尾崎豊の瑞々しくも真摯な
10代のライヴ風景を閉じ込めた
ライヴアルバムの傑作
『LAST TEENAGE APPEARANCE』

『LAST TEENAGE APPEARANCE』('87)/尾崎豊

『LAST TEENAGE APPEARANCE』('87)/尾崎豊

尾崎豊、生前最後の全国ツアー『TOUR 1991 BIRTH』とアリーナツアー『TOUR 1991 BIRTH ARENA TOUR 約束の日 THE DAY』の全55公演のライヴパフォーマンス中から、楽曲毎にベストテイクをセレクトしたライヴアルバム『LAST TOUR AROUND JAPAN YUTAKA OZAKI』が3月23日にリリースされた。併せて、松屋銀座8階イベントスクエアにおいて『OZAKI30 LAST STAGE尾崎豊展』も開催されている。この機会に、当コラムでは過去数作発表されているライヴアルバムから、10代の尾崎豊のライヴコンサートを収録した『LAST TEENAGE APPEARANCE』を紹介する。“PERFORMANCE”や“ACT”ではなく、“APPEARANCE”というのがぴったりくる、ドキュメンタリータッチの作品である。

ライヴ音源ならでは楽しみ方

たぶん10年振りに聴いたが、今聴いても尾崎豊というアーティストをきっちり閉じ込めたライヴアルバムだと痛感させられた。没後30年、リリースされて35年が経過してなお、その音像は鮮烈なままである。まず、オープニングナンバーがM1「卒業」というのがいい。『LAST TEENAGE APPEARANCE』というタイトルに相応しい幕開けであるし、この時期の尾崎豊がどういうシンガーソングライターであったのかをはっきりと示すベストな選曲だったと言える。声が若い印象なのは当然として、少し声が上ずっているような箇所もあったりして、そこも悪くない。ちょっと緊張してたのかな…と勝手に想像したりできるのも楽しいところ。イントロを始め、随所でオーディエンスの歓声が重なるところでは、“ここで尾崎が何かしたのかな?”と思わせるのもライヴ盤ならではだろう。映像作品も悪くはないけれど、そうした想像力を搔き立てるという意味では音源のみのほうが何倍も優れていると思う。

M2「彼」は3rdアルバム『壊れた扉から』の収録曲。この『LAST TEENAGE~』は1985年11月15日の代々木オリンピックプール公演の模様を収録したもので、『壊れた扉から』は同年11月28日発売だったので、ほとんどの観客は初めて耳にするものだった。そう思うと何となく拍手のボリュームも少し抑えめな感じがして、若干オーディエンスが面食らっているような気がしなくもないが、それはまったく勝手な想像にすぎないだろう。ただ、M2はAOR風味が強くて大人っぽい印象はあることは確か。当日そこにいた人たちがどう感じたかは気になるところだ。個人的には、「彼」はそののちに5th『誕生』に収められ、9thシングルにもなった「黄昏ゆく街で」に近い雰囲気もあって、そのプロトタイプとは言わないまでも、“こういうナンバーを20代以降の方向性のひとつと考えていたのかもしれないなぁ”と、栓無きことだと知りつつも想いを馳せてしまう楽曲である。10代の尾崎を象徴するM1「卒業」に続いて、アーティストとしてのその後を想像させるM2「彼」とは示唆に富んだ選曲だったと言えるだろう。

M1、M2はロックコンサートとしての開放感にやや欠けると言えばそうかもしれないが、そのあとにM3「Driving All Night」、M4「Bow!」と持ってきている辺り、“さすがに心得ていらっしゃるなぁ”と、そのセットリストの巧みさには今さらながらに感銘を受けたところだ。M3もまた『壊れた扉から』収録曲であるが、5thシングルとして同年10月21日にリリースされていたことに加えて、その前年からすでにライヴの定番曲であったというから、盛り上がりは必然であった。本作収録のテイクは、Bメロから歌に絡むサックスがスタジオ収録版とよりも明らかに前に出ていて、ライヴの荒々しさを如何なく感じさせるものである。荒々しさと言えば、M4もいい。ブルージーでルーズなギターリフから始まり、そこにサックスが絡む様子は、ブルースハープで始まり、どことなく爽やかな印象もある2nd『回帰線』収録版とは印象が異なる。また、『回帰線』版ではオルガンが鳴っているのに対して、このライヴテイクではピアノが踊っていて、やはりライヴならでの躍動感を感じるところである。

OKMusic編集部

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