名曲「青い影」だけではない
プロコル・ハルムの傑作アルバム
『ソルティ・ドッグ』

『A Salty Dog』(’69)/Procol Harum

『A Salty Dog』(’69)/Procol Harum

大ヒット曲、バンドの代名詞のような曲というのは微妙なものだなと思う。良い面で言えば、その曲のおかげで永遠にバンド、アーティストの名前は忘れられずにいられるし、オンエアされるたび印税も入る。逆に悪い…というかアンラッキーな面では、いつまでもそのヒット曲がらみでバンドのことが語られてしまうし、バンドのイメージとして定着し(縛られ)かねない。ライヴにおいても必ずセットリストにその曲を入れることを要求される。俗に言う「一発屋」ならともかく、この先もバンドを続け、いろんなプラン、創作を形にしたいと思っている側にとっては、幸運なヒットも次第に鬱陶しく思われてきて、逆に足かせになりかねない、等々。

プロコル・ハルムにとって「青い影(原題:A Whiter Shade of Pale)」のヒットはバンドに何をもたらしたのだろう。バンドのデビュー作とも言えるこの曲(最初はシングル盤のみ。後にアルバム収録)が1967年5月に発売されると、わずか2週間で40万枚近くを売り上げ、イギリスのヒットチャートで6週連続1位を獲得するという、ビートルズでもできないような離れ業をやってのける。最終的に1位 イギリス、オランダ、3位 ノルウェイ、4位 オーストリア、5位 アメリカという世界中で売れに売れた。

ここでは、この曲についてふれるのは目的ではないので、「青い影」についてはまた別の機会に。ただ、この曲は発表から55年を経た現在でもまれにオンエアされるし、“60年代ポップコレクション”的な編集盤に決まって収録されたりして、要するに未だに売れているわけである。驚くべきことであると同時に、素晴らしいことだと思うべきだろう。一般的に、少々イージーリスニング、ムード音楽のように扱われていることは大いに不満ではあるのだが。

本題はここから。好意的に考えると、プロコル・ハルムにとって「青い影」のヒットは、その売上収入によって以降のアルバム制作に潤沢な制作予算を組むことができたのではないかと、私は勝手に想像するのである。

プロコル・ハルム(Procol Harum)

バンドはピアノ、ヴォーカルのゲイリー・ブルッカー、オルガンのマシュー・フィッシャー、ベースのデイヴィッド・ナイツ、詩人のキース・リードらを中心に1966年頃に結成されている。メンバーチェンジの激しいバンドで、シングル「青い影」でレコードデビュー後、早くもギターがロビン・トロワーに、ドラムのB.J.ウィルソンを正式メンバーに迎え、デビューアルバムはこのメンバーで制作されている。バンドの作風はゲイリー・ブルッカーのブルージーなヴォーカルとピアノ、オルガンを効果的に使ったクラシカルなサウンド、そこにエッジの効いたギターが絡むというスタイルだろうか。また、演奏には参加しないものの、全ての楽曲の歌詞を担当する詩人がメンバーであるという点は当時も今も異色であると言える。同様にバンドメンバーに詩人がいるという例では、初期のキング・クリムゾンのピート・シンフィールドぐらいだろう。演奏、曲が素晴らしいのに、歌詞が陳腐という例はよくあるものだ。プロコル・ハルムにおける歌詞担当のキース・リードという人は非常に文学的な詞を書くことで知られ、「青い影」の歌詞も実は相当に難解である。

バンドリーダーのゲイリー・ブルッカーはプロコル・ハルムを結成する以前はパラマウンツというR&Bバンドを率いていた。あまり語られていないが、彼は英国を代表するブルー・アイド・ソウル・シンガー(青い目の、つまり白人のソウル歌手という意味)のひとりだと思う。これほど、こぶしを効いた、熱く歌い上げられる人を同時代のロック界で探すとなると、ヴァン・モリスン、スティーブ・ウィンウッド、エリック・バードンくらいだろう。そんな喉を持ちながら、ブルッカーのもうひとつの音楽の嗜好というのがクラシックミュージック。バンドはそんなブルッカーの個性を生かし、さらにR&B的なものにいかにクラシック的なドラマチックかつ美しいメロディーラインを融合するかをコンセプトにスタートする。

OKMusic編集部

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