子どもも大人も心から楽しみ、ワクワ
クできる作品 吉柳咲良と小西遼生が
語るミュージカル『ピーター・パン』
の魅力

世界中で愛され続けている、ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。日本では1981年、榊原郁恵による初演が行われて以来、40年以上にわたって上演が続けられてきた。昨年はフジノサツコが潤色・訳詞、森新太郎が演出を手掛け、これまでの『ピーター・パン』を一新。手作り感がありながらファンタジックな新演出版を上演した。今年も森による演出がさらにパワーアップして帰ってくる。昨年に引き続きピーター・パンを演じる吉柳咲良と、ピーターの宿命のライバル・フック船長を演じる小西遼生に、意気込みや作品への想いを聞いた。
■目指すのは昨年を超える『ピーター・パン』
――昨年、演出が一新されたこともあり、「ゼロからという気持ちでやりたい」とお話しされていました。新演出2回目となる今回の抱負を教えてください。
吉柳:前回初めての新演出で、自分が思っていた100倍くらい体力を使ったんです。エネルギー全開でやるためにはもっと体力が必要だったなと思ったので、今年はすでに体づくりを始めました。毎回確実に100%出し切ることができるように自分の体を作っていこうと思っています。まだコロナなどが不安な状況ですが、「またさらに良くなったよね」と思っていただけるよう、一つひとつ丁寧に自分の中で消化して頑張ろうと思っています。
小西:よりたくさんの子どもの笑い声を聞きたいです。そのために、パワー全開でふざけていきたいと思っています。舞台を観にきてくださる方は皆さんマスクをしていて、なかなか自由な状況ではありませんが、マスクの下で思いっきり楽しんで、笑って感動してもらいたいなと思っています。
――今年はここに力を入れたい、パワーアップさせたいという部分はありますか?
吉柳:新演出はフライングが二点吊りから一点吊りになって難しくなったんです。回転がない分、飛んでいる姿や形だけで皆さんを惹きつけ続けなきゃいけない。フライングの角度や歌にもっと力を入れたいというのが一つ。それと、1年経ってボイストレーニングも重ねたので、(ピーターが女性のふりをしてフックと海賊たちを騙す)「不思議なお嬢さん」のシーンはピーターの時と別人のようにできたらいいなと思っています。
――フック船長も海賊の皆さんと踊るなど、結構体を使っている印象でした。
小西:今までの出演作の中でもTOP3に入るくらいしんどいです(笑)。わちゃわちゃしている部分がたくさんあるのもそうですが、個人的に大変なのは、周りがみんな子どもでみんなはしゃぐので体力を使います。フックもヒゲを取ったら中身は子どもというキャラクターを森さんと一緒に作ったので、とにかくテンションを上げていました。あと、子どもたちと同じ視線でいるために常に中腰で芝居をしているのも大変でしたね。でも、そこで手を抜いてしまうと面白くないので。
■役者の100%を引き出し、委ねるのが森演出の特徴
――森さんの演出における魅力はどんな部分だと思いますか?
吉柳:ものに頼らず、役者の力と観客の皆さんの想像力に任せるのが、森さんが演出する『ピーター・パン』の魅力だと思っています。だからこそ、演者に求められるのは緻密なものが多い。森さんからは「一瞬たりとも気を抜かず、絶対に舞台上で楽をするな」と言われていて。最初から最後までエネルギー100%でやりきらないと、お客さまが想像力を膨らませるためのものを私たちが作れていないということになってしまうんです。森さんは私たちが演じるための色々なパスをくれて、手助けをしてくれます。本当に共同作業という感じがしますね。森さんにしかない演出をされる方なので初めて見た時は驚きましたが、これがピーターの根底にあるものなんだろうなと。「舞台上にいる間子どもで居続ける」というのがどれだけ大変か、森さんの演出になって改めて感じたので、森さんはすごいなと思いました。
小西:森さんの演出は、子どもの夢を壊さないということをすごく大切にしています。だから、僕らがキャラクターでいるための演出を作ってくださる。それでいて、子ども向けのものを作っているかというとそうじゃない。役者の実力が試されるような形の演出をされるんですよね。台詞の滑舌や歌の音程に関してもすごくシビア。子どもも大人も本当に楽しめるのが、『ピーター・パン』における森さん演出のすごいところです。
――吉柳さんは、具体的に森さんの演出のどこに驚いたんでしょうか。
吉柳:こんなに人って動けるのかと。思っていた以上に体を動かしますし、一瞬でも気を抜くと絶対に気付かれるんです。それくらい、舞台にかけるエネルギーは常に100じゃないといけないという思いがある。私は今まで無意識のうちに楽をしている部分があったのかもと気付かされました。あと、実は森さんが一番「何にでもなれる人」で、一番ピーターなんです。だから演出を受けていて、どうすればいいか理解できる。森さんって歌も上手いんですよ。「もっとこう歌うんだよ」ってちょっと歌ってくれた時に、「え、森さん上手!」と感じたのが印象的です。
■“因縁のライバル”だけじゃない関係性
――昨年に引き続き、小西さんがフック船長を演じます。吉柳さんからみた小西フックの魅力はどこですか?
吉柳:これは森さんの演出によるものでもありますが、結構ピーターに振り回されるチャーミングな部分があるんですよね。小西さんはものすごく脚が長いし風貌も格好良いのに、ホクロをつけたり目の周りを青くしたり、帽子をどんどんヨレヨレにしたり(笑)。見た目も中身もお茶目で憎めない、愛されキャラなところがあります。さっきビジュアル撮影を一緒にしたんですが、本当に百面相でどんな表情でも出来るんです。小西さんのフック船長は、小さい子どもが「怖い!」って思うと同時にちょっと笑ってしまうようなお茶目なところが魅力だと思います。
――ピーターとフックの、シリアスながら可愛らしいライバル関係も魅力でした。小西さんから見た吉柳ピーターはいかがでしょう。
小西:咲良自身の魅力と重なりますが、鐘の鳴るような歌声。それがピーター・パンという役にもばっちりあっていてとても魅力的です。お芝居も、森さんがかなり追い込んで色々要求するんですが、それを消化し、自分のものにして舞台に立っている。その姿がピーター・パンそのものなんですよ。天真爛漫で、でも実は寂しがり屋で孤独を抱えている。そんな二面性を咲良自身も持っていて、その陰影も含め全てが魅力的です。
――それぞれ、一緒に行動する子どもたちや海賊の皆さんとの関係性をこう作りたいという考えはありますか?
小西:海賊たちは自分も含め、気力体力共にエネルギーMAXで、それぞれが個性的で魅力あるおバカたちに仕上げていきたいですね。フックとピーターは因縁の相手だけど、同時にごっこ遊びの遊び相手でもあるんです。本人たちも全力で楽しんでいて、実はお互いにとって「いなきゃならないない相手」でもある。準備段階から体力づくりをしっかりとしないといけませんが、今年は咲良がすでにトレーニングを始めていますし、去年以上に本物の子どもに負けないくらいのエネルギーでやるのが目標です。
■確かな信頼関係のあるカンパニー
――お客さんはみんなマスクで、表情が分からないというお話をされていました。その中でも、子どもたちの反応などで印象に残ったものはありましたか?
吉柳:小さい子って、本当に面白いと思ったところはすごく笑ってくれるんです。声が出せない中でもその素直な反応が見えていたから頑張れた部分もあります。あと、今は皆さんSNSを使ってらっしゃるので、感想もすごく書き込んでくださるんですよね。私はすごく調べるので、皆さんがこういうふうに楽しんでくれたんだ、こう感じてくれたんだと知ることができて、現代ならではの繋がり方があると感じました。
――昨年の稽古場でのエピソードなどがあれば教えてください。
吉柳:タラレバ話ばっかりしてました(笑)。地方公演の時も、こういうご時世なのでみんなで集まってご飯とかはなかったけど、リモートで会話しながらそれぞれの部屋でご飯を食べたりして。コロナ禍でもできることを探して楽しんでいました。
小西:印象的だったのは咲良への森さんのしごきですよね。ピーターが求められるものってフィジカル的にもすごく大きくて、「足をそこに一歩出したら次はここ」みたいに細かくやっていて。辛い体勢の連続だったし、延々とそのシーンをやることもあって。でも、それに対して咲良は応え続けるんですよ。信頼関係ができていく感じがしたし、良いものを見せてもらったと他人事のように思いました(笑)。そういう日々の連続がこのカンパニーのチーム力を作った気がしますね。
吉柳:森さんは、よかった時はよかったと褒めてくれるんです。面白かった時も、自分で指示を出したのに一番笑う。それでこっちも手応えを感じるし、「きっとこれはすごく面白いんだ」と思える。滅多にありませんが、「今日はよかったぞ」って言われると本当に嬉しくて明日も頑張ろうと思います。
小西:咲良への期待値が高いよね。
吉柳:それってやっぱり嬉しいことですよね。そう思えるのは、今は心に余裕があるからかもしれませんが。稽古中は「私ずっと言われてる……」と思ったりもするけど、言われなくなったら怖いと思うくらい色々なパスを投げてくださる。そのパスをうまく返せた時が一番楽しいですね。
■心に残る特別な思い出ができる作品
――最後に、お客さまへのメッセージをお願いします。
吉柳:今も世の中は色々と大変で、公演も感染対策をしながら。小さいお子さんが楽しめる場所が前よりも少なくなってしまっている中で、様々な我慢が重なっていると思います。でも、観に来てくださった皆さんに幸せな気持ちで帰っていただけるように、大切に演じたいと思っています。昨年の公演は、これまでのピーター・パンを観てくださったことがある方にも「新演出になって、全然違うピーター・パンになった」と驚かれることが多かったんです。今年はそれを超えて、もっとよくなったと思っていただけるように頑張りますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけると嬉しいです。
小西:劇場に来てくださいというのが何よりの願いです。今は配信も増えていますが、舞台の最大の魅力は生でこそ味わえる、体感できる感動です。特にこの『ピーター・パン』という作品は、音楽の豊かさや舞台上にいる生身の人間が発するエネルギーなど、生で味わって頂きたい魅力が沢山あります。ピーターの客席へのフライングも、ピーターが頭上を飛んでいくあの瞬間って、そこに居る皆が童心に帰りますよね。特にお子さん連れのご家族には是非来ていただいて、一生の思い出になるような体験を持ち帰って頂きたいです。

本作は2022年7月23日(土)より東京公演、その後8月に大阪公演が行われる。
取材・文=吉田沙奈 撮影=荒川潤

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