冬の日に聴くといっそう沁みてくる
カナダの至宝、
ブルース・コバーンが若き日に残した
傑作『雪の世界』(’71)

『High Winds, White Sky』(’71)/Bruce Cockburn

『High Winds, White Sky』(’71)/Bruce Cockburn

冬になると、ことに雪が降ると聴きたくなるアルバムというのがあるらしい。そう、『雪の世界(原題:High Winds, White Sky)』は雪の風景の中で聴くと格別の感興を催すなどと言われている。その噂を耳にした時、最初は疑ってかかったものだ。というのは、単に私自身が滅多に降雪、特にこのジャケットに見られるような積雪を経験することがない太平洋側(正確に言うと瀬戸内海側)に暮らしていたからに他ならないのだが。

ところがある時、私は所用で降雪地帯に旅する機会があり、いつぞや耳にしたその逸話をふと思い出し、わざわざ本作を持参して聴いて確かめてみたのだ。もちろん、以前からアルバムは聴き込んでいて内容は知っている。それをなおかつ雪の降りしきる中で聴くと格別の趣きがあるものなのかと、聴き比べてみたわけである。

するとどうだろう、深々と降りしきる雪を眺めながら聴いてみると、沁みてくるというのか、歌、演奏が身体に入り込んでくるような、ちょっと経験したことがないような感動を味わったのである。実際の風景、心象風景、サウンドが同期するといった按配だろうか。でも、安心していただきたい。このアルバムは普段の私のように、雪が降り積もることのない町、あるいは南国に暮らす方にだって、深い感動を与えてくれる名盤であることは間違いない。事実、私はバリ島でも本作を聴いたことがあるが、やはり素晴らしいものは素晴らしい!と実感した。雪の降る中で聴いた感動というのは、相乗効果というやつだ。

ブルース・コバーン(Bruce Cockburn)

コバーンは1945年、カナダの首都オンタリオ州オタワで生まれている。東部ケベック州に隣接し、同州と同じく、公用語は英語、フランス語が共存する。コバーン自身も高校卒業後、単身パリに渡って路上演奏をしていた時期があるところを見ると、バイリンガルなのだろう。冬期は北極寒波に覆われ、特に1月の平均気温は−10℃を下回るという、あの『雪の世界』のジャケットそのままの眺めは、彼の地ではごく当たり前の風景だったわけだ。この街でティーンエイジャーのほとんどを彼は過ごすのだが、ラジオを通じて音楽に興味を持ち、特にギターに惹かれていくのは中学生くらいだったようだ。ご多分にもれず、彼もロックンロールに夢中になっていたそうなのだが、少し異質なのは、彼は早いうちから教師について音楽理論、ギターを学び、一方で熱心なジャズのリスナーであったというのだ。そして、渡欧の後、帰国すると名門バークレー音楽院(ボストン)に入学し、ジャズの作曲を学んでいる。この時期、それから卒業後(中退とも言われている)、数々のバンドに参加したことが彼の音楽性を形づくり、そこから彼の長い音楽人生は始まる。

OKMusic編集部

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