北条義時役の小栗旬(左)と八重役の新垣結衣 (C)NHK

北条義時役の小栗旬(左)と八重役の新垣結衣 (C)NHK

【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人
」第13回「幼なじみの絆」異色の主人
公・北条義時を際立たせる三谷幸喜の
巧みな脚本

 「鎌倉に攻めてくる」とうわさされる木曽義仲(青木崇高)の真意を確かめるため、源頼朝(大泉洋)の弟・源範頼(迫田孝也)に従って木曽に派遣された主人公・北条義時(小栗旬)。義仲を待つ間、盟友・三浦義村(山本耕史)と次のような言葉をかわす。
義村「あっちはどうなった? おやじ殿がいなくなって、家督を継ぐのか?」
義時「正直、どうでもいい。俺はいつだって、目の前のことをこなすので精いっぱい」
義村「楽しいだろ? 生きていて」
義時「えっ?」
義村「何が起こるか分からない人生。うらやましいわ」
義時「考えたこともなかった」
義村「俺は当たり前のように家督を継いで、三浦の一族を率いていく。あとはたまに、女をからかって遊ぶぐらいが関の山だ」
義時「俺だって、こんなことになるとは思いもしなかった。あのお方(=頼朝)が、うちに転がり込んできた日から、すべてが変わったんだ」
 4月3日に放送されたNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第13回「幼なじみの絆」で描かれた一幕だ。物語の大筋には関係ないが、このやりとりはある意味、義時の立ち位置を端的に示していると感じた。
 本作の北条義時は、大河ドラマの主人公としてはやや異色の存在だ。大河ドラマの主人公といえば、歴史を動かした偉人が選ばれることが多い。その点では、後に第2代執権として鎌倉幕府の頂点に立つ義時も決して見劣りはしない。
 だが、他の主人公たちが「自分が世の中を変える」という気概や「大切な人や家族、仲間を守る」といった熱意にあふれた個性的な人物として描かれるのに対して、義時には少なくともこれまでのところ、そういった押しの強さはない。亡き兄・宗時(片岡愛之助)の意志を継いではいるのだが、今はただ実直に誠実に日々与えられた仕事をこなしているだけだ。
 頼朝の側近に抜てきされたことが示すように、基本的には有能だが、これといった特徴や際立った個性がなく、物語を引っ張っていく圧倒的なパワーは感じられない。現代に例えるなら、せいぜい「ちょっと裕福な家庭に育った仕事のできるサラリーマン」と言ったところではないだろうか。普通であれば、主人公にはしづらい人物だ。
 ところが、三谷幸喜の脚本は、そんな「平凡な人間」とも言える義時を巧みに主人公として際立たせる。その好例とも言える描写が、この回の重要な場面である義仲との対面でも見られた。
 義仲と面会した範頼は、敵対する意思がないことを知ると、それを頼朝に伝えると約束し、「ただし、条件がある」と続ける。ところが肝心なこの場面で、生焼けの魚を食べた範頼は腹を壊して厠へ駆け込み、ドラマから退場してしまうのだ。
 ここで範頼の後を継ぎ、義仲と話を進めたのが義時。人質を差し出すよう求めると、義仲は「嫡男・源義高(市川染五郎)を差し出す」と応じる。
 不自然な印象を与えることなく、場の主役を範頼から義時へと巧みに交代させ、義時を重要な局面に関わらせていく。しかもそのバトンタッチを、ユーモアあふれるシーンに仕立ててみせる。その手際のいい展開には舌を巻くばかりだ。
 こういった描写を積み重ねることで、平凡な義時が主人公として際立っていく。義時の行動が次々と裏目に出て事態が悪化していった前回の「亀の前事件」は、その最たるものと言えるかもしれない。(なお、スター俳優としての自身の輝きを消して、平凡な義時を演じる小栗の演技が見事であることも一言付け加えておきたい)。
 その一方、この回、数少ない義時自身の意志による行動として描かれていたのが、思いを寄せる八重(新垣結衣)に繰り返し贈り物を届けた一連の場面だ。
 最終的にはその気持ちが通じて、「お帰りなさいませ」と八重から言葉を掛けられるという、ささやかながら幸福感あふれるクライマックスを迎えた。そういう義時本来の個性は、これからドラマにどう生かされていくのだろうか。
 平凡な義時を主人公として際立たせつつ進展する歴史の大局と、八重とのやり取りなどから垣間見える義時自身の個性。三谷脚本はこの二つの要素をいかに絡ませて義時を鎌倉幕府の最高権力者に押し上げていくのか。その手綱さばきにも注目したい。
(井上健一)

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