LUNA SEAというバンドの奇跡の物語、
2年越しでたどり着いた全国ツアーの
『GRAND FINAL』を振り返る

LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CORSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL

2021.1.9 さいたまスーパーアリーナ
LUNA SEAが1月8日、9日に、さいたまスーパーアリーナにて開催した『LUNA SEA 30th Anniversary Tour -CORSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL』。その公演の2日目、9日の公演を振り返りながら、改めてLUNA SEAというバンドの奇跡の物語を考察していく。
この日のアンコールで、「このコロナの中、多くの方が命を落としました。その中で俺たちが生きているってことは“奇跡”を起こし続ける使命があるんだと思う」と言ったのはSUGIZO(Gt)だった――。
世の中に、彼らほど奇跡を起こすことを実践してきたロックバンドは他にはいないんじゃないだろうか。なによりも、“終幕”を宣言(2000年11月)するほどまでに一度はぶち壊れてしまった5人が、新たに“REBOOT”して再び同じメンバーでこうしてLUNA SEAをいまの時代にやっていること自体が信じられないような奇跡だと思う。終幕前の彼らは“嵐を呼ぶバンド”と呼ばれていた。ここ一番という大舞台に限って、台風に大雪、突風といった想定外の悪天候に見舞われ、そのたびにファンであるSLAVEとともに数々の奇跡を引き起こし、その逆境を覆して様々な伝説を作ってきた。
終幕を経て、2010年のREBOOT後はどうか。終幕後も、困難はあった。ここ近年、バンドが結成30周年のアニバーサリーイヤーに突入する辺りから振り返っただけでも、想定外の困難に彼らは次々と襲われている。
RYUICHI
2019年、RYUICHI(Vo)は上半期に肺腺がんで肺の一部を切除、下半期は声帯ポリープ切除と1年間に2度の入院、手術を余儀なくされた。結成30周年記念日となる2019年5月29日、肺線がんからの復帰公演で、RYUICHIが「まだ神様に呼ばれなかったんでもう少しだけ地上で歌います」と語ると、INORAN(Gt)は「RYU ちゃんの隣りでギターを弾けることに感謝してます」と感極まったように瞳を潤ませ、SUGIZO(Gt,Vn)は「こうしてメンバーが変わることなく30周年を迎えられたのは奇跡」だと言い、真矢(Dr)はこれを引き起こしたのは「ファンの愛の奇跡」だと伝えた。そしてこの後、J(Ba)は復活を讃えるようにRYUICHIの肩に手を回し、記念撮影を終えた。
そして2020年2月から最新アルバム『CROSS』を携えて30周年記念全国ホールツアー『CROSS THE UNIVERSE』をスタートさせると、ツアー初日を開幕した矢先、新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるいだし、ツアー自体が延期に。12月26日、27日、『LUNA SEA-RELOAD-』のさいたまスーパーアリーナ公演でいよいよ復活ののろしを上げようとしていたその当日、今度はメンバーの真矢が新型コロナウイルスに感染というアクシデントに見舞われ、公演は延期に。
2021年3月27日、28日に同所で行なった振替公演のとき、「このまま死ぬかもしれないと思って……」と感染時のことを振り返り「SNSを通してみんなに助けられました」と涙を流した真矢。演奏が終わるとステージで男泣きする真矢の周りをメンバーが取り囲み、5人は自然と肩を組んだ。
SUGIZO
こうして様々な困難に見舞われ、ツアーも再三に渡って延期、振替を繰り返しながらも、“音楽を止めない”という誓いを立てた彼らは、3月のさいたまスーパーアリーナ公演『LUNA SEA -RELOAD-』、5月の東京ガーデンシアター公演『THE DAWN』を経て、6月から全国ホールツアー『CROSS THE UNIVERSE』を再開させた。
だが、今度はまたもやRYUICHIがいままで経験したことのない喉の不調に襲われる。そして、2022年1月31日、2月1日に大阪国際会議場メインホールで開催する振替公演後、RYUICHIは声帯にできた静脈瘤(微小血管病変)を除去する手術を行なうことと、そのため、振替公演後はLUNA SEAとしてしばらく充電期間に突入することを2021年末に発表したのだ。
こんなバンド、他にいるだろうか。“さあ、次はこの困難をどう乗り越えるのか。奇跡を見せてみろ”と、神様から自然界、さらにはメンバーの生死に関わるような難問テストが与えられようが、これまでその困難を覆すような奇跡をたびたび起こしてきた彼ら。ここからは、2022年1月9日の『GRAND FINAL』2日目のライブを振り返りながら、この日、LUNA SEAがどうやって困難に立ち向かっていったのかを検証していきたいと思う。
開演前のバックステージ。LUNA SEAのインスタグラムのストーリーを通じて、ステージに出るときの気合いを入れる掛け声は、喉の負担を配慮していつものRYUICHIに代わってSUGIZOが行なっている映像がアップされた。手術を発表した時点で、RYUICHIの喉でただ事ではないことが起きていることは容易に想像できた。
INORAN
ツアー同様、本公演はコロナ対策として換気タイムを挟んだ2部構成のスタイルになっていて、「LUCA」で幕開けした第1部は最新アルバム『CROSS』をメインに置いたセットリストで次々と展開していった。「LUCA」からRYUICHIの声がこれまでと違って滑らかではないのは明らかだった。それをビシッとサポートするようにINORANは低音でハモリを入れる。SUGIZO、J、INORANがフロントに飛び出し、2曲目はおなじみの「Déjàvu」。ギターソロを弾き終わったSUGIZOは去り際にRYUICHIの肩に手を触れ、そのパワーを携えたRYUICHIが《あなたさえ》と再び歌い出すパートはINORANが横にきてRYUICHIを見つめる。
「オンベース、J!」というRYUICHIのコールから「Pulse」が始まる。本来ならもっと煌びやかな声で観客を包むところだが、その声色が出せない分、RYUICHIはところどころ声を張りあげるようなアレンジを入れた唱法で想いを届ける。彼が出せない声色を代弁するように、Jはベースのニュアンスで曲に光の温かさを注いでいく。もうこの時点で涙が溢れた。ボーカルが本調子じゃないなら迫力あるバンドサウンドでカバーするとか、いまのLUNA SEAはそんな単純なものではなかった。RYUICHIのボーカリングの凄さを一番知っている4人は、いまの彼が表現できない歌の様々なニュアンスを切り取り、楽器の音色、フレーズに気を配った演奏や、声色やボリュームを調整しまくったハモリやコーラスなど、すべてのパフォーマンスが命がけで本気で歌をサポートしていく表現になっていたのだ。そのステージングが、あまりにも胸にグサグサ刺さって泣けてきた。
J
終幕前まで全員がバチバチだった彼らからは想像できないこのステージング。もうこの時点で奇跡だと思った。RYUICHIの喉が不調になって以降、各地方でこういうことを積み上げてきたのだろう。この日観たLUNA SEAは、プレイヤーとして全員がとても沈着冷静に、音に、コーラスに集中していて、演奏力、表現力ともに見違えるほど進化を遂げていた。
4曲目の「PHILIA」では、さらにRYUICHIの声がかすれだし、うまく声が出ない。こんなに歌でもがくRYUICHIの姿はいままで見たことがないほど、声は本調子には程遠かった。だが、ここからのRYUICHIが凄かったのだ。なんたって連続ライブは8時間以内に100曲を歌う偉業を達成するほどの鉄人のような喉の体力を持ち合わせ、ソロコンサート『No Mic,No Speakers』を通して職人のように研究を重ねたテクニックで歌を操る、あのRYUICHIである。声が出なくても諦めないのだ。歌に全集中するように体を折り曲げ、ここで出せないなら、ここに声をあててとか、声が張れなさそうだと思ったら即座に囁くような唱法にアレンジしてなど、ボーカルを模索して歌っていくのだ。しかも、そんな声の状態であっても曲の中盤、見せ場となるシャウトは全力で入れていく。喉を温存しようという考えなどまったくない様子で、声を絞り出して最後まで歌いきるRYUICHIに、客席は声に出せない気持ちを長い長い拍手に込めて、ステージに届けた。
真矢
「宇宙(そら)の詩(うた)~Higher and Higher~」を含め、『CROSS』は歌のキーがどれも高い。伸びやかな高音が出せない歌の代わりに、この曲は真矢の躍動感たっぷりなビートにのせ、SUGIZOの付点八分ディレイが全開になって観客を大気圏まで連れていった。そして大気圏から「anagram」で闇の中へ。ジャケットを脱いだRYUICHIの声はひどく掠れ、途切れ途切れになる。裏返りそうになる声をなんとかコントロールしようと、途中から床に両膝をついて重心を下に落とし、そこからさらに体を折り曲げて声を絞り出そうとする姿は鬼気迫るものがあり、胸が締め付けられる思いだった。凄いものを見てしまった。曲が終わると、それを察したSUGIZOとINORANがすぐさまRYUICHIに近寄り声をかける。3人でなにかを話したあと、下手に戻ったINORANがJに声をかけるとJが頷く。真矢と視線を交し、こんな状況でもRYUICHIは笑顔を浮かべ、「BLACK AND BLUE」を歌い出すと、SUGIZOとINORANはパワーあふれるコーラスで、オーディエンスは腕がちぎれるんじゃないかというぐらいの勢いで手を左右に振ってこの曲の盛り上がりを作ってみせた。そうして、最後はバラード「悲壮美」をRYUICHIは気迫で歌いきり、第1部を締めくくった。
歌えそうな曲に変えたり、キーを調整したり、曲数を減らすとかの変更は一切なし。いまこの瞬間で終わっても後悔はない――。それぐらいヒリつくような覚悟をもって、目の前のライブに命をかけ、彼らはこのツアーの『GRAND FINAL』の舞台に立っている。もういいから誰か彼らを止めて――。本音ではそう思った瞬間もあった。けれども、彼らは過去の経験で知っているのだ。本気で、命がけで勇気をもって挑まないと奇跡は起こせないことを。そうして、これまで見たことがないようなアクトで実際に第1部を乗り切ってみせた。
換気タイムを挟んで「JESUS」から始まった第2部は初期の楽曲、代表曲を中心にセットリストを展開していった。「DESIRE」はそのなかでも比較的歌声が安定していた。ここではRYUICHIめがけて走ってきたSUGIZOが間奏を弾き終えたあと、顔を近づけRYUICHIのマイクで2人一緒に《DESIRE》を唱えたり、大サビでコーラスを入れるINORANを見てRYUICHIが微笑んだりすると、第1部の緊迫した緊張感から解き放たれたように場内に楽しい空気が広がっていった。真矢のドラムを合図にINORAN、J、SUGIZOが次々とステージ左右へと繰り出し、フロント3人がユニゾンでコーラスを歌う「SHINE」では、客席が一丸となって手を左右に振り壮観な景色を作りあげると会場には弾けんばかりのパワーが充満し、ものすごいエネルギーと光を場内に放ち出したのだ。また、奇跡が起こった。それを喜ぶ観客の拍手はいつまでも鳴り止まなかった。
「やっぱりライブですよね。みなさん」と、奇跡を感じとったRYUICHIが観客に話しかける。「ライブをやってると強くなれるし、燃えてくるっていうか。俺らはライブの注入が大切なようですね」と言って微笑みを浮かべた。
レア曲タイムは、いつの間にかこのツアーの人気コーナーとなり、この日は終幕前のアルバム『LUNACY』収録の「FEEL」が選ばれた。いまの彼らならではのめちゃくちゃカッコいい演奏で「FEEL」を届けたあと、大切なバラード「I for You」ではハスキーな声での歌唱に。その代わり、ここでは客席がRYUICHIに向かって手を伸ばし、それぞれの愛を届けていた。その愛を受け、続く「ROSIER」はRYUICHIが奇跡のトリガーを引く。センターでSUGIZOと向かい合ったRYUICHI。声は出ていないが息は出ている。その状態でも、いつものようにノンブレスでこの曲のハイライトシーン作りに挑んでいく様は、見ていて鳥肌が止まらなかった。
そうして、ブレイクで「全員飛ばしていくぞー!」と信じられないようなシャウトを轟かせ、「もう一丁いこうか」といつものように煽って迎えたラストソング「BELIEVE」で到達した場所。そこは高揚感、多幸感とともに、いつも以上に愛が溢れる温かな場所だった。こんな瀕死な状態でも、諦めず、本気で命がけで挑めばこんなところにまでみんなと駆けあがれる。これが、LUNA SEAがこの日、目の前で起こしてみせた奇跡だった。
アンコールで行われたメンバー紹介。真矢はこの日のRYUICHIについて「RYUちゃんがものすっごい全身全霊で思いっきり表現してくれていて……」まで話すと、感極まって声をつまらせる。すると、ドラム台の下にいたRYUICHIは「そんなことない」と小声で口走りながら目頭を押さえ俯いた。Jは「RYUが完全になるまで俺たちは充電期間に入りますけど、今後も全力で行きたいと思うんですが、どうですか?」と問いかけると、客席からは賛同を示す拍手が沸き起こった。コロナ禍で「2年間かかってここまでこれました」とこのツアーを振り返ったINORANは「ホントここまで連れてきてくれてどうもありがとう」とファンに感謝の気持ちを伝えた。「このコロナ禍の中、もっとも学んだのはこの一瞬一瞬が奇跡の連続だということ」と語ったSUGIZOは、LUNA SEAのライブで感染者が出たりクラスターが起きてないことを告げた上で「音楽は、ライブは安全に楽しめる方法があって、不要不急じゃなく、俺たちの人生に必要なものだと証明してきました」と言ったあと、「命ある限り、俺たちとみんなでLUNA SEAという旅を続けましょう」と語った。そのSUGIZOから「命を振り絞って歌ってます」と紹介されたRYUICHIは、客席から沸き起こった大きな拍手に包まれながら「僕はこのあと、声帯のオペを行います。光しか見えてないんで」と手術のことについて触れ、「僕は本気の仲間と出会い、本気になれる人生と出会えた。必ず帰ってきます。待っていて下さい」と最後に力強い言葉を届け、挨拶を締めくくった。
そうして、アンコールの最後に「so tender...」を届けたあと、みんなでエアー手つなぎをしてジャンプで一つになり、『GRAND FINAL』公演2日目を終えた彼ら。終わってみればRYUICHIの言葉ではないが、困難を突き進んだこの先には光しかない。それをライブで実践してくれた夜だった。
このあとLUNA SEAは1月31日、2月1日の大阪公演を終えたあと、充電期間に入る。いまや困難が降りかかるたびに奇跡を起こし続けてきたバンドは、さらに最強になって戻ってくる。その日を疑いなく、楽しみに待っていたいと思う。

取材・文=東條祥恵
撮影=田辺佳子、岡田裕介、横山マサト

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • SUPER★DRAGON / 「楽楽★PAINT」
  • OLDCODEX / 「WHY I PAINT ~なぜボクがえをかくのか~」
  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • POP TUNE GirlS / 『佐々木小雪のイラスト花図鑑』
  • POP TUNE GirlS / 『涼水ノアの、ノアのはこぶ絵』
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」

新着