マルシィ 初の東京ワンマンも完売、
“消せない記憶と生きていく”3人組
のSPICE初登場インタビュー 王道バ
ンドサウンドの根底にある意外なルー
ツとは?

透明感のあるうきょう(Vo)のボーカルが、きっと誰の心にも刻まれている“消せない記憶”を歌にする。そんな福岡発の3人組ロックバンド、マルシィがいまSNSを中心に大きな注目を集めている。2018年にメインソングライターであるうきょうとフジイタクミ(Ba)を中心に結成された彼らは、2020年にデジタルシングル「Drama / 絵空」でデビュー。現在、YouTubeで公開されている12本のミュージックビデオは、バンドの真骨頂である切ないバラードから疾走感のあるロックナンバーまで幅広く、たとえば、Mr.Childrenスピッツback numberのような、メインストリームで活躍するバンドを彷彿とさせるメロディアスな王道のバンドサウンドになっている。昨年12月には400人を収容する地元・福岡のライブハブハウスBEAT STATIONでの初ワンマンを成功させ、着実にリスナーの裾野を広げている3人に、結成の経緯をはじめ、王道バンドサウンドの根底にある意外なルーツなど、話を訊いた。
――活動拠点は福岡なんですよね。
うきょう(Vo&Gt):はい、そうです。
――最近、福岡からはいいバンドがたくさん出てきてますよね。
フジイタクミ(Ba):そうなんですよね。僕たちのちょっと上の世代だと、ポルカドットスティングレイとか神はサイコロを振らない、対バンさせてもらったバンドだと、クレナズムもいますし。
――ユアネスも福岡ですよね。
おさみぃ(Gt):あ、僕、ユアネスのメンバーとバイト先が一緒でした。同じ専門学校の先輩なんですよ。特にギターの(古閑)翔平さんにはよくごはんに連れていってもらってます。
――福岡のライブシーンで、マルシィはどういう存在だったんですか?
うきょう:僕たちはまだあんまりライブをできてなかったので、正直どう思われてるんだろう?っていうのがわからないんですよね。
おさみぃ:でも、もし御縁があれば、ユアネスとか神サイとは福岡で一緒にライブをやってみたかったなっていうのはあるんですよ。同じ邦ロックの界隈というか、歌を大切にしてるバンドなので。
マルシィ/うきょう(Vo&Gt)
自分と似たような経験をしているはずだから、自分の正直な記憶を書くことで、それぞれの記憶を思い出してもらえたらいいなっていうのはあります。
――去年の12月には地元・福岡のライブハウスBEAT STATIONで初のワンマンライブを成功させたそうですね。
うきょう:そうですね。それまで1、2回イベントに出たことがあるハコだったんですけど、そのときに見た景色とはまったく違ったので新鮮でした。
――自分たちだけを観に来たお客さんが集まってるわけですもんね。
おさみぃ:僕らはコロナ禍になる少しまえに結成したので、ライブ自体あんまりできなかったんですよ。初めてマルシィでライブをやったときは、お客さんが20人くらいだったんですけど、1、2年を経て、たくさんの人が観に来てくれたのは本当にうれしかったです。
タクミ:みんなマルシィのお客さんなんだなあって思いましたね。
――それこそSNSとかYouTubeでたくさんの人が聴いてくれているのは数字でわかるけど……。
タクミ:そう。いざ目の前にすると感動しました。
――結成は何年ですか?
うきょう:2018年の終わりぐらいにタクミと僕が出会ったんです。バンドをやりたいなと思っていたときに、ダメ元で“誰か楽器をやってる知り合いはいないか?”って、紹介してもらったんです。で、その当時、ちょうど曲を作りはじめたタイミングで、「Drama」っていう曲をタクミに聴いてもらって。
――2020年の5月31日にリリースされたマルシィのデビュー曲ですね。
うきょう:そうです。それを聴いてもらって、タクミと会おうってなったんですよね。
タクミ:最初に曲が送られてきたときは、バンド経験もないし、曲作りもまだ素人ですって言われてたので、まあ聴いてみようかな、ぐらいの感じだったんですよ。
おさみぃ:正直、あんまり期待してなくてね(笑)。
タクミ:でも聴いてみたら、「Drama」の弾き語りがすごくよくて。歌詞もいいし、歌もいい。これはもうぜひ一緒にやろうって返事をしました。ちょうど僕もちゃんとバンドをしたいなと思っていたところだったので。……運命の出会いっていうやつですね。
うきょう・タクミ:(笑)。
――おさみぃくんはどういう経緯で加入したんですか?
おさみぃ:うきょうとバイト先が一緒だったんですよ。当時、何個もバイトを掛け持ちしてて、うきょうとはシフトがかぶることがなかったんですけど、たまたまかぶる機会があって。ちょうど(マルシィの)ギターがいなくなったから、ぜひ一緒にやりたいって言ってもらったんです。その前から(バイト先の)オーナーに紹介されてて、「Drama」の音源を聴かせてもらったんですよ。それで本当に声がいいなっていうのは第一印象でしたね。演奏はめちゃめちゃだったんですけど(笑)。
うきょう:それが2019年です。
――じゃあ、最初から「Drama」っていうオリジナル曲がある状態でバンドが始動したんですね。
うきょう:そうですね。だから僕はカバーとかやったことがないんですよ。ふたりはあるよね?
おさみぃ:うん、僕は数えきれないぐらいやってました。トラバンっていうのをやっていて。いろいろな地方をまわって演奏をして、その場でお給料をいただいて帰るっていう、そういう仕事をしていたんです。それでオールディーズとかブルースとか、300曲ぐらいコピーしてたんです。でも、いちばん好きでたくさんカバーしたのはX JAPANですね。
――何がきっかけでX JAPANを好きになったんですか?
おさみぃ:YouTubeです。たまたまラストライブの「Forever Love」の映像を見て。“hide、かっこいい!”ってなったんです。エレキギターっていう、僕が触れたことない世界が全面に出ているバンドだったので“なんだこれは!?”みたいな。クラシカルだし、ハードロックだし。でも、歌ものっぽいメロディの旋律もあるし。すべてが“きたー!”って感じで。で、母親に、もう亡くなってるメンバーもいるって聞いてショックを受けたのは、いまでも鮮明に覚えてますね。高校1年生のときです。
――タクミくんもマルシィの前のバンドを組んだきっかけはX JAPANだったそうですね。
タクミ:僕もYouTubeを見漁って発見したんですよ。そのライブ映像がハチャメチャで。楽器を投げたりとか。そういうのを見て、当時、僕はおりこうさんだったんですけど(笑)、“すげー!”って、一気にのめりこんだんです。
うきょう:だから(タクミは)出会ったときのベースは紫のイカツイやつだったんですよ。
タクミ:(X JAPANの前ベースの)TAIJIさんモデルの変形ベースだったので。それをマルシィの最初のライブまでは使ってたんですけど、ちょっと違うなぁと思って買い換えました(笑)。
――そうなんですね(笑)。うきょうくんはどんな音楽を好んで聴いていたんですか?
うきょう:僕はJ-POPを聴いてきました。学校とかで流行ってる音楽だったり、親が家で流してくれる音楽だったんですけど。清水翔太さんとかGReeeeN宇多田ヒカルさん、JUJUさん、あとはRADWIMPSとか。
――バンドをやりたいと思ったのは、RADWIMPSの影響ですか?
うきょう:いや、そこに関してはラッドの影響というよりも、地元の福岡にバンド好きの友だちがいて、ライブハウスに連れて行かれたんです。そのときに出ていたのは、名前も思い出せないようなインディーズのバンドだったんですけど、でもそこでライブを観て“バンドっていいな”と思いました。
――これまでマルシィが発表している楽曲からは、back numberとかMr.Childrenみたいな日本のメインストリームにいるロックバンドの影響もあるのかなと思ったんですけど、どうでしょう?
うきょう:それもあると思います。僕らは邦ロックっていう枠にとどまらずに、いろいろ形態を変えながら、多くの世代の人に音楽を届けたいっていうのはあるので。
――たとえば、「花びら」とか、「プラネタリウム」とか、マルシィの楽曲はタイトルもシンプルですよね。そこにも変化球を狙わず、王道の歌もので勝負する気概を感じたんです。
うきょう:たしかに、そういうのはあるのかな。歌詞とかタイトルで捻りたくなるときもあるんですけど、伝えたい言葉は、自分のなかから自然に出てきた言葉を使いたいなと思っているんです。そうなると、自然とわかりやすい言葉とかタイトルとかにはなっていくんです。
おさみぃ:音楽的なところで言うと、イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ、で、2番にいって、ギターソロのあとで落ちるっていうのがJ-POPの王道だと思うんですけど、それを真っすぐに踏襲してるのがマルシィの強さだと思うんです。うきょうの透き通った歌声に寄り添うバンドサウンドで演奏することで、エモさを引き立てるっていう感じですね。
――タクミくんは、いまのマルシィの音楽性についてはどう考えていますか?
タクミ:たしかにマルシィは王道路線だとは思うんですけど、最初にうきょうが弾き語りから作ってくる楽曲に対して、さらにバンドでアレンジするときに、かなり時間をかけてやっているので。王道と言えど、マルシィのオリジナリティがある。そういうものを目指して制作しています。
――さっき、うきょうくんが“邦ロックの枠にとどまらずに”と言ってましたけど、たしかにこれまでにリリースしてきた楽曲は本当に幅広いですよね。初期衝動を色濃く感じる「Drama」に始まり、ピアノとストリングスを取り入れたバラード「雫」、温かなポップソング「ワスレナグサ」、ギターのアルペジオが映えるロックナンバー「プラネタリウム」っていうふうに。
おさみぃ:「ワスレナグサ」では明るい曲調にチャレンジしたりもしてますし。2作目に出した「雫」は、実は「Drama」と同じぐらい初期の頃にあって、温めていた曲だったんですよ。「雫」と「白雪」に関してはプロデューサーの方と一緒に作ったり、逆に「プラネタリウム」はセルフプロデュースでがんばったりしていて。メンバー同士で“次はこういうことをやりたい”っていう会話を重ねながら、いろいろな曲を作ってきました。
うきょう:そういう話し合いを重ねてきた結果、少しずつ進化できているのかもしれないね。
タクミ:毎作、毎作、洗練されてるなと思ってます。
――歌詞は恋愛をモチーフにした楽曲が多いですね。
うきょう:歌詞を書くときにテーマは決めないことが多いんですよ。すべて実体験を綴ったわけじゃないんですけど、自分の感情に重きを置いて書き出すようにしていて。そこから、メロディとのハマりを考えながら、綿密に世界観を広げていくので。
――じゃあ、最初にラブソングを作ろうって決めてるわけじゃないんですか?
うきょう:自然にこうなった感じですね。
――でも、曲を聴いた人に“失恋の曲が多いですよね”とか言われません?
うきょう:ああ、言われます。いま世に出ているものからは、そういうふうに思われるだろうなと思うんですよ。でも、失恋に限ったバンドになるつもりは正直なくて。いまは失恋のイメージが強いかもしれないし、今後もたくさん書いていくかもしれないんですけど、バンドの行く先としてはもっと広い世界観というか、恋愛以外の曲も書きたいなと思ってます。
マルシィ/おさみぃ(Bt)
大衆に全員で聴いてくれというよりは、一人ひとりに刺さるようになればいいなと思ってます。
――なるほど。バンドのキャッチコピーには“消せない記憶と生きていく”と掲げてますけど、これにはどういった想いがあるんですか?
うきょう:それも、最初から“記憶を歌おう”っていうのを意識していたわけじゃないんです。曲を発表していくなかで、共感してもらえることが増えてきたんです。自分が思ったことを書いてるだけだったけど、そういうふうに思ってくれる人がたくさんいる。まだまだ少ないんですけどね。みんな自分と似たような経験をしているはずだから、自分の正直な記憶を書くことで、それぞれの記憶を思い出してもらえたらいいなっていうのはありますね。
――おさみぃくんとタクミくんは、うきょうくんのソングライティングはどう見ていますか?
おさみぃ:素直に本音で歌っているのがいいですよね。そこに文学的な要素も入れ込みつつ、歌詞を練っていくっていうのが、すごくうきょうらしいと思います。
タクミ:たとえば、「ピリオド」の歌詞を聴いていると、自分の心の中を覗かれているような感じがするんです。身近な人間ですけど、うきょうはすごいなと思ってます。
うきょう:そんなことないよ……(笑)。
――いまタクミくんが言ってくれた「ピリオド」は、初めての女性目線のバラードですね。これは本当に名曲だと思いました。
うきょう:最初に曲を作ったときに出てきたロディに女性目線の歌詞がのってたんです。
――メロディと歌詞が一緒に出てくるんですか?
うきょう:基本一緒ですね。そこから歌詞を作り変えていくっていうのはあるんですけど。この曲に関しては、変えてないところが多かったかな。なんでこういう曲を書きたかったのか、みたいなことは深く考えないんですけど、女性目線の歌詞は挑戦してみたかったんです。
――この曲は《好きだよ でも行き止まりだよ》というサビのパンチラインがとても耳に残るんですよ。どんな女性像をイメージして書いたんですか?
うきょう:女性って、やっぱり僕とは違うなっていうのがあるんですよね。いろいろな女性がいるとは思うんですけど、僕のなかでは“強いな”って思うんです。白黒つけたら、すぐにどっちかにいける。賢いなとか。そこに男として一矢報いたいっていう気持ちがあって。
――一矢報いたい、とは?
うきょう:音楽を通して復讐じゃないですけど。皮肉というか、そういったことを、この曲には詰め込んでみたんです。自分の感情に嘘をつかずに、そこを突き詰めてみたいなって。
マルシィ/フジイタクミ(Ba)
まだライブの本数が少ないので、自分たちのライブはこういうものだって言えないんですけど。やっている曲は素晴らしいものだと信じているので。
――うきょうくんが書いたデモ曲はどんなふうにメンバーに聴かせるんですか?
タクミ:いろいろあるんですけど、「ピリオド」はスタジオで聴かせてもらいました。“曲ができたんだけど……”みたいな感じで弾き語りで。たまにあるんですよ。聴いた瞬間にメンバーのなかにビビッとくるのが。それがこの曲にはあって。絶対にいい曲になるって思いましたね。最初に即興で合わせたんですけど、その時点でいい曲だったんです。もちろんそこから変えていきましたけど。
おさみぃ:すぐに“これやろうよ!”って言ったよね。
うきょう:あれはうれしかった。
おさみぃ:「ピリオド」に関しては、新しいことにチャレンジしようっていうのはそんなになくて。僕らから滲み出てくる素直なバンドサウンドでいいなって思いながら作ってますね。
――途中でおさみぃくんがギターを思いっきり歪ませて弾いてるところがありますよね。こういうタイプの曲だったら、クリアに聴かせて、きれいにまとめそうなのに。
おさみぃ:ああ、そこは完全に僕のX JAPAN好きが出てます(笑)。心の中で揺れ動いている感情の起伏っていうんですかね、そういうのをギターの音として表現したかったんですよ。
うきょう:(おさみぃは)僕がお願いすると、いつもたくさんフレーズを考えてきてくれるんですよ。そこからセッションにセッションを重ねて、この最高のフレーズを持ってきてくれたんです。
おさみぃ:悔いのないぐらい出し尽くしました(笑)。
うきょう:結果的に、より自分たちのバンドサウンドを高いレベルで突き詰めた楽曲になったと思います。
――そうやって1曲1曲丁寧に向き合っているから、マルシィは楽曲をリリースするたびにどんどんクオリティも上がっていってるんでしょうね。
うきょう:そういうふうに受け取ってもらえてるなら、うれしいです。毎回、こうやったら、こういうふうになるかなあ? みたいな実験じゃないですけど、僕がワガママを言って、それをみんなで試してる感じなんです。そうやってひたすら最高の作品を目指してます。
――今後のスケジュールは、3月27日に東京での初ワンマンが渋谷WWW Xで開催されます。
うきょう:決まったのは去年の年末ぐらいだったんですけど、本当にうれしかったです。メンバーと一緒によろこんだのを覚えてますね。
――ライブではどんな空間を作りたいと思っていますか?
うきょう:音源を聴いてもらって、そこでいいと思ってくれた人がライブに来てくれると思うので、レコーディングしたものじゃない、この3人の生の演奏をまずは楽しんでほしいなって思います。あと、できれば、忘れてほしくないというか。“あのライブで、こういう曲を聴いたな”って、ずっと残る思い出になってほしい。そういう存在になれればいいなと思いますね。
タクミ:まだライブの本数が少ないので、自分たちのライブはこういうものだって言えないんですけど。やっている曲は素晴らしいものだと信じているので。僕らはバンドなので、この素晴らしい楽曲たちを、いちばんいいかたちでお届けするっていうのが目指すべきところですね。
――ライブのタイトルを『START』にしたのはどういう想いがあるんですか?
うきょう:これから僕たちが歩んでいく道というか、作っていく音楽の第一歩となるライブだと思ってるんですよ。これから、どういうふうな道を辿って、どういうふうな結末になるかはわからないですけど、これからへの期待と希望を込めて、3人でがんばっていこうという想いを込めたタイトルです。
――バンドにとっては過去最大キャパのワンマンなりますね。
おさみぃ:たくさんの人に来てもらえるのがうれしいっていうのはありますけど、僕らは一人ひとりに届けたいっていう気持ちがすごくあるんです。会場全体で盛り上がるところは盛り上がりたいし、バラードで聴かせるところは、それこそ記憶に刻んで帰っていただきたい。大衆に全員で聴いてくれというよりは、一人ひとりに刺さるようになればいいなと思ってます。

取材・文=秦理絵 撮影=高田梓

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