Base Ball Bear・小出祐介×橋本絵莉
子 互いの近況から共通項のある新譜
、知られざるルーツまで。とことん語
り合う

バンド結成から20年の時を重ね、最新にして最高到達点を更新するニューアルバム『DIARY KEY』をリリースしたBase Ball Bearの小出祐介。チャットモンチーの完結から3年を経て、ファーストソロアルバム『日記を燃やして』を完成させた橋本絵莉子。ほぼ同期デビュー、対バンやコラボも多く、仲の良さで知られた両者の作品のどちらも「DIARY=日記」がタイトルになったのは、果たして偶然か必然か?

SPICEでは2枚のアルバムのリリースを記念して、「ちゃんと話すのはチャットモンチー完結以降初めて」(小出)という対談取材を敢行。小出が『日記を燃やして』に鋭く切り込み、橋本がBase Ball Bearへの共感を語り、二人がアーティストとしての成長を共有する。ここでしか読めないロングインタビュー、開幕。
小出祐介:僕と絵莉子の現在地点の違いとして、僕は引き続きバンドをやっていて、絵莉子はチャットが完結して、今はソロになってるから、どんなアレンジをやっても良かったはずじゃん?
橋本絵莉子:うん。なんでもいい。
小出:それでもバンド形態を選んだというか、鍵盤も入れずに、ギターとベースとドラムという形の作品になったのが、ちょっと意外だったの。
橋本:そういうの、しないと思ってた?
小出:というか、選択肢がいろいろある中で、「わざわざギターバンド編成でやらないだろう」という先入観があった。バンド時代にやれなかったこともあるだろうし、ソロになったらいろいろやるんだろうなと思ってたら、まさかのバンド形態だったから。それでびっくりした。
橋本:あー、なるほど。
小出:チャットモンチーはずっと肉体性をともなうバンドだった。ところが、終盤はツーピースになって、打ち込みが入ったりして、肉体を失うというところまで行っての最終作だったわけじゃない? そういうキャリアを積んできた人が次に選ぶのは何だろう?と思った時に、ピアノが入ってるとか、そういう形を予想してたら、バンド形態で。なおかつそのバンドアンサンブルも、腕利きのみなさんが集まって作るもので、チャットモンチーとは異なる性質のものだった。
橋本:うん。そうね。
小出:そこでの絵莉子の肩の力の抜け方の塩梅がちょうど良かった。つまり……すごい遠回りしてきたけど、総じて「めっちゃいいな」ということです。
橋本:あはは。うれしいよ。そんな言ってくれる人、おらんけん。今回は、リリースしようと思って作ってなかった曲がわりと入ってて、いい意味であんまり何も考えてないのね。絶対バンドアレンジにしようと決めてたわけでもなくて、作りたいまんまに作ったら、こういうバンドサウンドになっていった。
小出:なっていったんだ。
橋本:なっていった。自分が作りやすいというのもあるのかもしれんけど。楽器を扱いやすいから。だから、あんまり深く考えてないというのはあるかも。
小出:固定のバンドメンバーではない中で作品を作るって、どんな感覚なの? 僕は経験がないから。
橋本:どうなんだろうね?(笑) でも、ベボベもな、スリーピースになって、サポートギターを入れてた時期があったでしょ? その時とかさ、人を選ぶやん。そこからアレンジ、という感覚なかった?
小出:ああー。いや、でもね、その編成では作品を作ってないから。
橋本:そっか。ライブだけか。なるほど。
小出:そう、だからそこは、僕がまだ踏み込んでない領域なのよ。
橋本:でも、こいちゃん、いろんな人と曲作ってるよね? それの感覚と近いかも。
小出:なるほどね。メンバーがこの人とこの人だから、こういうふうにしていこうとか。
橋本:そう。曲の2割とか3割はそういう部分があるから。それを自分の名前で作ってるという感じかな。でも、名前ってすごいなと思ったよ。チャットと橋本と、全然違う。
小出:どう違うの?
橋本:チャットはかなり、鎧(よろい)感があったから。鎧を着てる感が、エフェクター踏んでる感がすごいあったけど、ソロは丸腰やからさ。ちょっと怖いところはあったよ。
小出:細かい話だけど、今回のアルバムって、ギターが全然歪んでないじゃない? ドラムも部屋鳴りがしっかりあって、ベースがどっしり乗ってるし、全体的にナマの音の手触りというか、あったい感じがあって、なおかつギターの歪みが空間を埋めてないから、「部屋」をすごい感じるの。それって大人っぽい音作りだなと思ったんだけど、たとえば記名性の高いバンド、つまりチャットモンチーだったら、あったかすぎる音色はチョイスしないんじゃないか?と思ったのね。今の絵莉子が、自分が大人になったこともあると思うけど、大人の人たちと一緒にやることで、大人っぽい音色のチョイスになってるのかな?と。それはバンドじゃやれない、ソロだからこそチョイスできることなのかなと思ったかな。
橋本:なるほど。なるほどですね。
小出:すごい考えたのよ。なんでこういう音像になったのかな?って。でも確かに、自分に置き換えて、「自分が自分のバンド以外で、バンド形式で何かやるとなったらそうなるかも」と思った。うちは10代からやってるから、ずーっとどこかにやんちゃ部分があるのよ。キッズな部分がどこかにあって、最新作でもやっぱりそう。
橋本:『DIARY KEY』が? だいぶ変わったなあと思ったけどな。すごくいいなと思ったし、めちゃ好きよ。
小出:ありがとうございます。
橋本:でも、キッズな感じが残ってるというのはわかる。特に、集まるとそうなるよな。集まっちゃうと、その時のノリになるからさ。
小出:どうしても、学生時代に演奏していた延長線上の自分になるから。チャットだったら、ギターをいろいろ歪ませたりしてたんだろうけど、今回、クランチ(クリーンとオーバードライブの中間)っぽい音が多いから、「このチョイスはソロならではなのでは?」と思った。そこが大人っぽいし、「大人になったねぇ」と思った(笑)。
橋本:そうか(笑)。
小出:まあ、自分らも大人になったなとは思う。振り返ってみれば、チャットと出会ったのが16年前だけど、16年前はまだ全然子供でしたよ。
橋本:本当に。子役ぐらい子供だった(笑)。
小出:『若若男女サマーツアー』とかさ、映像を見ると本当につらい気持ちになるくらい、子供たちの集まりで(笑)。そこから十何年を経て、作品を作り続けて、更新され続けてるからね。で、このタイミングで出たアルバムが、まさかの「日記かぶり」という(笑)。
橋本:私、すぐにマネージャーさんに連絡したよ。「どうしよう?」って。
小出:うちは、「かぶって、うけるね」っていう感じだった。このタイミングで、同じようなことを考えてたんでしょうねというのが面白かったし。
橋本:そう言ってくれてよかった。
小出:だって、違うしね。
橋本:そう。Base Ball Bearは『DIARY KEY』だからね。KEY=カギがある。
小出:でも絵莉子のアルバムも、最後に“鍵付きの”っていう歌詞がある(※10曲目「特別な関係」)。
橋本:あるんです(笑)。
小出:それも面白かった。どういう流れでこういうタイトルになったの?
橋本:自分の身の回りのことを燃料にして曲を作ってるな、日記みたいだなと思ったのが、タイトルを考える始まりだった。で、『日記』にしようかと思ったけど、ちょっと牧歌的なイメージがあるやん? それで「日記」という言葉をいろんなところに持っていって、やっぱり燃料にしたというのがあるから、燃やすやから、『日記を燃やして』になった。最初、誤解されるかなと思ったの。「過去を捨て去りたいのかな」って思われるんじゃないか?と思って、寝かせておいたの、ずっと。でも考えれば考えるほど、これだけしかピンとくるものがなくて、口で説明すればいいかということになって、これになった。Base Ball Bearは、なんで『DIARY KEY』なの?
小出:僕の場合は、実際に日記的に作曲してたの。去年(2020年)の5月ぐらいから始めて、その頃は家から一歩も出てないし、メンバーとも4カ月ぐらい会ってないし、最初はちょっと長い休みぐらいかな?という感じでいたんだけど、いよいよ本格的にスケジュールの見通しが立たなくなって、さすがに何かやっとこうかなと思ったのと……こういう状況は30何年生きてきて初めてだったし、世界的に同じ状況に陥っていて、価値観が変わるタイミングかもしれないと思って、それをちゃんと記録しておいたほうがいいなと思ったのね。それで一日ひとネタ考えようと思って、それは音でもフレーズでも、歌詞でも何でもいいんだけど、毎日一個以上作っていて、それを4カ月ぐらいやって、一個一個検証して。それを何十個かにまとめてから、スタジオで3人でまた検証して、形にして、そこから選んでいった感じ。
橋本:じゃあさ、日記的に作ったというのが「DIARY」だとすると、「KEY」っていうのは?
小出:『DIARY』というタイトルがいいかと最初は思ったんだけど、あんまりひねりがないのと、歌詞の内容から考えると、「DIARY」よりも「生活」とかのほうがしっくり来てて。かといって「生活」というタイトルもどうなんだろう?って悩んでたんだけど、レコーディングセッションの終盤で、ここまで録り終えた曲を踏まえて、足りないパーツを作ろうと思った時に、「DIARY」じゃ足りないけど、「KEY=カギ」が付くといいなってどこかで思ったの。
橋本:パッて出てきたの?
小出:パッて出てきた。それも、歌詞の内容を考えていたからなんだけど、日記を書くみたいな感じで、人に言わないことってあるじゃない? おそらく墓場まで持って行くようなこと。それはきっと誰しも一つや二つ持っている、そういうものがあるよね?ということ。だから「KEY」が付いた。日記についてというよりは、日記のカギについての作品なんだと思ったら、「ああそうか」って納得できた。
橋本:ディレクターさんと話してる時だったかな。『日記を燃やして』と『DIARY KEY』の違いが、東京と徳島の差かもねって話してた(笑)。「やっぱベボベはアーバンな感じあるね」「同じ日記でも落としどころが違うね」とか、そんな話をしてた。
小出:たぶん絵莉子のアルバムも、うちのバンドのアルバムも、すごいざっくり言うと「生きる話」だなと思ってる。生きてることとか、暮らしとか、生活とか。
橋本:そうね。そうかも。
小出:で、うちの作品の場合は、それと同じぐらい「死」の匂いが強い作品なんです、実は。
橋本:そうなの?
小出:そうそう。気づかなかったらそれでもいいんだけど、そういう冷たさみたいなものがあるから、それがもしかしたら都会的に感じるのかもしれない。絵莉子のアルバムは、サウンドにもあったかさがあるし、あと、やっぱり母性があるよね。
橋本:出ちゃうなあ。それは。
小出:それがちゃんと作品のエッセンスになってる。橋本絵莉子という人の作家性に、今それが加味されてるのもすごくいいよね。
橋本:そこのバランス、難しいよね。どんだけ出していくか。
小出:作品における母性とか父性って、消す人が多いけど、僕はあっていいと思うよ。地球を抱く母の手みたいな、マザー感になっちゃうと話が変わって来るけど。広い意味で、生命を見つめる視点として、母性や父性があることは全然いいと思うし、それが芽生えたなら、それを切り離して書かなくてもいいと思う。それが感じられて、それも良かった。
橋本:そうだね。やっぱりさ、ずっと続けてきてるバンドだと、今まで聴いてくれてる人の顔がよぎったりすること、ある?
小出:うーん、まあ、あるよ。
橋本:あるよね、すごく。やっぱりさ、お客さん目線で考えると、「変わらないでいて」っていうのが絶対あると思うし、私も、自分が聴いてるミュージシャンに対してそう思うこともあるし、そことどう向き合うかは、一つあるなとは思うけど。
小出:大きいジレンマですね。こちとら、いくらでも変わっていくのに。
橋本:そこも大きいテーマだよね。曲を作る時の。
小出:初期のイメージを引きずられたりもするじゃん? だから「それは、子役の時だから!」って言いたくもなるけど(笑)。
橋本:あはは。そうだね。だから、子役の人の気持ちがわかる。
小出:21、2歳の時になんとなく作ったものを、初期衝動と言うとかっこいいけど、実際は、あんまりよくわかってなかったというのも大きいでしょ?
橋本: 21、2の時に作ってる曲って、10代の経験のことやから、子供なんよ。そことは違うもんな。
小出:でもそれがさ、「あの頃のほうがよかった」って思われたりするわけで。そこをどうしていくのかって、ずっと考えちゃうよね。20年も続いちゃってるからさ。ここからどんどん、子役時代との時間的な距離は開き続けていくわけだから。「経年の良さを感じてくれよ」とは思うんだけど、ただうちのバンドの場合は、さっき言ったみたいに、キッズさはまだあるんだよね。バンドキッズっぽさが。そこの地続きとして現在があるから。
橋本:そこは逆に、取れない部分かもしれない。
小出:たぶん。初めて歪みのエフェクターを買った時の気持ちがまだ抜けてない。
橋本:素晴らしいよ。すごく素晴らしいと思う。続く理由だと思う。
小出:でも絵莉子はソロになって、そこから解き放たれたという感覚もあるわけでしょ?
橋本:うん。どう思うかな?という気持ちは、すごく減ったかも。
小出:比較してもらっても困るしね。
橋本:そう。くみこん(高橋久美子)が抜けてから、「どう思うかな? チャットって名乗って大丈夫かな?」の連続だったから。ライブしますって言うけど、注意書きを書いたほうがいいんじゃないか?とか。カッコ注で、「(注)イメージとちょっと違うかもしれません」みたいな。
小出:あはは。
橋本:書いたほうがいいんじゃないか?っていうぐらい、心配の材料だったから。その感じは、なくなったなあ。
小出:それは、あっこ(福岡晃子)も言ってたね。最後らへんはもう、バンドの看板を一旦置きたいみたいな感じに、二人ともなっていったって。
橋本:そうね。そうそう。
小出:けど、僕は、うちが一人抜けた時に、チャットが二人でやっていることにすごい励まされましたよ。
橋本:ほんとですか? 良かった。
小出:ただじゃ転ばん感じというか。だって、うちは4から3だけど、そちらは3から2じゃん。最小編成からさらに最小編成になるから、どうするんだろう?って思ってたけど、そのまんまやっちゃってて。常識を覆された感じがしたし、二人のバンドマンとしての根性にびっくりしたという経験があったから。うちも一人抜けることになって、感覚的には片腕をもがれたような気持ちだったけど、その状態でどうやってまた生命体になっていくか?みたいなことをすごい考えたし。あと、サポートが入ってもらうとさ、オリジナルの演奏のニュアンスとは当然違うじゃない?
橋本:違うね。
小出:こっちは新しいミュージシャンの人と演奏するのが楽しいから、オリジナル通りやってくれともお願いしないし。でも「元のニュアンスを聴きたい」みたいな声もあったりするじゃん。それで「うーん」となっていた時があったんだけど、あっこに相談したら、「そんなん一生言われるから」って(笑)。
橋本:あはは。言われてる人たちだから。
小出:そうそう(笑)。
橋本:面白いね、あっこちゃん。
小出:って言われて、「そうだわ」って思った。それで開き直った。スリーピースになってからも5年経って、だいぶスリーピースっぽくなってきましたよ。
橋本:それは、アルバムを聴いた時にめちゃくちゃ思った。
小出:でも、まだまだ絵莉子のほうが引いてってるね。音数を。たとえば……(アルバムの資料を見ながら)「ロゼメタリック時代」を聴いて、「あ、こうしなきゃな」と思った。
橋本:え、どういうこと?
小出:引き算が。ベースがルートを弾いてて、バッキング無しでギター2本がテーマリフを弾いてるでしょ? ギターの数は違うけど、チャットモンチーもずっとそれをやってたじゃないですか。こういう展開をまだちょっと怖がってるのね、うちは。まだ手数で埋めようとしてる。だけど「ロゼメタリック時代」は、「ここまで引くかい!」って思った。
橋本:それは、ギターの曽根(巧)さんにもめちゃめちゃ言われた。「ここ、支えいらんの?」って。曽根さんが最後にギターソロ弾いてる時、私はコードに行かずに、ずっとおんなじアルペジオをやってるんやけど。「せーの、で録った感じを出したいから入れません」って言って、そしたら(村田)シゲさんがベースでだいぶ補ってくれて。なんとかなるという感じはあるよね。
小出:ギターがジャーン!というような、コード感が鳴ってるということを、絵莉子が選ばないシーンがあるじゃない? この曲みたいに。それが、僕はまだできないところがある。
橋本:できるよ。弾かんといてみ?(笑) 意外といけるから。
小出:だから、アルバムの1曲目(「DIARY KEY」。イントロの冒頭はベースとドラムだけ)はそうやって始まってるの。
橋本:ね。どこまでいくんやろ?と思って、ドキドキして聴いてた。全然いけるよ。
小出:実際、普段演奏してる時も、ギターじゃなくてベースを聴いて歌ってるから、本当は弾かなくていいんだろうけど。
橋本:しおりん(関根史織)のベースも、そういうベースやもんな。ベースだけ聴いて歌えるベースやから。安心して。
小出:そうそう。だから本当はあんまり弾かなくていいんだけど、今回やりたい音像として、単音で弾いていくよりは、ちゃんとコード感が聴こえてたほうが、僕の歌の場合は気持ちいいかなと思って、そっちを選んでるけど。
橋本:気持ちいいのが大事だと思う。
小出:だから絵莉子のアレンジを聴いて、「音、少ねえ」と思った。「コード弾かないねー」って(笑)。それがかっこいいなと思った。
橋本:コード弾いたら疾走感が出るから、曲がドライブするのね。シュー!って。だけど、コード弾かんかったら、速さがないぶん周りがよく見える。歩いてる時みたいな感じ。それが合う曲か合わない曲かで全然違うから、選んでやるけど。
小出:うちはまだ、ドライブする音色を聴きたいんだろうね。キッズだから(笑)。
橋本:大事だと思う。いいよ、すごく。
小出:あと、このアルバムは、これまで以上に……BONNIE PINKだなと思った。
橋本:あはは。出てた?
小出:出てる。めっちゃ出てる。
橋本:それヤバくない? 大丈夫かな。
小出:パクリって意味じゃないよ?
橋本:良かった(笑)。大好きなんです、私。BONNIE PINKさんが。そうか、出ちゃってたか……。
小出:たぶんバンドマンで、こんなにBONNIE PINKに影響を受けてるのって、絵莉子と僕ぐらいなんじゃないか説。今回のうちのアルバム、頭の片隅にずーっとBONNIE PINKがあったの。サウンドの作り方、リズムの作り方、あとはムード。そういうところで、ずっと頭の中にBONNIE PINKさんが鳴ってた。これまでもずっとあったんだけど、今回は特に。で、絵莉子のアルバムを聴いたら、絵莉子はたぶんメロディのほうで影響を受けていて、今回ソロになったことでより伸び伸びと(笑)。
橋本:謳歌しちゃってる(笑)。
小出:これはたぶん、あんまり指摘されないことだと思うの。よそで。
橋本:指摘されたことないよ。ないない。
小出:ずーっと絵莉子に、BONNIE PINKを感じてたんだよね。チャットモンチー時代もずっと感じてたのが、今回すごいBONNIE PINKを感じて、いい意味でちゃんと影響を受けてると思った。チャットモンチー以降の女性のバンドで、チャットモンチーがロールモデルなんだろうなというバンドやアーティストはたくさん出てきたけど、圧倒的にないのは、BONNIE PINK感。
橋本:あはは!
小出:そっくりとかそういうことじゃなくて、BONNIE PINKさんが持ってる節回しやムードに、たぶん肌で影響を受けてるから。シンプルなスリーピースの中に、あの節回しがあるから、いいんだと思ってた。チャットモンチーは。だし、それが橋本絵莉子の作家性だと思ってた。いくらチャットモンチーを真似しても、その部分に気づいてないと、チャットモンチーにはならないのよ。コードに対してのメロディの当て方とか、メロのはねるところとか語尾とかね。
橋本:すごい。種明かしされた気分(笑)。でも、すごいあるよ。好きで歌ってたから、歌いたいメロディが出ちゃってるんだろうね。
小出:それが気持ちいいんだろうね。たぶん、チャットモンチーと橋本絵莉子から、あんまりBONNIE PINKって、近いものだと思われてないから、みんなあんまり気づいてないけど。
橋本:BONNIE PINKさんの「犬と月」っていう曲を初めて聴いて、「曲を作ってみたい」と思って、初めてギターでコピーしたのがハイスタやから、その二つを足したらチャットモンチーの始まりなの。
小出:あはは!
橋本:でも、それ言われたの、初めてだね。そうか、こいちゃんもBONNIE PINK、そんなに好きだったとは。
小出:チャットモンチーと絵莉子の曲に一番シンパシーを覚えてたのは、本当はそこなの。
橋本:そうなんだね。だから、一番出てるから、すごいいいって思ってくれてるのかも。
小出:もちろんそれだけではないけど。たぶん絵莉子が自分の中に強く持ってる要素が、バンド以上に、個人のものとしてすごい出てるから、より強く感じたんだと思う「fall of the leaf」とかは、強いよね。BONNIE PINKみが。
橋本:強い。出だしから強い(笑)。
小出:そういうところも含めて、本当に面白かった。面白かったから、どんどん出してほしいですね。作品を。まだあるでしょ、ストックが。
橋本:ある。あるけど、作品を作るって、めっちゃパワーいるよね。
小出:まあ、そうだよね。ライブは?
橋本:ライブは、1月にあります。
小出:もっとやったほうがいいんじゃない?
橋本:なんか、難しいんだって。いろいろ。人に頼らないとダメだからさ。
小出:でも、やったほうがいいな、絶対。今回、うちのアルバムを出した時にも思ったし、あちこちで言ってたんだけど、アルバム出してライブやって、っていうのがワンセットじゃん。それで、曲が自分の中で耕されていくし、お客さんの反応を見て、「ここでこうなるんだ」とか、それが最大のリファレンスだから。だからきっと、ライブでこれらの曲をやったら、自分でも「おおっ」と思う瞬間があるかもしれない。
橋本:あるかもね。あると思う。
小出:「今日がインフィニティ」とか、やったら痺れるんじゃないかな。自分で。
橋本:「今日がインフィニティ」は、ライブで歌うのがめっちゃ似合うなって思う。「今日」っていう、ライブの締めっぽくもなるし、いいと思う。
小出:やってくださいよ、ツアーを。いっぱいやってください。で、対バンツアーしよう。
橋本:そうだよね。言われてるからね、しおりんにも。
小出:パッケージとして、面白い対比だと思うけどね。ソロの人と、スリーピースになってしばらく経った人たちと。
橋本:スリーピースだった人と、4人だった人とが、逆になって(笑)。
小出:ライブで「fall of the leaf」とか、いいんじゃないですか。空間系に溶けていく感じ。このアプローチ、あんまりチャットじゃやんなかったでしょ。
橋本:そうね。
小出:サウンドのデザインとして、演奏の隙間が見えてるから、空間系もばっちり乗る。絵莉子の歌のリバーブが全体を包んでいくとか、バンドじゃやんなかったアプローチだと思うし、それってちょっとソロ歌手っぽいアプローチかも。
橋本:そうかもね。歌ありきで。
小出:歌ありきで。そういうのも、なかったからね。
橋本:すごいね、こいちゃん。めちゃくちゃすごいです。ありがたいです。
小出:そろそろ対談の終盤だと思うんですけど、アルバムを聴いて一番びっくりした点は……野性味なんですよ。
橋本:野性味ね。
小出:橋本絵莉子という人の持つ、野性味。言い方は変かもしれないけど、ロックシンガーだなって思ったんですね。だって、チャットモンチーで一番ロックだったのって、本当は橋本さんじゃないですか。
橋本:まあ、そういう歌詞を書きがちだったからね。
小出:その野性味が、ソロになっても抜けてないですもんね。
橋本:そうだね。でもさ、曲やから言えることってない? むしろ、そんなんばっかりというか、曲じゃないと言えんこととかさ、そういうのが、めっちゃ野生なんじゃないかな?って思うんだけど。だからどうしても出るというか。
小出:そうやってアウトプットしていく、それも絵莉子の作家性でもあるじゃない? 野性味に関して自分の場合は、アウトプットするまでに、じゃあ詞としてどうしよう?とか、また別のアングルがそこに加わってくるんだよね。
橋本:なるほどね。そうか。
小出:むき出しでアウトプットされることは、ほぼないというか、必ず整理されるし、文筆業をやってる感じになるんだと思う。だから、むき出しな感じ、もぎたてな感じが絵莉子だなぁと思ったし、ソロになってもそこは同じだなと思った。それをこんなにもぶつけてくるんだということに、同期としては安心したっていうのもあるんだよね。
橋本:忘れてなかった、みたいな。
小出:うん。どこかで、「弾き語りおばさんになったらどうしよう」と思ってたから(笑)。
橋本:あるね(笑)。
小出:絵莉子がピアノに合わせて朗々と歌う、もしくはアコギで弾き語りおばさんになったら……とか言うと言い方悪いけど(笑)、そういうふうになっていっちゃうのかな?って、どっかで思ってたから。これだけ野性味あふれる作品が出てきて、良かったなと思った。
橋本:でも、その感覚、一緒よ。(Base Ball Bearの)作品を聴いて、安心するし、「自分も」という気持ちになる。
小出:そう言っていただいて良かったです。「落ち着きバンドおじさん」になっちゃったら、どうしよう。
橋本:あはは。それはそれで、いいと思うけどな。それも魅力になっていくと思う。
小出:父性・母性問題と同じでね。
橋本:落ち着いてるのもまた、かっこよかったりすると思うし。それはそれで。
小出:うちはなにせ、実験バンドみたいな側面もあるから。毎回やりたいことをいろいろ実験していくというね。
橋本:大事だよ、実験は。ワクワクするポイントでもあるし。
小出:落ち着くことがワクワクする日が来るかもしれない。「いまはこの落ち着きにワクワクしてんだよ!」って(笑)。
橋本:わかりづらいと思う、はた目からは(笑)。
小出:……という感じかな? 全体としては。
橋本:ありがとう。本当にありがとう。
小出:ついに暴かれる「BONNIE PINKみ」ということで。
橋本:ヤバいなー。いや、全然いいよ。意外と気づかれてないだけで、そうなんです。

取材・文=宮本英夫 撮影=横山マサト

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