ロイヤル・バレエの代表作『ロミオと
ジュリエット』の直近舞台を映画館で
愉しむ~『英国ロイヤル・オペラ・ハ
ウス シネマシーズン』で4月8日より
1週間限定上映

英国ロイヤル・オペラ・ハウスのオペラ&バレエを映画館で堪能できる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2021/22』が好評だ。4月8日(金)~4月14日(木)TOHOシネマズ 日本橋ほか全国公開されるロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)は、ウィリアム・シェイクスピア原作で、1965年、ケネス・マクミラン振付により初演されて以来530回以上も上演されている。このドラマティック・バレエは、演劇の国イギリスの名門バレエ団にふさわしい代表作といっても過言ではあるまい。今回は2022年2月3日、ロイヤル・オペラ・ハウスで収録された最近公演の模様なので、ぜひ注目したい。

■マクミラン版『ロミオとジュリエット』は屈指の人気名作!
【STORY】
キャピュレット家のジュリエットとモンタギュー家のロミオは情熱的な恋に落ちるが、二つの家は対立している。ひそかに結婚する二人だが、運命のいたずらによりロミオはジュリエットの従兄弟ティボルトと決闘し、彼を殺してしまう。ロミオは罰としてヴェローナから追放される。
ジュリエットは両親によってパリスとの結婚を強いられるが、それを逃れるために毒薬を飲んで仮死状態となって、ロミオの元に行く計画を立てる。だが彼女のメッセージはロミオには届かず、ジュリエットの死の知らせを聞いて戻ってきたロミオはキャピュレット家の墓所で命を絶つ。仮死状態から目覚めたジュリエットはロミオの亡骸を発見し、胸を刺して後を追う。

数あるバレエ『ロミオとジュリエット』の中でもマクミラン版が人気を博している原動力は、スピーディーかつダイナミックな振付にあろう。ガラ・コンサートで独立して上演されることも多いバルコニーのパ・ド・ドゥは、その最たるもの。ロミオとジュリエットが愛の絆を強めるが、流麗かつ激しいリフトが連続し、ふたりの高まる気持ちがフィジカルに伝わってくる。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(c) 2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks
終幕の墓場の場面でロミオが仮死状態にあるジュリエットと踊るパ・ド・ドゥは、ある種不気味ともいえ、生々しい肌触りに満ちている。マクミランが描くのは甘美なラブロマンスではない。中世ヴェローナの街の名門が争う封建的・因習的な世界で、若い男女が死をも恐れず一世一代の愛を貫く。いつ接しても切実で、時代を超えて観る者の胸を打つ。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(c) 2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks

■アナ=ローズ・オサリバン&マルセリーノ・サンベの清新な魅力に注目!
世界初演初日にジュリエットを踊ったのは、当時の世界的名花マーゴ・フォンテイン。そして巨匠の初期の創造の源であったリン・シーモア、今なおレジェンドとして踊り続けるアレッサンドラ・フェリといったマクミランのミューズたちがエモーショナルに踊り継いできた。21世紀に入っても数々の名バレリーナが挑んでいるが、このたび上映される舞台に主演したアナ=ローズ・オサリバンのジュリエットも清新で、上演史に新たな一ページを刻んだと思う。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(c)ROH.
オサリバンは英国出身でロイヤル・バレエスクールを卒業後、2012年にロイヤル・バレエに入団した。愛らしくチャーミングで、端正な技術も際立つ。『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2019/20』で上映されたトリプル・ビルの中で、マクミランの『コンチェルト』(音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィッチ)の第1楽章をジェームズ・ヘイとともにリズミカルに踊ったのは記憶に新しい。2021/2022シーズンよりプリンシパルに昇進した注目株である。
オサリバンのジュリエットは、とにもかくにも可愛らしい。マルセリーノ・サンベ演じるロミオと出会う場面では、初々しい少女そのものである。それゆえにロミオとの恋に目覚め、両家の相克を超えて愛し合う大人の女性へと変貌していく様子があざやかだ。そして終幕、自ら果てる姿の、それはそれは哀切なこと。思わず胸が痛くなってしまう。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』(c)ROH.
サンベはポルトガル出身で2019/2020シーズンにプリンシパルに昇進した。2019年のロイヤル・バレエ日本公演では『ドン・キホーテ』の主役バジル役を颯爽と踊り、ラテンの血が騒ぐ快演を見せた。オサリバンとはロイヤル・バレエ・スクール時代の同級生。ふたりのペアリングには定評があるだけに高難度のリフトもスムーズで、観る者はドラマの方へ自然に没入できる。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』 (c) 2019 ROH. Photograph by Helen Maybanks

■カンパニーの結束感、伝統を受け継ぐ気概が生む名舞台!
マクミラン版『ロミオとジュリエット』が欧米などの大バレエ団でも上演されるようになって久しい。そうした中で"本家"の矜持を示すのが、アンサンブルの厚みのある演技であろう。マキューシオのジェームズ・ヘイ、ティボルトのトーマス・ホワイトヘッド、ベンヴォーリオのレオ・ディクソンら選りすぐりのソリストたちが盛り立てる。キャピュレット卿のギャリー・エイヴィスは、ロイヤル・バレエファンおなじみの"名優"で、彼がいれば間違いなく舞台が引き締まる。ロイヤル・バレエのカンパニーとしての結束感が存分に発揮されているという点においても、やはり団の代表的レパートリーであるといわねばなるまい。
ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』.(c)ROH.
『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン』の魅力として忘れてはいけないのが、幕間に入る芸術監督やダンサー、指導者、スタッフへのインタビューそれにリハーサル風景。舞台が成立するプロセスの一端を紹介しつつ、作品の本質が語られる。今回もレペティトゥールのエドワード・ワトソン、プリンシパル・コーチのリャーン・ベンジャミンへのインタビューなど充実。彼らを始めとする指導者やスタッフが総力を挙げてカンパニーの財産を守り、受け継ぐ気概があるからこそ、常に生き生きとした舞台が生まれる。あらためてそう感じた。
【トレーラー】Trailer: Romeo and Juliet (The Royal Ballet, Kenneth MacMillan)
文=高橋森彦

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