松下洸平&白洲迅は「気心の知れた」
先輩と後輩 共演する、音楽劇『夜来
香ラプソディ』にかける思いとは

第二次世界大戦末期の上海。日本軍の支配下にも関わらず治外法権を有していた外国人居住地域・租界(そかい)では、独自の文化が花咲き艶やかに発展をしていた一方、日本軍に対抗しようとしている中国国内勢力の思惑もうごめいていた。そんな魔都・上海を舞台にした音楽劇『夜来香ラプソディ』が2022年3月より上演される。物語は「蘇州夜曲」「東京ブギウギ」などの作曲者である服部良一と、「夜来香」を作曲した中国人作曲家・黎錦光らが、人種やイデオロギーの壁を乗り越え、西洋音楽のコンサートを開催しようと奔走する姿を描くものになるという。同じく上海を舞台にし、2017年に上演され好評を博した音楽劇『魔都夜曲』に続き、演出を河原雅彦、音楽は本間昭光がふたたびタッグを組むのも注目だ。
個性派俳優・アーティストを数多く要するキューブの25周年記念作品でもある本作、キャストもキューブ所属の俳優が数多く出演するが、主人公の服部良一は松下洸平が、黎錦光は白洲迅が演じる。この『夜来香ラプソディ』にかける意気込みを、事務所の先輩・後輩でもある松下と白洲に訊いた。
(左から)白洲迅、松下洸平
ーー上海を舞台にした音楽劇、演出は河原さん、音楽は本間さんとのことで『魔都夜曲』も思い出しますね。松下さんは『魔都夜曲』にも出演していました。改めて今作に挑む心境を教えてください。
松下:僕は5年前の『魔都夜曲』でも、服部良一さんをモデルにした役を演じていました。その時はまだ成功をする前の若き日を演じましたが、今回は音楽で成功し、名作曲家となった時代の服部さんです。役名も“服部良一”でノンフィクション、服部さんの人生が史実通りに描かれる部分も多くなると思います。生半可な気持ちでは太刀打ちできません。しっかり史実も調べ、服部さんに恥ずかしくないように演じなければと思っています。また上海という場所自体、歴史があり、調べれば調べるほど様々な境遇の人がいる。責任感を噛みしめています。ただ、迅はもちろん、気心が知れたキューブの仲間がたくさんいますので、皆さんに支えてもらいながら頑張りたいです。
白洲:『魔都夜曲』は観ています。今もすごく鮮明に覚えていますが、あの魔都・上海の世界観にすごく当てられた。だからこそ今回、演じる側になり、終戦間際の上海という時代背景、あの当時どういうことがあったのかをきちんと勉強して挑まなければと思っています。そして音楽劇で、僕ら自身が音楽家の役なので、どう音楽とストーリーが関わっていくのか、ワクワクしています。さらに僕は舞台出演は3・4年ぶりなので、その点でも楽しみです。
白洲迅
ーー今「気心の知れた」というお話もありましたが、お互い俳優として、どう見ていますか。
松下:僕、迅がキューブに入ったばかりの頃のこと、すごくよく覚えているんですよ。「何か持っているな」と思ったんですよね。聞けば地元も一緒、同郷の素敵な若手が入ってきたなと思ったら、いつしかたくさんテレビにも出るようになって。迅は映像の方が多いイメージだから、一緒の舞台でどういう輝きを放つのか楽しみです。おそらく服部と黎はやり取りも多いだろうし、色々なことを話し合いながら進めていきたいですね。そしてそれができる相手ですので、頼りにしていますし、楽しみにしています。
松下洸平
白洲:そうなんです、イベントなどではご一緒していますが、実はちゃんとお芝居でがっつり絡むのは、初めてですよね?
松下:そうだよね。
白洲:僕は松下さんの舞台はいくつか拝見していて、実力のある本格派俳優というイメージなのですが、いまや(映像の世界でも)時の人となり……。
松下:“時の人”ですか、僕!?
白洲:はい。舞台はもちろん、映像ではバラエティ含め、本当に色々な経験をしていらっしゃるので、今の松下さんがどんな表現をするのか気になりますし、色々なことを勉強させてもらいたいなと思っています。舞台経験は僕より圧倒的に多いですので、先輩を頼りに……。
松下:(笑)。一個質問したら100答えを返してくれる先輩方がいらっしゃるカンパニーなので、全力で甘えます。
白洲:先輩(松下)を頼りに。
(左から)白洲迅、松下洸平
松下:先輩って、僕!? いや、僕、ずっとペーペーでやってきたので……! みんなで作っていきたいですね。
白洲:そうですね。
ーー演じるのが、松下さんが服部良一、白洲さんが黎錦光。まだ稽古前とのことですが、どんなことを手掛かりに演じていこうと思っていますか?
松下:迅は中国の人の役だよね?
白洲:はい。黎錦光さんという、日本でも有名な「夜来香」を作詞作曲した方なのですが、黎さんという方自体は意外と日本ではあまり知られていない印象もあって……。
松下:曲は有名だけど、意外とそうかも。……中国人の役ということは、迅は全編中国語だよね?
白洲:はい、全編中国語で……やらせていただくわけないでしょう(笑)。僕が中国語でしゃべるなら、服部さんも中国語ですよ! 
松下:あっそうか、自分の首を絞めるのはやめよう(笑)。
松下洸平
白洲:演じるにあたっては、僕はまださほど史実を掘り下げられておらず、これから勉強しなくてはというところなのですが、まずは「夜来香」の楽曲を頼りに黎錦光と向き合っていきたいと考えています。とにかく美しい曲です。チャイナメロディの独特の雰囲気もですが、曲も詞も綺麗。この曲があの時代に生まれたというのは、社会背景等、色々な意味があったのかもしれません。どうしてあの曲が生まれたのかを大事に探っていきたいです。
松下:僕は、どう役を作っていくのかはもちろん演出の河原さんと相談しつつになりますが、実在した方だというのは、やはりいい道しるべになります。先日お孫さんにもお会いして、まだまだ服部さんの思いを継承している方がこんなに近くにいて、お話をうかがえる。もちろん僕は僕なりの表現の仕方をしますが、ある種お手本があるというのは、役作りする上で非常に大きな手掛かりです。服部さんのことを調べれば調べるほど、とにかく愛情深い人だったんだなと感じます。服部さんをご存じの方は皆さん口々に、とにかく優しかった、弱音を吐いたところを見たことがない、いつだって笑顔だったしいつだって明るかったとおっしゃいます。何か思い悩んだり、躓いた時は「服部さんだったらどうするかな」と考えることができるのは、とても大きな支えになると思います。
ーー演出は河原雅彦さんです。河原さんとのお仕事で楽しみにしていることは。
白洲:僕は実は河原さんの演出を受けたことはなく、役者として、ドラマで少し共演したことがあるくらいなんです。でももちろん、河原さんが演出した舞台を拝見したことはあります。やっぱり『魔都夜曲』のイメージは強いですね。河原さんイズムのようなエンターテインメント性で、今回の物語をどう作りこまれるのかを楽しみにしています。
松下:僕は河原さんとお仕事をするのは3回目なのですが、とにかく優しい方です。演出家として背負っていらっしゃるものも大きいと思うのですが、作品愛も熱く、すごく丁寧な方で、だからこそ河原さんのために頑張らなければ、河原さんの思いに応えなければという気持ちになる。河原さんって口癖があるんですよ……「ありがとう」って言葉なんですけれど。
白洲:めちゃめちゃいい口癖ですね。
白洲迅
松下:河原さんの「ありがとー」が聞きたくて、言われるようにしている時があると思います(笑)。「河原さん、僕こっちからハケます!」とか、確認しなくてもいいのにいちいち確認して「ありがとー」って言ってもらうの(笑)。あの「ありがとー」を何度も聞きたい。迅も言ってもらえると、分かると思うよ、この感じ。「迅くんありがとー」って。
白洲:楽しみにしています!
ーー最後に改めて、本作への意気込みを!
松下:服部さんはクラシックから始まりその後ジャズに目覚め、けれどジャズというアメリカの音楽が当時の日本にはそぐわなくなっていってしまった。それでも自分たちの音楽をやるにはどうしたらいいのかと模索していった方だと思います。つまり、自分の音楽がどうしたいか、自分の音楽をどうするべきかを常に考え、音楽ファーストで戦時下を生き抜いていった人。その感覚は、音楽を愛する人たち……もしくは何か好きなものがある人、曲げられないものがある人に共通する感覚だと思います。僕はたまたま音楽をやっていますので、そういう面で共通項はありますが、観てくださるお客さまにも、自分の信念をどう貫いていくかというところは共感していただけるはず。この作品を通して、奮起する気持ち、勇気をお届けできたらと思います。
白洲:今回は音楽劇なのですが、僕は音楽劇は今までやったことがありません。ただ今回、僕らの役は作曲家で、コンサートをやろうと奮闘する。その中で実際に演奏されたり歌が歌われたりということで、“歌う動機”がナチュラルにありそうです。演じる上で歌というものは気持ちを高める効果がありますし、僕自身、歌うこと自体は大好き。今回の挑戦を楽しみにしています。
(左から)白洲迅、松下洸平
取材・文=平野祥恵   撮影=iwa

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