the GazettE 約2年ぶりツアー最終公
演で見た、バンドとファンの絆の強さ

LIVE 2021 -DEMONSTRATION EXPERIMENT- BLINDING HOPE

2021.12.23 東京ガーデンシアター
2021年5月に10枚目のアルバム『MASS』をリリースしたthe GazettE。しかし、そのタイミングではツアーは発表されなかった。折からのコロナ禍で、彼らもライブそのものを自粛しており、どのようにライブを成立させるべきなのか、かねてから幾度となく行われていたミーティングが、その時点でもまだ継続していたのだ。そして7月になって明らかになったのが、『LIVE 2021 -DEMONSTRATION EXPERIMENT- BLINDING HOPE』と題された東名阪での公演だった。the GazettEにとって約2年ぶりとなるライブである。
ところが、大阪と名古屋でのライブを盛況に終え、11月1日に行われるはずだった東京公演は、当日になって急遽、延期が発表された。RUKI(Vo)が喉の不調で発声が不可能になったという予期せぬ事態だった。その動向が注目されたが、本公演は12月23日にリスケジュール。文字通りに、ようやく迎えることができた最終日となった。
the GazettE/RUKI(Vo)
公演中の注意事項を伝えるアナウンスが始まり、SKID ROWの「My Enemy」が流れる。the GazettEのライブの幕開けを告げるいつもの光景である。ついに彼らが戻ってきたことを実感した瞬間だった。ほどなくして場内が暗転し、重厚なオープニングSEが聞こえてくると、ステージに掛けられた巨大な紗幕にレーザーで緑色の円形模様などが描かれていく。続いて聞こえてきたのは、『MASS』のリードトラック「BLINDING HOPE」のイントロダクションである。ステージに5人の姿を確認したとき、それだけで込み上げてくるものがあった。
ヘヴィな轟音をまとっていながら、RUKIの歌い上げる言葉が鮮明に届いてくる。これまで同様に、音響面についても入念にリハーサルが行われたのは間違いないが、心配された歌唱に不安を抱く箇所もない。ファンに向けたメッセージでもある「BLINDING HOPE」を通して、互いの存在を確認していく様は、徐々に熱気を帯びた空間へと変容していった。そのまま「来いよ、東京!」との煽りで「ROLLIN’ 」が始まると勢いは加速。音源でも予想できたように、激しいサウンドとグルーヴが客席を揺らす。REITA(Ba)のスラッププレイもいいアクセントだ。そして麗(Gt)がお立ち台の上に立ち、ギターをかき鳴らして前作『NINTH』からの「GUSH」へ。このスムーズなつながりに選曲の妙が見える。
the GazettE/麗(Gt)
曲が終わると、観客から拍手が送られた。ただ、驚いたのがその長さだ。いつまでも途切れることなく続いていくのである。バンドの帰還に対する心からの反応であることは理解できるが、コロナ禍での様々なライブを観てきたとはいえ、このような状況を目にしたのは初めてだった。
「待たせたな! マジで心配かけました。見ての通りピンピンしてるので安心しろよ。今夜は俺も全力で暴れていくからさ」とRUKIはファンに挨拶。ストリングスの同期と重低音が絡んでいくミッドテンポの「NOX」で、じっくりと会場を一つの音塊へと引き込んでいく。戒(Dr)がリズムを刻んで「CLEVER MONKEY」が始まると、客席は一様にヘッドバンギングに興じる。2000年代のヘヴィロックの流れをとりながら、the GazettEらしい叙情性も織り込んだマテリアル。キレのいいリフの刻みもポイントだ。その盛り上がりを畳み掛けるように増幅させたのは「裏切る舌」である。特にライブにおいては、ドラムの激しいプレイが楽曲に効果的な起伏を作り出す。反応のよさに「やるな、東京!」と称えるRUKI。さらには新作から「HOLD」へ。アグレッシヴかつアッパーなサウンドに身を委ねるオーディエンス。この日までに『MASS』を充分に聴き込んできたことは容易に想像できるが、実演での即効性の高さがある曲ゆえのリアクションだ。
the GazettE/葵(Gt)
ここからはしばし“静”のパートへ。まずは『DIVISION』(2012年8月発売)に収録されていた「DRIPPING INSANITY」が始まると、観客も一様に聴き入る。インダストリアルなサウンドも配したパワーバラードであり、the GazettEの名曲に挙げる人も少なくないだろう。次に披露された「THE PALE」がまた素晴らしかった。『MASS』においても中盤の重要な位置にある楽曲だが、ライブ空間でどう表現すべきなのか、夜空とも宇宙とも捉えられる、その世界観を具現化した照明等の演出は、この日のハイライトの一つだったと言っていいだろう。メンバーも静穏たる音像を的確に紡いでいく。アコースティックギターを用いた「LAST HEAVEN」で伝える寂寥感も染み入るもので、エンディングのギターソロもまた印象的に響いてくる。
the GazettE/REITA(Ba)
ここで「ガンジスに紅い薔薇」を配して場面転換。“ガンジス”と“薔薇”という非現実的なタイトルにも表れているが、歌詞に見出せるアイロニーもまた興味深い。リズミックな演奏も心地よく、ライブの場ではその魅力もさらに高まる。ベースとギターのソロプレイをつないでいく間奏も見どころだ。
もちろん、この後も拍手は鳴り止まない。規制によって、普段のように歓声を上げられない状況ではあるものの、こういった形でのオーディエンスの熱い思いの表現が、バンドを鼓舞したところもあるようだ。それに応えるかのごとく、後半は一気に攻撃的なマテリアルを連射していく。
the GazettE/戒(Dr)
「やれんのか?」「いけるかい?」「かかってこい!」といつもの煽りで始まった「INCUBUS」で場内の温度が一気に上がる。そのまま「まだまだついてこれるよな!」と破壊力抜群のイントロを持つ「TWO OF A KIND」へ。サビではジャンプしながら手を高く掲げる観客。ハードではあるが、メロディはキャッチーだ。さらには今や定番曲とも言える「UGLY」が始まると、自ずから一体感も増し、明らかにオーディエンスも体の動きが大きくなった。名盤『DOGMA』の続編的な位置づけであり、鬱屈した状況からの自身の解放とも解釈できる主張が、力強くバンドサウンドと同調していく。
そこで待ち構えていたのが「ABHOR GOD」だった。『NINTH』のツアーで繰り返し演奏する中で、最も進化した楽曲とメンバーも認めているが、昨今のthe GazettEが生み出すアンサンブルの強さを明確に体現したパワーチューンである。ここまでほぼクールな佇まいでプレイしていた葵(Gt)が突然激しく頭を振り乱してパフォーマンスしていた姿も極めて印象的だったが、この曲を「UGLY」の直後に配したのは、自信の表れ以外の何ものでもないだろう。「ラスト」と宣言されて聞こえてきたのは「UNFINISHED」。本編は『NINTH』同様の流れで疾走感を保ったまま終了した。
アンコールでは「INSIDE BEAST」「VERMIN」「HEADACHE MAN」「Filth in the Beauty」「TOMORROW NEVER DIES」というバリエーションのある5曲を用意。お馴染みのものばかりゆえに、オーディエンスも奔放に盛り上がっていく。演奏が終わった後には、各人がマイクに向かい、今の思いを言葉にする場面があったが、やはり主題となったのは、このコロナ禍での日々のことだ。それらを抽象するならば、ファンに支えられてthe GazettEがあることへの謝意であり、その絆の強さを改めて確認できたツアーだったという実感になるだろうか。
結成20周年となる2022年3月10日には、東京・国立代々木競技場 第一体育館にて、『20th ANNIVERSARY -HERESY-』が行われることも発表になった。この2年は周年ライブを中止せざるを得なかっただけに、メンバーにとってもファンにとっても、特に感慨深さを抱く日になるはずである。また、RUKIからは「来年のことも決まっている」「会える機会は増える」との発言もあった。よく考えてみれば、今回のツアータイトルには“実証実験”なる意味があり、『MASS』からは5曲しか披露されていない。2022年に何が計画されているのかは、自ずから明らかだろう。そのアニバーサリーイヤーをどう駆け巡るのか。続報を楽しみに待ちたいところだ。
取材・文=土屋京輔 撮影=Keiko Tanabe

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