FEATURE / Modern Recordings ポスト
・ジャンル時代に存在感を際立たせる
レーベル、〈Modern Recordings〉の
魅力に迫る

Text by Silent Trade(http://agency.silent.trade/)

ここ数年、世界の音楽シーンでは画一的なジャンルのしばりから解放されたアーティストが数々登場しています。特にストリーミング・サービスやSNSの隆盛とともに登場したBillie Eilishを代表とするZ世代のアーティストたちは、カテゴライズされない自由な音楽性が高い評価を受けてますよね。
その背景にはプロダクションにおける革新的な進歩があることは間違いありません。パソコンとインターネットがあれば、自分のベッドルームで作った素晴らしいメロディを即座に全世界へ発信できる環境もポスト・ジャンルというムーブメントを後押ししたひとつの要素だと言えるでしょう。

また、リスナーの音楽体験もしかりです。ストリーミング・サービスはアルバムやシングルごとの聴き方に加え、プレイリストというスタイルを強く押し出しました。リスナーは“ロック”、“ポップ”、“ラップ”といった特定のジャンルでまとめられていない楽曲の流れを(ランダムかつ無意識のうちに)享受することになります。これにより、“ジャンル好き”という概念は希薄になり、ムードやテンポ、メロディなど楽曲のもつ純粋な輝きに自ずと耳を傾けるようになったのではないでしょうか。

ちなみに、ポスト・ジャンルはZ世代の象徴と考えられがちですが、過去を遡れば90年代に生まれた“オルタナティブ”という音楽ジャンルはそれに親しいかもしれないですね。特にRadioheadPortishead、Sigur Rósなどはロックやエレクトロニカ、クラシックなどを奔放に取り入れながら、芸術的な音楽性の高さを表現してきました。特定のジャンルに属さない音楽を我々はこれまでも楽しんできたというわけです。
そして、今回ピックアップする〈Modern Recordings〉はまさにそんなオルタナティブ・ミュージックを好んで聴いてきたリスナーにこそプッシュしたいレーベル。2019年に〈BMG〉により立ち上げられ、ニュー・クラシカル、ジャズ、エレクトロニック・ミュージック、インストゥルメンタルを中心に扱っていて、その音楽性はジャンルが刻印される前の純然たる美しさを湛えているものなんです。

ということで、最新リリース作品の中から、特におすすめしたいアーティスト3組をご紹介します。
Tara Nome Doyle (Photo by Sonja Stadelmaier)

まずはノルウェイとアイルランドにルーツを持ち、独ベルリンの中でもアーティストの多いクロイツベルクを拠点に活動する24歳のSSW、Tara Nome Doyle(タラ・ノーミ・ドイル)です。Netflixで配信中の映画『ミュンヘン: 戦火燃 ゆる前に』(原題:Munich: The Edge of War)のためのオリジナル曲をIsobel Waller-Bridgeと共作し、ボーカルを担当しているのでその歌声を耳にしたことがある方も多いのでは。

2022年1月28日にリリースされた2ndアルバム『Værmin』はグラミー賞を獲得しているバイオリニストでエンジニアのSimon Goughをプロデューサーに迎え、弦楽器によるエモーショナルな重奏と美しいピアノの調べによるポスト・クラシカルなサウンドスケープが繰り広げられています。

その中でフォーカスされるのは静かで儚げながら、圧倒的な力強さをもって紡ぎ出されるTaraの歌声。ドイツのメディア「SPIEGEL」では「Kate Bushがベルクハイン(ドイツの有名テクノ・クラブ)でNick Caveの曲を歌っているようだ」と評されたこともある彼女の声は思慮深く、神々しさすら漂っています。

PortisheadのBeth Gibbonsやbjörkを彷彿とさせるその美声をぜひ生で聴いてみたいものです。
Sven Helbig

続いてはドイツの作曲家、Sven Helbig(スヴェン・ヘルビッヒ)。彼はこれまでPet Shop BoysやRammsteinといったアーティストの作品のプロデュースやオーケストラ・アレンジを手がけてきました。

自身のニュー・アルバム『Skills』に収録されているのは、現代クラシック音楽然とした管弦楽曲の数々。というといわゆる静かで格式高い雰囲気を思い起こし、敬遠しがちかもですが、この『Skills』で聴ける音楽はまるで物語の中で登場人物の感情の動きを表現しているような趣きもあり、聴きゆくうちに没入感が訪れるんです。クセになる気持ちよさです。

「Repetition」という曲ではシカゴを拠点とするミュージシャン、Surachaiをフィーチャーし、シンセサイザーによるプログレッシブなビートと管弦楽器のアンサンブルが聴きどころ。弦楽器重奏の壮大さや管楽器の力強さ、そして、実験精神も漂わせるダークかつホーリーな現代クラシック音楽の最新形態と言えそうです。
収録曲「Metamorphosis」のMVはキノコに侵食されるヴァイオリンの最期に注目。どことなくNine Inch Nailsを想起させますが、Trent Reznorが手がける映画音楽が好きな方にもぜひご一聴いただきたいです。
Dario Lessing

3組目はベルリン出身のコンポーザー、Dario Lessing(ダリオ・レッシング)。4月に1stアルバム『Frequency』をリリース予定ですが、先行トラックがすでに配信中。そこで聴けるのはクラシックな音楽性をバックグラウンドにしつつ、実験的なトラックのヒップホップやアヴァン・ポップなどまさにジャンルレスです。
なかでも幻想的なビートが弾むトラックの上で実妹・SHAMSの耽美なボーカルが聴ける1曲「Shepherd」はアブストラクトヒップホップやダブステップが好きなリスナーにもおすすめです。ちなみに〈anticon.〉や〈Def Jux〉(Definitive Jux)あたりからの影響も感じさせるのは気のせいでしょうか。

〈Modern Recordings〉からは他にもグラミー賞にノミネートされているPat Methenyの最新作『Side-Eye NYC (V1-IV)』やRufus Wainwrightが2017年にAmsterdam Sinfoniettaとコラボしたストリングス・アンサンブル・コンサートのライブ盤もリリースされているので、合わせてお聴き逃しなく。

また、2月18日(金)までの期間限定で〈Modern Recordings〉のオリジナル・トートバッグがプレゼントされるキャンペーンも実施中なので、こちらもぜひチェックを。

■ Modern Recordings 日本オフィシャル・サイト(https://www.modernrecordings.jp/)

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