時に、そういったシティポップ要素を吸収してきた成果は出ていると思いますか。
山根:そうですね。ただ吸収という意味では、最近の20代のミュージシャンが作っている今のシティポップが、すごいかっこいいんですよ。
池森:若い子たち、かっこいいよね。
山根:何を聴いてきたらこんなにかっこいいことができるんだろう?と(笑)。そこにインスパイアされた部分はあります。打ち込みの具合や、シンセの使い方も気が利いてるし、これはどうやったら出てくるんだろう?というものが多い。たとえばiriさんとか、歌は上手だし、アレンジしている人もすごいし、俺たちもシティポップはけっこう聴いてきたはずだけど、なんでこんなかっこいいものができちゃうんだろう?と思って、そういうものがすごい刺激になったりしますね。
――ああー。なるほど。
山根:メロディに関して言えば、自分の培ったものを出させてもらう部分はあるんですけど、サウンドに関しては、自分の引き出しだけではなくほかのアレンジャーの方の力を借りたりして、作っていきました。
――アレンジの面白さで言うと、1曲目「シュプール」とか、鮮やかな転調がかっこいいです。
山根:サビでいきなり半音転調してますね。そこらへんはけっこう強引に、逆にその方が耳に残ると思ったので。そこらへんも、いろんな曲を聴いていくうちに知ったことで、じゃあ自分でもやってみようということです。人の曲を聴くといろんな発見がありますね。それがまた楽しいんですけど。
池森:良くできてるな、と思うよね。だから今でも愛されてるんだなとか、歌詞も含めて学びましたね。自分の音楽ライブラリーが充実したと思います。
――アルバムにはカバーが2曲入っています。松任谷由実さんと桑田佳祐さん。選曲はどんなふうに?
池森:今回は“冬のラブソング集のアルバム”というテーマを掲げて作ったので、オリジナルあり、セルフカバーあり、そこに誰でも知っている日本の名曲を入れたほうが、テーマがより明確になると思ったので。「恋人はサンタクロース」と「白い恋人達」はウィンターソングの代表曲だし、自分たちの世代は、スキー場に行くと必ず「恋人がサンタクロース」が流れていたので、そんな思い出と共に選んだという感じです。
――そもそも“冬のラブソング集のアルバム”というテーマは、ずっとあたためていたものだったんですか。
山根:今まで、夏をテーマにしたアルバムが何作かあったので、今度は冬でやってみようかということでしたね。『シュプール』というタイトルはスタッフと一緒に考えたんですけど、冬のスキー場を連想させつつ、スノーとかホワイトみたいにあまり使われていない、いいタイトルだなと思います。
池森:デモを作る時も「シュプ1」「シュプ2」とかだった(笑)。
山根:作る側としては、題材が決まっているほうが作りやすいので。冬のラブソング集というテーマがあって、的を絞りやすかったところはありますね。
――歌詞は特にそうですよね。設定がはっきりしていれば、方向性もはっきり見えてくる。
池森:そうです。シチュエーションさえ決まれば、こういう二人で、こんなストーリーでとか、書きやすくはなりますね。
――たとえば1曲目の新曲「シュプール」は、どんなイメージで書いた曲ですか。
池森:「シュプール」は、“二人の道”ということですね。雪の上にシュプールを描くという意味もあるんですけど、二人の歩んできた道のりと、これから先の道についての歌です。
――ダブルミーニングになっているんですね。なるほど。2曲目「マイナス20℃」は、二人でオーロラを見に行こうという、スケールの大きな歌になっています。
池森:さっきの話じゃないけど、今はSNSでいろんな情報が得られるので、ちょっと調べたら、マイナス20℃の世界って北海道にもあるんですよ。そして何年かに一回ぐらい、すごい神秘的なオーロラを見ることができる。北極圏に行かなくても。だからこの歌詞のストーリーは、海外に飛び立つ準備ではなくて、国内のイメージです。
――1曲1曲、シチュエーションとテーマが変化していくのが面白いです。ただ6曲目「Happy New Year」だけは、冬のラブソングというテーマとは少し違いますよね。コロナ禍を抜けた先に、新しくていい年が訪れますようにという、メッセージ性の強い歌詞になっている。
池森:まさにその通りで、コロナという世界的な危機をバックボーンに置きつつ、でもいつまでも続くものではないと思うし、新しい年になって、もう一回みんなで夢を追える環境になればいいなという思いを込めて書いた曲です。この曲は、最初に聴いた時から頭の中でずーっとリピートしてましたね。デモの段階で、サビのメロディに乗せて“ダンシング”“フィーリング”とか、そういう言葉が乗ってたんですよ。すごくキャッチーなメロディだと思うし、自分でもハッピーになれますね。
山根:これは、どうやって作ったんだっけ? アルバムの終盤になって、せっつかれて作ったような…(笑)。
池森:でも、すぐできたよね。
――山根さん、お気に入りのメロディは?
山根:お気に入りのメロディは……「白い恋人達」かな(笑)。
――あはは。それはちょっと置いといて。
山根:全部、自分的にはいいなと思ったメロディを出しているつもりなので、1曲1曲に対して思い入れはありますね。順位付けはできないかな。
――新曲はわりと、アップテンポが多いですよね。
山根:そうですね。セルフカバーの2曲がバラードなので。
――セルフカバーは、「Christmas time」と「愛の鐘が世界に響きますように…」。これを選んだのは、どんな理由で?
池森:DEENに冬の代表曲は、意外とあるようでないので。でもこの2曲はファンの中にも浸透しているし、ほかに「永遠をあずけてくれ」という、クリスマスシーズンの曲もあるんですけど、過去に何度かセルフカバーしていたので、今回は初めてやる曲を選びました。
――どちらも素敵な曲ですけど、特に「Christmas time」はすごい曲だなと思います。メロディもアレンジも。
山根:なるべく音数を多くしないように、と思って作っていた記憶があります。
池森:20年だからね。
――まさに、時代を超える音。このアルバムが、どんなふうに聴かれるイメージがありますか。
山根:12月22日リリースということで、クリスマスシーズンに聴いていただけたらと思いますし、あとは冬のレジャーに行った時に、ドライブしながら聴くのもいいと思います。冬の寒い日の夜、家路につく時に聴いてもらってもいいし、いろんなイメージで聴いてもらえたらいいなと思いますね。
池森:コンセプチュアルなアルバムって、浸透するまでにちょっと時間がかかると思うんですね。たとえば、今年の冬に出したアルバムが、来年の冬になって“また『シュプール』を聴きたいな”と思ったり、再来年にもまた聴きたくなったり。そういうふうに時間をかけて、冬のシーズンのマストアルバムに育ってもらいたいなと思いますね。
――確かに、達郎さんの「クリスマスイブ」とかも、リリース当時から何年もかけてヒット曲になっていきましたし。
池森:そうそう。そんなふうになれたらいいなと思います。
――あらためて、2021年に“シティポップ”を掲げた3作を作り終えて、今思うことは?
山根:もともと“それ育ち”なところはあるので、これをこうしたからというよりは、自分の体から出てくるものが大きかった気がしますね。それこそ大学生ぐらいの時に、AORと呼ばれる外国の音楽をよく聴いていたので、こういうものをやってみようと言われた時に、すんなりと入れた部分はあると思います。そこは理屈ではなくて、“ああ、知ってる知ってる”という感じでしたね。
池森:こういうサウンドって、BGM化できるところがいいと思うんですよ。どうしてもJ-POPって、歌詞も含めて“聴かなきゃ”という感じになるんですけど、AORのような洋楽はそうではなくて、この空間にあの音楽が流れているからあのお店に行きたいとか、そういう要素はあると思います。小さい音で流れていても全然違和感がないというか、そっちに耳が取られないというか、そういうものはありますね。シティポップやAORには。
――この路線、しばらく続きそうですか。
池森:そうですね。ただ、ロックなビートももちろん好きなので、それはそれで、またコンセプチュアルなものとして……自分はコンセプチュアルなものがすごく好きなので、今までもいろんな引き出しを開けながらDEENの音楽を作ってきたし、これをベースに、またいろんな方向性が生まれるかなと思います。
――楽しみにしています。そして2022年になるとすぐに、1月9日、10日に軽井沢大賀ホールで『DEEN Premium Winter Live 2022~シュプール~』が開催されます。どんなコンサートになりそうですか。
池森:もちろん『シュプール』の楽曲をお披露目するんですが、ツアーとかではなく、何かスペシャルなものでみんなとこのアルバムを共有したいというのがアイディアの出発点です。たとえば松任谷由実さんが、苗場のスキー場でやっているライブがありますよね。ああいうイメージでやりたいと思って、どこかのスキー場のふもとで、ゲレンデが見えるところでやるのが理想だよねという話をしている時に、“軽井沢はどうだろう?”という話になって。会場からスキー場は見えないけれど、ホールに入る時には見えるし、大賀ホールで僕らは何回もやっているので、東京からも近いし、そこに決めました。全国に行けないのは申し訳ないけど、みんなに軽井沢の冬を体感してもらいつつ、素晴らしいホールで『シュプール』を聴いてもらおうというコンセプトです。そして今回は初めての企画として、お客さん全員にプレゼントを用意しています。それもね、まあまあいいものですよ(笑)。
――まあまあいいもの(笑)。気になりますね。
池森:まあまあいいものなんですよ、本当に(笑)。音楽を楽しんでもらいつつ、スペシャルなプレゼントで喜んでもらいたいというアイディアが実現しました。それもぜひお楽しみに。
山根:今までは夏に大賀ホールでよくやっていましたけど、冬の軽井沢はどれだけロマンチックになるか、どれだけ寒いか(笑)。まったく想像がつかないんですが、新しい体験をみなさんと共有できて、DEENの新しい1ページを一緒に作っていけたらと思います。

取材・文=宮本英夫 撮影=大橋祐希

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