米澤森人、YUKIやラブライブ!にも楽
曲を提供する新進気鋭のシンガーソン
グライターが見据える先にあるもの

米澤森人は、作編曲家・キーボーディストとしてYUKIラブライブ!を始めとした他のアーティストやアイドルへの楽曲提供、ライブサポートを行なうなど多岐にわたって活動している気鋭のシンガーソングライターだ。若くして情景を感じる歌詞・メロディーと、ダンスミュージックの要素を取り入れた、懐かしさとシティ感が共存するJ-POPを持ち味とする稀有なアーティストを、初期衝動から紐解いていこう。
──新曲「冬のはじめ」は、まさにタイトル通りの空気感がありますね。空気が澄んでいて、寒さがちょっと身に沁みるんだけど、心地よさもありつつ、という。ホーンの音色も華やかで、自然と心が弾んできますし、とても素敵な曲だなと思いました。この曲はいつ頃に作られたんですか?
もともとは4、5年前ぐらいに作っていて。そのときは、自分で打ち込みもして、歌も録って、ミックスしたデモの状態だったんですけど、今回冬にリリースをするということになって、改めてアレンジをし直しました。
──デモの段階から、こういうものにしたいというイメージはあったんですか?
デモのときはそこまで深く考えていなかったですね。初期衝動というか、自分の好きな雰囲気を自由に作っていて。アレンジをするにあたって、ブラスを入れてみようかなとか、こういうふうにしたいなっていうイメージを持った上で形にしていった感じでした。
──これまで配信リリースされてきた楽曲は、音数が比較的少なめでしたよね。今回はちょっと賑やかな感じにしてみたいと思った理由というと?
あまり音数を多くするというイメージでアレンジしたわけではなくて、曲が持っている感情を表現したら自動的にそうなったという感じでした。今までの曲は、わりとちょっと切ない要素が多かったので、それが自然に反映されて、音数が少なかったのかもしれないです。でも、今回は恋の歌なので、そういうワクワク感みたいなものも含めて、ちょっと賑やかになっていったのかなと思います。
──デモは衝動的に作ったとのことでしたけど、そうやって曲が生まれてくることが多いですか?
そうですね。最初のアイデアが出てくるのは、外にいるときが多くて。自分が考えていたことと、見ている景色がリンクするというか。“あっ!”ってなるタイミングがたぶんあるんだと思います。いい景色を見ると出てきやすいですね。家で“これから作るぞ!”っていう感じで作り始めても、あまり出てこないです。
──景色がトリガーみたいになっているんですね。今日は米澤さんがどんな方なのかもお聞きしたいです。Instagramを拝見していたら、フットサルをやられていた写真があったんですが、もともとサッカー少年だったんですか?
そうです。小学校の頃からサッカーをやっていて、中学の途中でケガをしてしまって、やめてしまったんですけど。でも、高校の頃に自分でフットサルチームを作ったんですよ。最初は地元の同じ中学の仲間を誘ったんですけど、いろんな人を捕まえながらちょっとずつデカくなっていって、20歳ぐらいまでやってました。
──友達とどこかに行ったり、何かをしたりすることが多いタイプだったんですか?
なんか、リーダーという感じの雰囲気ではないんですけど、いろんな人を巻き込んでやるところは意外とあるかもしれないですね。
──積極的にいろんな人と話したりとかも?
初対面の人とすぐ打ち解ける感じではないかもしれないんですけど、それこそサッカーを一緒にやると一瞬で仲良くなれるし、そういうことの連続で。音楽もそうですね。好きなことを一緒にやると……っていう。
──共通項があると大きいですよね。サッカーをやりつつ、音楽を好きになったのはいつ頃だったんですか?
物心ついた頃から音楽を聴くのは好きでした。親が車の中とか家で、松任谷由実さんをよく流していて、それを幼ながらにいいなと思って。いまも一番好きですね。あと、小学生のときにクイーンを好きになって。親からもらったミュージック・プレイヤーにたまたま入っていたんですけど、当時、自転車で旅をするのが好きだったんですよ。それで、歩道橋を自転車押して登っていたら、「Don't Stop Me Now」が流れてきて、うわー!って思って(笑)。
──確かにそのシチュエーションはめっちゃあがりますね(笑)。
そこからインターネットでいろんな曲を掘っていくようになって。最初はバンド形式のものを聴いていたんですけど、アース・ウィンド・アンド・ファイアーを聴いたときに、めっちゃいいじゃん!って。それまでは、ホーンセクションみたいなのが入っている曲はあまり好きじゃなかったんですけど、アースを聴いた瞬間にそれが変わりました。そこからブラックミュージックとかも聴くようになって、そういう音楽に影響を受けている邦楽のアーティスト──たとえば星野源さんとかを好きになって行った感じでした。
──音楽を聴くのは好きだったとのことでしたけど、楽器はやっていなかったんですか?
小学生の頃に、習い事でピアノを6、7年やっていたんですけど、ポップスというよりはクラシックの楽譜を見て弾いていたので、いまのピアノのスタイルとそこまで繋がりは強くないんですけど。でも、楽器に触れる機会はありましたね。
──習い事ということは、最初はやらされていた的な?
なんか“やる?”みたいな感じで聞かれて、何も考えずに“やる!”っていう感じでした。でも、“ちゃんとやるぞ!”っていう感じではなかったです(笑)。週1で先生が教えに来てくれて、そのときはちゃんとやる、みたいな。自主練とかはそんなにしてなかったですけど、嫌々やっていたわけでもなくて。楽しみながらやってました。
──ピアノを習い始めて、自分で曲を作ってみようかなと思ったりは?
作ってみようみたいな感じはなかったかなぁ。でも、耳で聴いた曲を弾くのは、ピアノを習っているうちにできるようになっていたので、空いた時間に好きなポップスの曲をちょろっと弾いてみるぐらいのことはしていたんですけど、作るまではいかなかったです。
米澤森人
──実際に音楽をやってみようかなと思い始めたのはいつ頃でした?
18歳のときだったんですけど、それも衝動的というか(笑)。これというキッカケがあったわけでもなく、突然そう思ったので、自分でもなぜなのかよくわからないんですけど、そこから専門学校に入りました。ピアノは弾けたので、歌が歌えれば形になるかなと思って、ボーカル科に入ったんですけど、サブの教科でDTMの授業があったんですよ。そのときに触ってみたら、めっちゃ楽しいじゃん!って。これならひとりで完結できると思って、DTMで遊びながら、曲を作り始めるようになりました。
──曲はすぐに作れました?
わりと作れちゃったんですよ(笑)。Macを買って、ガレバン(GarageBand)開いて、やってみたらわりとできちゃって、いけるかも……みたいな。いま聴いたらたいしたことないというか、まだまだ全然だと思うんですけど。でも、時間があれば曲を作るみたいな感じになってましたね。もう楽しくてずっとやっていた感じでした。
──インスタを拝見したら、ストックホルムで行なわれたソングライティングキャンプに参加したときの写真をアップされていましたけど、あれは専門学校時代ですか?
卒業して次の年ぐらいですね。今も入っているソングライティングチームがあって、そこの主催でスウェーデンで曲を作るという機会があったので、“行きます!”って。英語とかそんなにしゃべれないんですけど(笑)。
──なかなか思いきりましたね(笑)。参加してみていかがでした?
5日で5セッションみたいな感じだったんですけど、初日は萎縮しちゃったんですよ。やっぱり向こうのシンガーさんってめちゃくちゃうまいから、どうしよう……って。でも、2日目のときに、このまま帰るわけにはいかないと思って、最初に“僕がピアノ弾きます!”ってピアノの前に行って、弾きながら鼻歌でメロディを歌っていたら、“いいじゃん!”みたいなことを言ってくれて。それをアレンジしていこうということになって、すごく盛り上がったんですよ。そこからは、言葉は話せないながらも、楽器で会話するじゃないけど、パッションでやっていって。それが自分の中で、作曲とか音楽に対しての自信がついたひとつの出来事だったかなって思います。
──それは自信になりますよね。いまも海外の方とコライトされていたりするんですか?
日本で、別のスウェーデン人のソングライターの方とセッションしたりとかはしましたね。その後も、海外の人とやる機会はあったんですけど、なんていうか、日本人同士で作るときよりも、音楽をやっている感じがあるというか。音楽でやりとりするしかないので、無駄な思考みたいなものが入ってくる隙がない感じがすごくいいですね。
──言葉がわかると、ちょっとした駆け引きみたいなものが出てくるというか。
そうなんですよね。コライトって、細工しようみたいなことがどうしても強くなっちゃうときがあって。海外の方とのセッションは音楽のことだけをひたすら考えている感じが超楽しいです。
──米澤さんは現在、シンガーソングライターとしてはもちろん、楽曲提供やサポートキーボーディストとしても活動されていますけども、自分で曲を作って歌いたいと思った出来事とかあったんですか?
自然とそうなっていったのかな……。曲を作ることが一番好きだったんですけど、自分の曲に一番合うのは自分の声だなと思って、自分が歌わなきゃいけないなって勝手に思っていたんですよ。だから、楽曲提供だけとか、サポートだけでいいやっていう考えにはあまりならなかったです。
──先ほど、自分の思っていることと景色がリンクしたときに曲のアイデアが出てきやすいというお話をされていましたが、楽曲にご自身の感情がそのまま直接出ることが多かったりします?
比較的そうだと思います。昔は、音楽の引き出しがそこまで多くなくて。たとえば、悲しい気持ちのときに、それにふさわしい和声を出せなかったこともあったんですけど。でも、やっていくにつれて、すごくリンクするようになってきた感覚があって。いろんな音の使い方もわかってきたし、いろんな感情を音楽でより表せられるようになっているかなと思います。
──ちなみに、「冬のはじめ」以外は、切ない雰囲気の曲が多いわけですけども。
切ない気持ちになっていることが多いってことなんですかね……(苦笑)。
──そういうことになりますよね(笑)。感傷的になることが多かったりします?
多いのかもしれないです。
──エピソード的にはサッカー少年で、人を巻き込むのが……というお話もありましたけど。
なんでしょうね……小さい頃からたまにそういう切ない気持ちになっていたような気もします。サッカーをやっていたときから、ザ・サッカー少年という感じのタイプではなかったような気もするし。経験したことが、ちょっと感情に強く作用しすぎちゃうことがあるのかもしれないですね。
──その気持ちがなかなか回復しなかったりとか?
しないこともあるかもしれないです。でも、それを音楽で昇華できるから、いまはすごくいいなと思っていますけど。
米澤森人
──確かに。あと、ホームページにこれまで楽曲提供された一覧が載っていますが、その中に『スーパー野田ゲーParty』というのがあって。
はい(笑)。
──マヂカルラブリーの野田クリスタルさんが制作されたゲームですけども、その公式PVのBGMを担当されているんですよね。しかも“クラウドファンディングからの参加”と書かれていたんですが。
あれは、ゲーム中のBGMを作る権利みたいなものを、仲の良い作家3人で買って参加したんですよ。そもそもその3人が、マヂカルラブリーさんのことが大好きで、M-1で優勝する前から“おもしろいよね”って、飲みながらみんなでネタを見たりしていたんですけど。それで、いつもはコンペ用の曲を作っていたんですけど、今日はちょっと遊びで作ってみようっていうところから、マヂカルラブリーさんの曲を作ることになったんです。その後にクラファンの募集があったので、あの曲を出すしかないじゃん!って。それで権利を買って出したら、公式PVに使ってもらえて、みんなでめっちゃ盛り上がりました。
──すごいですね。採用されるのを目指すために作ったわけじゃなく、すでに作っていたという。
そうです(笑)。だから、歌詞が(M-1)優勝を目指してほしいみたいな感じなんですよ。優勝した後の歌じゃなくて。そしたら本当にM-1で優勝されて。
──めちゃめちゃ好きですね(笑)。
めっちゃ好きです!
──そもそもお笑いが好きだったり?
好きですね。なんか、論理的にこうなっているからおもしろいというよりは、感覚に訴えかけてくるタイプの人が好きで。きっと奥には理論があるかもしれないですけど、ガーン!ってくるものが好きです。
──お笑いって、理論的に分析していくおもしろさもありますけど、笑わせるためにそういった部分を敢えて隠すというか、伝わらないようにすることもあると思うんです。そこは音楽も共通している気がしていて。これ見よがしにテクニックや理論を説明されると、聴いている人が引いてしまったり冷めてしまったりすることもあるのかなと思ったりもするんですが、そういうことも考えたりされます?
土台にはちゃんと基礎みたいなものはあるんですけど、その上に乗っかっているものは感性であってほしいというのは、音楽に対して思っていますね。それは聴くときも、作るときも。なんか、理詰めで考えて作ったものって、あんまりいいと思わないし、コード進行とかも自然に感じないというか。他の人が作った曲でも、これは理論先行で作っているなっていうものは、あまり好きにならないし、これはこの人の感情から自然に出てきたものなんだなっていうものを絶対に好きになりますね。
──あくまでも音楽は感情の発露であってほしいという。
そうですね。
──そこは大事にしつつ、ご自身が音楽を作る上で避けていることはありますか?
意識して避けているわけではないんですけど、ポップスを作りたいと思っているので、自分だけがわかるものではダメだなと思っています。でも、もともとポップスが好きで、聴いて育っているので、自然に作れば、伝わりうるものになっているんじゃないかなって。そこは自分の軸かなと思っていますね。
──そういった楽曲を作るにあたって、歌詞、メロディ、アレンジの中で、ご自身の中で大事にしたいものというと?
本当に一番大事なのは歌詞かなと思っています。本もよく読むので言葉が好きだし、一番伝わりやすいし、歌を聴いていいなと思うのが、一番は歌詞なので。どんなにメロディとかアレンジがかっこよくても、歌詞が独りよがりになってしまうと、なんか違うなと思っちゃうんですよ。だから、歌詞がバン!と決まったときに、自分でもこれだ!と思いますし。やっぱり歌詞が一番大事かなと思っています。
米澤森人
──そして、ライヴが決まっています。2月18日に新宿LOFTで「冬のはじめ」のリリースパーティを開催されますが、ゲストでぜったくんが出演されることになっていて。米澤さんはぜったくんのサポートをされていたり、一緒に「Jealousy Rail」という楽曲も発表されていたりしますが、改めてぜったくんとはどんな関係ですか?
ぜったくんもツイートしてくれていたんですけど、「盟友」というか。それぞれ活動は別でやってきましたけど、本当に悩んでいるときに相談しあったり、集まって音楽で遊んだりしていて。これからも一緒に頑張っていきたいと思う人ですね。
──盟友を招きつつ、どんなライヴにしたいと考えています?
いままで自分がやってきたこととか、考えてきたこととかを、ここで一度全部出し切れたらいいなと思っています。前からぜったくんと一緒にライヴをしたくて、企画もしていたんですけど、コロナのことがあってライヴが中止になってしまったんですよ。でも、その空いてしまった期間で、自分の中でいろいろ積み上げてきたものがあると思うので、それをここで出せたらいいなと思います。
──米澤さんはもともとライヴは好きでした?
活動し始めた頃は、ライヴというよりはやっぱり楽曲を作るのが好きだったし、一番大切だったんですけど、続けていく中で、ライヴをすごく大切にしたいなという気持ちが強くなってきて。いまはすごく楽しんでできている気がします。そこは、ステージの上で自分の気持ちを表現できるようになってきたことを感じられるようになったからかなとは思っていて。最初の頃は、技術とか、それを楽しめるだけの余裕がなかったところも正直あったんですよね。
──ステージに立って自分の感情を伝えることが、当時はちょっと怖かったりしました?
怖かったです。何もかも出ちゃうというか、丸裸にされてしまうじゃないですか。自分の演奏や音楽にそこまで自信がない頃は、その自信のなさが全部出ちゃうんじゃないかっていう怖さがあったんですけど。でも、いまは自分が作っているものがいいものだと思えてきているし、そういう気持ちもあるから、自分の思っていることをステージでも少しずつ出せるようになってきたのかなと思います。
──ここからどういう活動をしていきたいですか? 目標とかはあります?
松任谷由実さんが好きと言ったんですけど、各年代──1970年代、80年代、90年代...とヒット曲をそれぞれ出されていて。僕も2020年代、30年代、40年代と、ちゃんとヒットを出し続けられるシンガソングライターになりたいなと思っていますね。ヒットするポップスを作りながら、でもそこには自分の気持ちがちゃんと出ているものをずっと出し続けていきたいです。
──でも、聴いて育ったからという理由はありつつも、なぜまたポップスでありたいんです?
自分の中で生まれた感情を共有したいというか、分かり合いたいので。それがポップスという形であれば、受け手側も理解してくれるかもしれないし、それが広がっていくかもしれないし。そういうものがポップスの可能性かなと思っているからですかね。
──自分が音楽に込めた気持ちが伝わったときの魅力ってどんなものがあります? 興奮とか、感動とか。
なんだろう……安心感というか。友達と分かり合えたときと同じような感じみたいに、それがいろんな人に伝わって、分かってもらえたな、とか。聴いてくれた人にとっても、自分の気持ちと同じだなとか、この人は分かってくれているのかな、安心するなって、お互いが思えればいいなと思います。
──なるほど。安心感、ですか。
なんていうか…………わりとちょっと変わっている子みたいな感じで育ってきている気もするんですよ(笑)。だから、“分かってくれないかも……”っていう恐怖心みたいなものがずっとあるんですよね。完全に人と人が分かり合うことは難しいと思うんですけど、でも分かってもらいたいと思っているし、分かり合いたいという気持ちはずっとあるので、そういうものが音楽に反映されているのかもしれないです。
──変わった子ってどんな子だったんです?
みんなと同じことができないというか。“みんなでこれをやりましょう”みたいなものが、自分の好きなものじゃないと受け入れられないところがあって。自分の興味が持てるものしか好きになれなかったし、それを頑張ってやろうと思っても、なかなか難しくて。
──「自分はこういう人間なんだから」と割り切れるというよりは、周りはできているのに自分はできないという劣等感や疎外感みたいなものを感じてしまうことが多かったと。
そこはどっちもありましたね。自分は自分なんだからいいじゃんとは思いつつも、でも他の人とはちょっと違うっていう疎外感もあったり。そういう気持ちはいまもずっとあるんですよ。でも、そう思っているから、自分がつくる音楽をとおして分かり合いたいと思っているんだと思います。

取材・文=山口 哲夫 撮影=吉成 大輔
「冬のはじめ」

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