L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)

L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)

【ASIAN KUNG-FU GENERATION
インタビュー】
ロックバンドが“Alright”って
言うことが大事

これほどにもリアルに今を、社会を突きつけて、それでいてなおもきっぱりと前を向かせてくれる音楽。塞ぎながら、見失いながら、それでも手を伸ばさずにはいられない光。3年3年3カ月振りに届けられたニューアルバム『プラネットフォークス』に心の底から揺さぶられ、奮い立たされる。バンド結成25周年を経ても未だ涸れることのない創作意欲の源泉を後藤正文(Vo&Gu)の言葉から探り当ててみたい。

ひとつのカラーに収まらない
曲の広がりに身を委ねていくような感覚

この3年3カ月の間にどういった流れを経て、今作に辿り着いたのかを教えていただけますか。

『ホームタウン』(2018年12月発表のアルバム)のツアーで国内を回ったあと、ロンドンとパリにもツアーに行って、その時にロンドンでレコーディングスタジオに入ったんですよ。「ダイアローグ」と「触れたい 確かめたい (feat. 塩塚モエカ)」はそこでできた楽曲で。でも、なんとなく次のアルバムのビジョンが見え始めた時にコロナ禍になってしまって。当初はロンドンで“ギターロック然としたアルバムを作れたらいいね”みたいな話をメンバーとしていたんですけど、切り替えて別のことをやるしかないなと。

それまでに思い描いていたものとはがらりと変わってしまった?

そこまでではないですけどね。新型コロナウイルスの感染が蔓延し始めた頃はソロのほうをやっていたので、そっちで作品を作りながらバンドっていうフォーマットが再開できそうなタイミングを待っていたんです。そのうち、だんだんツアーもできるような状況になってきて、今回のアルバム制作を迎えたっていう。

コンスタントにシングルもリリースされていましたが、具体的に今作の流れにつながっていったきっかけは?

基本的には「ダイアローグ」の路線を広げて、ロンドンでちょっとサイケデリックで、ブリティッシュロックなアルバムを一枚作ってみたかった。でも、劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の主題歌として「エンパシー」を書き下ろしたりしていく中で、もうアルバムがひとつのカラーに収まる感じではない雰囲気を感じたんです。そういった楽曲の広がりの中に僕たち自身、身を委ねていくというか…そういう意味では「エンパシー」は大きかったんじゃないですかね。

「エンパシー」によって方向性にバリエーションが生まれた?

そうですね。「エンパシー」はアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATIONの略称)らしさを求められた時にどう応えるかみたいな作品でもあると思うんです。タイアップ曲っていうのはそういうものだと思うんですけど、正直言うとそんな曲がいっぱいあるとアルバムは作りづらいんですね。でも、今回はそれも積極的にアルバムの中に取り込んでいこうという考え方になっていました。

だから、14曲というこれまでで一番多い収録曲数になったのでしょうか?

はい。イメージ的にはA面4曲、B面4曲のアナログ盤2枚組みたいな感覚ですね。10曲から12曲入りの同じトーンで揃えた作品というよりもマックスで16曲入りと考えて、4つのパートに分ければ楽曲が多くてバラエティーに富んでいてもサウンドや歌詞がパートごとでイメージしやすいし、全体像としても掴みやすいかなって。

これまでの曲の作り方や選び方とはちょっと違いませんか?

そうなんです。作品としてのテーマは見えづらくなるかもしれないけど、そのぶん楽曲単位でクオリティーが高ければそれだけで採用されやすくなるっていう。山ちゃん(山田貴洋の愛称)の曲が今までで一番多く入っていたりするのもそういうことだと思うんです。『サーフ ブンガク カマクラ』(2008年11月発表のアルバム)みたいなアルバムは狙っているモードがあるので、曲も狙って書いてもらわなきゃいけないけど、今回は自由でしたからね。例えば「雨音」みたいな曲だと、今までならアルバムのテーマによってははじかれていた可能性もありますが、今回だったらどこかしらには収まるというか。実際、山ちゃんが作ってきた曲はほとんどいいなと思いましたし。

「雨音」は確かにちょっと異色ですよね。シティポップというかアーバンな雰囲気で。

そう、なんか80年代っぽい感じがありますよね。だから、あとは並べ方の問題というか。作品って最後の出口のところで整えれば、ある程度はまとまりや流れは作れるはずなんですよ。今回で10枚目ですし、僕も歌詞はなんとなくしっかり書けるようになってきたので、よっぽどの曲でなければ書けるだろうと(笑)。

10枚目のアルバムというのは意識されていました?

意識したというより、もう10枚目かとは思いましたけどね。ひとつの区切りとまではいかないけど、“10枚ってすごいな。だいぶ作ったな”みたいな。なかなかアルバムを10枚作れるアーティストもそういないと思うので。

結成して25年、アルバムを10枚作っても、未だ創作意欲は涸れないと?

音楽は何を作っても楽しいし、その時のモードで楽しんでいますから創作意欲はなくならないです。アジカンでやるかどうかは考えますけど。

変な話、“アジカン意欲”みたいなものは?

アジカン意欲は…今はアルバム制作が終わったところなので、やりきった感はありますけどね(笑)。次の盛り上がりがくるまでにはもう少し置かないと…自分の中ではね。

それだけ出しきったと。

出しきった感はありますね。ただ、メンバーがまだ他にやりたい曲があるって言うなら、もちろんつき合うし、歌詞もメロディーも考えるし、楽しくやれると思いますけど。ただ、自分が曲を書くとなると、今はちょっと時間が欲しい(笑)。

アジカンとソロって後藤さんの中でどういう棲み分けなんですか?

どうでしょう? アジカンでやると、やっぱりそういう音になっちゃいますよね。僕としてはソロのほうが、どっちかって言うと洗練されているというか、今っぽい音にアジャストできている気がするんですよ、メンバーには悪いけど(笑)。でも、それがアジカンの良さっていうか。まぁ、今はそんなに変わらない気がします。ソロとバンドで何が違うとかあんまり考えていないですね。

単に音として出力のチャンネルが違う?

そうですね。あと、アジカンでやる時は少しファンの顔がチラつきます。“こういうのは好きじゃないって言われるんだろうな”とか、ちょっと思うかもしれない。あと、“これはどっちでやるのが面白んだろう?”とか。例えば『ホームタウン』に入っている「ボーイズ&ガールズ」は、最初ソロ用に書いた曲だったんですよ。でも、めちゃくちゃいい曲だからアジカンでやったほうがいいと思って。アジカンでやる良さは、やっぱり自分がやってるさまざまな活動や創作の中で、一番多くの人に聴いてもらえるってことなので、自分が世に問いたい曲はアジカンというフィルターを通すのが一番広がるという感じですね。だって世界中の人に聴いてもらえますし、規模が違いますから。もう再生数の桁が全然違う(笑)。

そういう底力と言いますか、バンドが持っている大きさみたいなものは今作にも存分に表れていますよね。“やっぱりアジカンっていいな”と素直に思いましたもん。

僕もそうだとは思いますけど、今回はあんまりよく分かってないところもあって。

よく分かってない?

世の中の流行りとかからは逸脱しているから。一応、今の音像的なマナーみたいなものは守っているつもりですけど、特に何かに寄せているわけでもなく、どこのシーンにいるでもなく、ただ自分たちがカッコ良いと思うものを作ったという感じなので。作為性がないというかね。

ピュアに作られたアルバムだというのはすごく感じます。

うん、そんな感じですね。

収録されているシングル曲、カップリング曲以外で、今作の中で一番最初にできた曲はどれですか?

確か山ちゃん系のトラック。「雨音」とか「You To You (feat. ROTH BART BARON)」あたりは早いうちからあったんですよ。「エンパシー」「フラワーズ」のタイミングくらいにはあったので。僕が最初に作ったのは「再見」かな? そのへんの曲をスタジオでみんなと一緒にプリプロした記憶がありますね。

こういうご時世ですし、デモ段階とかはリモートでやり取りされたりも?

しましたね。「ダイアローグ / 触れたい 確かめたい」(2020年10月発表のシングル)のカップリングで「ネクスト」っていう山ちゃんの曲をリモートで作ったんですけど、その経験は活きていると思います。それ以降、ちょっとずつみんなもリモートに慣れてくれて、あの喜多くんですらギターをダビングして送ってくれるようになったので(笑)。

みなさん、それぞれに新しい技を習得されたんですね。

若い子たちは普通にやってることだから、それを技と呼んでいいのか分かりませんけど(笑)。
L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)
L→R 喜多建介(Gu&Vo)、後藤正文(Vo&Gu)、山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)
アルバム『プラネットフォークス』

OKMusic編集部

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