キミとボクらの答え合わせの一夜、石
原夏織『ISHIHARA KAORII LIVE 2022
「Starcast」-Altair-』夜の部レポー

石原夏織の約1年ぶりとなるライブ『石原夏織 LIVE 2022「Starcast」supported by animelomix』が行われた。彼女の最新シングル『Starcast』にちなんで”ベガ”と”アルタイル”と各公演には天体名が冠せられており、今回は3月27日に神奈川県民ホールにて開催された神奈川公演 “-Altair-”の夜の部の様子をレポートする。直前の3月21日にはアーティストデビュー4周年を迎え、声優としての活動はもちろん、歌唱面でもさらに表現力の幅を広げている石原夏織が”今の全て”をこれでもかと詰め込み、臨んだ千秋楽。そんな彼女の強い想いから生まれる圧巻のパフォーマンスは、見る者全てを同じ気持ちにさせていく、まさに答え合わせの夜になったのだ。

陽も落ちて、街を染める夕闇が少しずつ深みを増していき、星空が顔を覗かせようとしている。きっと、これから神奈川県民ホールで紡がれるであろう物語の導入としては最高の演出のはずだ。SPICEでは既に3月12日に行われた東京公演の-Vega-のレポートもお届けしているが、今回は3月27日の神奈川県民ホールにて開催された神奈川公演「Starcast -Altair-」夜公演のレポートをお届けする。本公演はベガとアルタイル、つまり織姫と彦星がコンセプトとなっており、随所にその演出が散りばめられている。ベガと対をなすように作られた今回のアルタイル公演だが、前回東京公演のレポートの最後に「アルタイルではどんな輝きを見せてくれるのだろう?」と私は結んだ。答え合わせの結果から言えば、それはまばゆい程の輝きであった。天体の場合は周りが暗ければ暗いほど、そのきらめきは増すはずだ。つまり、ベガとアルタイルは皮肉にも遠く離れているからこそ、互いに強く輝いていられるのかもしれない。しかし、石原夏織が魅せたステージに関してはその両方を合わせてこそ、より強い光を放っていたのは間違いないだろう。
「雨が星になって降り注いだら、願い事をしよう……」
舞台の幕が上がると、彼女のモノローグから物語が始まる。その内容こそベガ公演と同じものだが、きっとベガとアルタイル、2人の願いは同じはずだ。彦星から織姫へ、見方を変えただけで同じものでも聞こえ方が全く変わってくるというのは彼女自身も後のMCで語っていたが、まさにその通りだ。やがて鼓動の音が場内にこだますると「Diorama-Drama」からライブがスタートする。
続く2曲目の「Against.」ではダンサーも登場し、シックな黒と紫の衣装もベガとの対比を感じさせる。ベガ公演が爽やかなダンスナンバーから始まっていったのに対して、アルタイルでは前途多難なイメージの曲で立ち上がっていく。

「始まりました!石原夏織 LIVE2022 Starcast アルタイル公演です!」と2曲を終えた所で挨拶を挟み「今日は衣装もアルタイルverです!それでは夏織ダンサーズの紹介をさせてください!」と1人ずつ名前を呼ばれ、ソロパートを披露する。続けてペンライトをピンク、そして赤色に変えて、彼女たちの動きに合わせて振っていくが、さすがに千秋楽ともあって場内の息はピッタリだし、心なしかダンサー紹介時の手拍子も大きく力強かったように聞こえた。
3曲目の「Singularity Point」では会場のペンライトの色に合わせて場内のライティングも赤に染まり、緑のレーザーが飛び交う。「選び続けてる星の中で強く惹きつけるたったひとつ」。大きくそびえ立つ運命に立ち向かうアルタイルの決意を感じさせるセットリストだ。直後のMCではついにライブ千秋楽であることに触れつつ「今日、みんなが会場に来る前に何やってたか当ててもいいですか?……8割方の人が中華街に行ってたでしょ!」と場内アンケートを採るも、過半数が行っておらず「えー!なんで?こんなはずじゃ……。だってファンクラブ会報で私、中華街に行ってましたよね?ああいうのってみんな真似して行くんじゃないんですか?!」と会場の笑いを誘う。
続く「わざと触れた。」ではベガ同様に歌う彼女の後ろで2人のバックダンサーが描く物語が繰り広げられているが、衣装が先ほどとは異なりベガ公演で着ていたものだった。対して5曲目の「Plastic Smile」ではアルタイルverの衣装となっていたので「もしかしてこの曲はアルタイル目線で聴くべきなのかも」という考えが頭の中をめぐり、まるで2週間前のベガ公演の答えあわせのようだ。
「流星群に見えるかな……?」
通りを行き交うクルマのヘッドライトを流れ星に例えて、何気なく撮った写真を眺めてひとり呟く。夜景を映すスマートフォンの画面に反射する自分自身の冴えない表情を見て、己の無力さを感じずにはいられない。それでもなお、ベガに対する確かな気持ちを再確認すると物語は加速していく。そんな幕間にて、ステージ上にはアコースティックギターとパーカッション、そしてグランドピアノが運び込まれていく。最後に純白のドレスに身を包んだ石原夏織が登場すると、アコースティックパートへ突入する。
「キミしきる」で舞台上手のステージから現れ「雨模様リグレット」で階段を降り、バンドメンバーとのセッションを楽しむ。歌声はもちろん表情のみならず、目線の動かし方や指先ひとつまで、彼女は身体全体を使って楽曲を歌い上げていく。その表現力の高さは思わず息を飲んでしまうほどで、一瞬たりとも見逃すことができない。曲のオケが聞こえてきた瞬間にバチッとスイッチが切り替わる瞬間が見ていてもハッキリと分かるくらいなのだ。そんな圧巻のパフォーマンスとは裏腹に、本人の人柄の良さがにじみ出てくるMCパートとのギャップを味わえるのも彼女のライブの醍醐味だろう。
今回のライブで初挑戦のアコースティックパートを振り返るように、バンドメンバー紹介へ。ベガ公演とは若干バンドの構成も変わり、パーカッションの”さっちん”こと若森さちこ氏、ギターのアンジェロさん、そしてピアノのNiKAさんらが紹介された。「私、パーカッションでひとつ気になる楽器があるんです!」と、鍵で作られたウィンドチャイムに触れると「これはブラジルで購入したので、多分ブラジルのどこかの扉が開くと思います(笑)」とさっちんさんのユーモアある返しに場内も和む。
8曲目の「夜とワンダーランド」ではアンジェロさんのフラメンコギターのような情熱的なアレンジのアコースティックギターに「”しっとり”だけがアコースティックじゃないよな」と思わず酔いしれる。続く9曲目はsupercellの「君の知らない物語」をカヴァー。歌詞にベガとアルタイルが登場するだけでなく、「Starcast」の作詞を手掛けるやなぎなぎが歌う曲なだけに、場内の誰もが大きく頷いた選曲だったことだろう。アコースティックパート最後の曲は「キミに空とクローバー」。再びバンドメンバーを紹介しながらのソロパートメドレーがあったり、スモークで充満するステージ上を、まるで雲の中を縫うようなカメラアングルで映し出される石原夏織とバンドメンバーの笑顔が弾ける。その晴れやかな表情は、大きな入道雲を浮かべた真夏の青空のように清々しかった。
「確かなのは胸の高鳴り……」
“会いたい”という想いを抱きしめ、心と身体は違う速度でキミを目指して駆け出していく。まるで流星群のような往来する光の層。横断歩道の赤信号を挟んで、向こう岸にはキミの姿が見える。「ボクの願いは、キミの願いが叶うこと」アルタイルが自分の気持ちを再確認し、確信に変える。星の雨が降る夜に、ベガが望んでいた願いとは……。ベガ公演に参加していた方なら全てが繋がったはずだ。
青のドレスに着替えた彼女が現れ「Page Flip」を披露。過去のライブ映像がフラッシュバックのようにいくつも流れ出る演出に加えて、間奏で歴代の楽曲の振り付けをメドレーのように踊っていく演出に会場からの拍手が鳴り止まない。「もう4年も経ったんですね……」と3月21日にアーティストデビュー4周年を迎えたことにも触れ「4周年に合わせて過去のMVのフルサイズをYoutubeで公開していましたけど、たった4年前のはずなのに、なんか、すごく私、若い!」と思い出を1ページずつめくるように振り返る。「みんなもそういう事、あると思うんですが、時にはホントに小さな石ころにつまづいて転んでしまう事もたくさんありました。それでもこうやって笑顔でライブが出来たり、新しい曲が出せたりしたのは、皆で手を取り合って前に進んで来られたからなんだなって改めて思いました。」と、4年分の感謝の気持ちを伝えてくれた。
続く「虹のソルフェージュ」では、何度も目を潤ませながら歌っていたが、最終的には想いが溢れてしまい涙を流すひとコマも。直後のMCでは「泣いちゃったことは秘密だよ!」と語っていたが……すみません(笑)。でも、少しでも彼女の中の悲しみや苦しかったことが晴れてくれたならいいなと、本当にそう思った。
最後はもちろん「Starcast」。ベガとアルタイル、両公演の幕間で流れていたモノローグが付いた映像は、全てこの曲をモチーフに作られていった物語だ。ずぶ濡れで見上げた空も、バカだねと笑い合ったことも、いくつ季節が変わっても、向こう岸から手を振って、答えあわせをしようと、彼女は語り、そして歌っていた。他人から見たらたわいもないような、小さな事で胸がつかえたとしても、こうやってライブで笑いあえる。彼女もボクたちと同じように、同じ想いを願っていたのだという答えあわせが出来たことは、我々の胸に深く刻まれたことだろう。その想いを代弁するかのようにいつまでも鳴りやまない温かい拍手に包まれて、石原夏織はステージを去っていった。
この日のアンコール1曲目は「Ray Rule」。石原夏織らしい鋭いダンスを映し出すモニターには、その動きをトレースするようにシンクロする映像が重ねられていた演出がカッコいい。「今回こそは泣かないぞ!って決めてたのに……」と改めてここまでを振り返ると「今回の公演では、今まで歌ったり聞いてきた曲も、順番だったりまた違った流れで聴くと変わるんだなって思いましたね。私は今回、虹のソルフェージュにだいぶ、やられました……。」と正直に語った。またアコースティックでのカヴァーの選曲についても「どうしてカヴァーだけ、ベガでは男性の曲で、アルタイルでは女性の曲なんだろうって思った方がいたかもしれないんですけど、セットリストの中盤辺りで2人が出会えていたら良いなって想いを込めて、そうしました。」と、ここでも”答えあわせ”をしてくれた。
アンコール2曲目の「Cherish」を披露したタイミングで、6月19日に初となるファンクラブイベントの開催も決定し、会場が大きな拍手で包まれたタイミングで最後の曲となる「You&I」を歌い上げる。「最後に千秋楽という事で、もう一曲!」とサプライズのダブルアンコールで1stアルバム「Sunny Spot」より1曲目の「Sunny You」が流れると、瞬時に黄色のペンライトで場内が埋め尽くされる。すべての曲を終え、本当の最後に「このライブが出来て、本当に幸せです!みんなありがとう!」と舞台上から叫ぶ彼女の姿が、この原稿を書きながらも鮮明に浮かんでくる。
今回の公演は新譜の曲名がタイトルとして冠されているものの、開催のタイミング的にも実質的な4周年記念ライブだったと言っても差し支えないだろう。新たな取り組みにも挑戦しつつも、これまでの道のりを振り返って、これからに向けて大きく羽ばたいていこうとする、そんな気概を本人はもちろん、サポートするスタッフからも感じられた。ところで話は変わるが、皆さんは今回のツアーのサブタイトルにもなっていたベガとアルタイルの語源についてご存知だろうか?由来はどちらもアラビア語で、わし座のアルタイルが「飛翔する鷲」なのは分かるとして、こと座のベガも実は「急降下するハゲワシ」なのだそう。織姫と彦星がどちらも鷲だったというのは、このレポートを書くために調べていて偶然知ったのだが、このStarcastというライブが”飛翔する鷲”つまりアルタイル公演で千秋楽を迎えられたことも、とても縁起が良いではないか。石原夏織は強い信念をもってアーティスト活動を続けてくれている。それ以上に嬉しい事なんてない。
レポート・文=前田勇介

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