3年ぶりの『PANA FES 2022』を地元、
神戸で開催ーー横浜へと想いをつなぐ
Panorama Panama Townと仲間の情熱

『PANA FES 2022』2022.4.9(SAT)神戸・Harbor Studio
4月9日(土)神戸・Harbor Studioにて、Panorama Panama Town(以下PPT)主催の『PANA FES 2022』が行われた。本イベントは、PPTが結成翌年の2015年から、毎年地元神戸で開催してきた自主企画。PPTにゆかりのあるアーティストをブッキングし、これまでに4回サーキットイベント形式で開催してきた。2020年は初めて神戸を離れ、日比谷野外音楽堂で『パナフェス2020 TOKYO』を行う予定だったが、コロナの影響でやむなく中止に。その後もコロナの壁に阻まれたが、3年ぶりのカムバック。今回はサーキット形式ではなく、神戸と横浜のライブハウスでの開催となった。神戸会場の出演者はSLMCT、 S.L.N.M、ナードマグネット夜の本気ダンス、そしてPanorama Panama Town。サブステージにはカーミタカアキとDJ Sick Boyが登場した。横浜へのパナフェス上陸は4月16日(土)、YOKOHAMA Bay Hallにて。今回SPICEでは、『PANA FES 2022』神戸公演の様子をいち早くレポート。PPTへのリスペクトと愛、友情に溢れた夜をお届けする。
DJ Sick Boy
オープンと同時にDJ Sick Boyが音楽を流しフロアをあたためる。お酒やドリンク片手に楽しむオーディエンス。ちなみにこの日の転換中のBGMには、過去のパナフェスに出演したアーティストの音楽が流れていた。これは、来てくれた人たちが過去のパナフェスを振り返ったり、新しい音楽との出会いのキッカケになればと、PPTのメンバーが願いを込めたものだ。
15時になり、Panorama Panama Townがステージに登場して開会宣言。3年ぶりの開催であることの喜びを口々に述べ、岩渕想太(Vo.Gt)が「本当に良い日にしましょうね! 良い日になりそう! という予感だけ持っておいてください。皆が思ってればなると思うので。いつものライブとは一味違うぞという意識を持ちながら、精一杯楽しんでもらえればと思います!」と述べて『PANA FES 2022』(以下、『パナフェス』)は幕を開けた。
SLMCT
SLMCT
トップバッターは神戸のSLMCT。轟音のSEが流れ、ステージには機材を彩るネオンがスタイリッシュに光る。小川悟(Vo.Gt)がよく通る鋭い声で「Decade」を歌い始め、爆発力のあるサウンドが一気に広がる。個人的に彼らのライブを見るのが結成当初ぶりだったため、楽曲のエッジーさ、サウンドの力強さ、パフォーマンスの男っぷりが遥かに上がっていて驚いた。上羽一志(Dr)はレギュラー・グリップで激しいリズムを叩き込み、島田将羅(Ba)は躍動感たっぷりにプレイ、小川はステージを斜めに突っ切り全力で演奏し豪速球のステージングを見せつける。「Flashback」「TALK」と立て続けにドロップ。帰国子女の小川による流暢な英語詞が耳に心地よく、フロアは一心に体を揺らして手を挙げる。大平 “王将” 雅樹(Gt.)は時折恍惚とした表情でギターを鳴らしていた。
SLMCT
MCでは興奮したように小川が「いよいよきました! なんと唯一、『パナフェス』SLMCTが皆勤賞らしいです!」と笑顔で話す。そして彼らが初期に出演した初回の『パナフェス』の思い出を語る。「1番下手くそなバンドですと、自分たちで認めるような酷いライブをした」と小川。その悔しさを忘れないため、当時のフライヤーをずっと部屋に貼っていたという。「今回たった5バンドしか出ないパナフェスに呼んでもらって、今まで負けずに頑張ってきたことが少し報われた気がしてめっちゃ嬉しかった。今日は友情枠じゃなくて、ちゃんと実力でライブに誘われたんだってことをステージで証明しに来ました!」と気合いを口にし、後半もその想いを体現するかのようにソリッドな演奏をキメまくる。磨き上げられたパフォーマンスが彼らの努力の証を物語っていた。「Apartment」「I’ m Going Home」ではサックスがジョイン。サウンドに彩りを加え、さらに会場を高揚の渦に巻き込んでゆく。PPTの「King’ s Eyes」のフレーズを交える場面も。もうあの頃の俺たちはいない、と言わんばかりの頼もしさと成長ぶり、実力をしっかりと提示して、バトンを繋いだ。
SLMCT
カーミタカアキ
カーミタカアキ(ULTRA CUB
メインステージの転換中、DJブース前のサブステージでは、カーミタカアキ(ULTRA CUB)の弾き語りライブが行われた。PPTとも長年の付き合いで仲の良い後輩だと語り、アコギを奏でる。女子に勝手な理想を抱いてこじらせた男子の胸中を歌に乗せた「あの娘がセックスしてるなんて俺は絶対信じない」や、失恋ソング「君の彼氏になりたかった」と、MCで自身の体験談を語りつつULTRA CUBの楽曲を披露。自虐を織り交ぜたネタのような話と、情緒豊かな歌声には惹きつけられるものがあり、オーディエンスはフロアに三角座りして、カーミの歌声に耳を傾けていた。そして、岩渕からの熱烈オファーでこの後の「フリースタイル嘘話(その場でお題を3つもらい、即興で嘘の面白い話をする)」にも出演するとアナウンス。カーミは「パナフェスの底の底を見せつけてやります。楽しみにしといてください。いや、楽しみにしないでください」(ガヤから「どっちやねん!」と突っ込まれる)と宣言して全4曲を披露し、ステージを終えた。
S.L.N.M
S.L.N.M
続いて、空きっ腹に酒のユキテロ、memento森の慧、にゃおみの3MCと、インダストリアル・ノイズ系ビートメイカーのShin Wada(UZMK/iLU)によって結成されたS.L.N.M(サルノメ)が登場。1曲目の「Forgod」では、紅一点のにゃおみ(MC)を挟み、ユキテロと慧が両サイドから高速フロウを叩き込み、S.L.N.Mワールドに巻き込んでゆく。慧が「調子どうですか神戸!」ユキテロが「いけてんなら手挙げてくれ!」と叫ぶと一斉にハンズアップ!「遊びに来たんやろうが!」と、まくし立てるようにフロアを煽りまくり、「AGURA」を投下。ほぼ動かず、クールビューティーな歌声を奏でるにゃおみと、思いっきりステージを動き回る慧とユキテロ。そして曲を支えるShin Wadaのビート。目の前で起こる唯一無二の化学反応についていくだけでやっとだ。ユキテロが「夕方16時にやることちゃうで(笑)」と言うほどディープな熱狂を見せたフロア。さらに「swipe!!!!」「My life」を続けざまにドロップ。
S.L.N.M
数年前の『パナフェス』でユキテロと慧、PPTの岩渕、SLMCTの島田の4人でフリースタイルを披露したという思い出を話し、「俺は神戸代表と思ってやってます。岩渕、PPT、悪いけど神戸に俺がおるから、頑張って背中追い抜いてください。We are S.L.M.N!」と宣戦布告する慧。「第六感」に続き、アンダーグラウンドな「GENT」、MC3人がマイクをスピーディに捌いて無敵感を感じさせた「娑婆にさらば」を経て、ラストは「盛り上がれる奴どんだけおんねん!」と「擬音」を投下! 慧は迫力のデスボイスでシャウト。しっかり余韻と爪痕を刻みつけたステージだった。
S.L.N.M
ナードマグネット
ナードマグネット(須田亮太)
本当ならばバンドでの出演だったが、さえこ(Ba)の体調不良により、急遽、須田亮太(Vo.Gt)の弾き語りに変更となったナードマグネット。1人ステージに登場した須田は「ギリギリまで何とかバンドでできないかという道を探ってたんですけど、なかなかうまくいかず、家にアコギを取りに帰る時間もなく、バンドで使う予定だった機材で僕が1人で歌うことになりました」と状況を説明。さらに「人の事情はわからないものですからね、僕だってあなたがどんな人生を歩んだ上で今日ここに集まってるのかもわからない。だからこそゆっくりお話しをするところから始めていきませんか」と、エレキギターの弾き語りで「僕は知らない」を演奏。透明感のある歌声がまっすぐに飛び込んでくる。続く「HANNAH / You Are My Sunshine」では、高く天井に吸い込まれそうな高音が響き渡る。力強い声量はさすがだ。ギターだけのシンプルな演奏だからこそ須田の歌声がハッキリと引き立ち、バンドサウンドとは違った面を見せてくれた。
ナードマグネット(須田亮太)
途中のMCでは、本来やる予定だったバンドセット用のセトリを持ち出し「バンドならではの曲ばかりセレクトしてしまってほとんどできません。(セトリ)欲しい人いますか」と配布してファンを喜ばせる場面も。ポップな「アフタースクール」の後は初期の名曲「チェイシング・エイミー」や「キャロライン」でしっとりと聴かせた。実は2018年の『パナフェス』で肋骨を骨折した須田。その時を回想し「すぐに病院に担ぎ込まれて、パノパナのライブ見れてないので、今日は最後まで楽しみたいと思います」と「ウェンズデイ」を経て、ラストの「THE GREAT ESCAPE」を披露。バンドでのリベンジを誓い、須田の弾き語りは幕を閉じた。
フリースタイル嘘話
フリースタイル嘘話
お待ちかねのフリースタイル嘘話では、カーミタカアキ(URTLA CUB)が再び登場。サブステージの後ろでは、バンド仲間たちがガヤガヤとカーミを見守る。カーミ曰く「ウケたことない」「大舞台であればある程大失敗する」と豪語(?)していたのだが……。「Twitterのスペースで聞いて、めちゃめちゃ面白くて楽しみにしていた」という岩渕から「パナフェス・恩師・2会場」、客席とSLMCT島田から「スプリングバレー・新開地・まぼろし」というお題をもらって嘘話を2本披露。ここぞというタイミングで、タノアキヒコ(Ba)がアークティック・モンキーズの「Brianstorm」を掛けたり、何だかんだで盛り上がり、大きな拍手が贈られた。「来年もやりたいな」とのことで、『パナフェス』の新たな名物コーナーが誕生した瞬間に立ち会えた(かもしれない)。来年も是非楽しみにしておこう。
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
トリ前を飾るのはサウンドチェックから盛り上がりを見せていた夜の本気ダンス。SEが流れるなりクラップが一斉に沸き起こり、「京都のバンド、夜の本気ダンスです。よろしくお願いします!」と米田貴紀(Vo.Gt)が叫ぶと早くも会場はヒートアップ。米田がハンドマイクでステージを跳ねまわった「Ain’ t no magic」、マイケル(Ba)のベースが火を吹いた「Feel so good」で会場の温度をぐいぐい引き上げてゆく。勝手に踊り出してしまうダンスロックにフロアは大興奮。コロナで長らく見ることができなかったライブハウスのノリが感じられ、思わず感動してしまった。
夜の本気ダンス
ライブではパワフルで最高にクールなドラムプレーで魅了する鈴鹿秋斗(Dr)が「今日はよう見えるわ皆のことが。ギンギンに見えますわ後ろの方まで。それは会場の広さとかじゃなくて、物理的に皆が今日ここに集まってくれたからよう見えるという話です。来てくれてありがとう!」と陽気に盛り上げる。
後半戦も猛攻は止まらない。西田一紀(Gt)が華麗に足を開いてギターソロをキメた「LOVE CONNECTION」に続き「SMILE SMILE」「Magical Feelin’ 」と、メロディアスながらクールで、ご機嫌をさらに加速する楽曲を連投し、オーディエンスを熱狂に導いてゆく。米田が「楽しんでますか『パナフェス』」と問うと、フロアからは言わずもがな大きな拍手が。米田は「僕、パノパナめっちゃカッコ良いと思ってて。バンドしてなかったとしてもファンやなと。もしかしたらそっち側に僕がいる世界線もあったなと思う」と、PPTへのリスペクトを語る。ラストはライブアンセム「WHERE?」、そして「GIVE & TAKE」で最高潮の盛り上がりへ。スター感と実力はさすがの一言。新旧織り交ぜたセットリストで会場の一体感と熱量を最大限まで引き上げた、はちゃめちゃにカッコ良いライブだった。
夜の本気ダンス
Panorama Panama Town
Panorama Panama Town
SEが流れ、いよいよ大トリPanorama Panama Townが登場。「お待たせ!」と岩渕。3人の表情からやる気が伝わる。1曲目の「MOMO」を勢いよく投下すると、イントロからフロアの手が一斉にアップ! 岩渕の早口ボーカルが弾け、浪越康平(Gt)のギターソロがバッチリキマる。高速クラップを掲げたまま「100yen coffee」のグルーヴで会場を熱を上げてゆく。さらに息つく間もなく「Algorithm」をプレー。ゴリゴリのロックサウンドが会場の空気を激しく震わせる。岩渕は叫ぶように歌い、浪越は悠々とした中にも熱さが垣間見えるギターをかき鳴らし、タノアキヒコ(Ba)も頭を大きく振りながら指先からビートを繰り出す。
Panorama Panama Town
自己紹介ソング「パノラマパナマタウンのテーマ」では岩渕が「本当に集まってくれて、最後まで残ってくれてありがとう! 3年前、日比谷野外音楽堂にちょっと浮気したこともあったんですけど、パナフェス神戸に戻ってきました。その節はすみませんでした。3年越しのパナフェス最後まで良いステージにしたいと思いますのでよろしくお願いします」と語り、BPMを落としてゆるりと小休止。
Panorama Panama Town
しかしそこから一転、再び爆音で一気に加速。「氾濫」で轟音をとどろかせる。岩渕の問いが詰まった「King’ s Eyes」、the telephones石毛輝がプロデュースした「Strange Days」と続けてドロップ。<頭が揺れる>に合わせて、全員がヘドバンをする。「SO YOUNG」では、岩渕が魂を込めるように叫びながら声を張り上げる。これまでのPPTの歩みと積み重ねてきたものがエモーショナルに輝いた瞬間だった。「本当に今日出てくれた皆さんありがとうございます。やっと迎えることができました『パナフェス』。俺たちの大好きなフェス、やっと開催することができました。何を言ってもなんか野暮な感じになりそうな気がする(笑)」と感謝を述べる岩渕。
Panorama Panama Town
後半、「Rodeo」はこの日1番の盛り上がりを見せた。フロアが待ってましたと言わんばかりにテンション高く食らいつき、メンバーも爆速爆音で駆け抜ける。ライブができる喜びを全身で表現しているかのように目をキラキラさせて演奏するメンバーの姿は本当にカッコ良かった。さらに「Faceless」をパワフルに投下! 比較的新しい曲が多かったのは、新生PPTの現在地をしっかりと示したかったからだろうか。

Panorama Panama Town

アンコールでは、この日出演した全バンドの楽曲をPPTがカバー。それぞれのボーカルをゲストに招き、メドレー形式で披露していった。この特別な時間に会場は多幸感に包まれる。弾き語りだったナードマグネットの須田は「バンドサウンドやー! 嬉しい!」と子どものようにジャンプして楽しそうに歌っていた。どの曲をカバーしたかは、PPTのYouTubeで公開されているので是非チェックしてみてほしい。
Panorama Panama Town
「皆さんありがとうございました! 来年、新開地で『パナフェス』、やりたいっすね! やります!」と、フリースタイル嘘話の伏線を回収。そして「規模がデカくなるわけじゃないですけど、ロマンをデカくしたいです。これからも『パナフェス』よろしくお願いします! 」と岩渕が締めくくった。最後は「いい趣味してるね」を全身全霊渾身のパワーで叩き込み、PPTのライブは終了。ずっと模索し続けようやく叶った3年ぶりの『パナフェス』。地元・神戸で開催できることも、PPTにとっては大きな意味がある。リラックスしたように笑顔を浮かべるメンバーの表情からそのことがよく伝わってきた。
Panorama Panama Town
Closing DJでは、SLMCTの島田がフロアをもうひと盛り上げ。次は今週4月16日(土)横浜・Bay Hallでの『PANA FES 2022』が待っている。出演者は鋭児The Songbards、PELICAN FANCLUB、Helsinki Lambda Club、Bentham、Panorama Panama Townが出演。そしてサブステージにはDJ 片平実とDJ Sick Boyが登場する。神戸とはまた違った顔ぶれで、どんなステージが繰り広げられるのか。PPTが育ててきた大切な大切なイベント。これからも続いていくことを切に願う。
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=渡邉一生

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