三遊亭仁馬×春雨亭昇りん×昔昔亭昇
~新機軸を打ち出し続ける新時代のユ
ニット「ルート9」チーム・リーダー
座談会

活動開始は2021年春、一緒に前座修行をしてきた落語家と講談師によって結成された若手ユニット「ルート9」は、メンバーが3チームに分かれて勝敗を競い、勝者はギャラ総取りという斬新な会。身動き取りにくいコロナ時代でも小さくまとまらず、次々と遊び心とアイデアにあふれた新機軸を打ち出し続けており、メンバーも個性派揃い、注目しない理由がない! 結成秘話、それぞれの戦い方について、そしてメタバース(仮想現実空間)に参入するというシーズン2の見どころについて、各チームのリーダー(三遊亭仁馬、春雨亭昇りん、昔昔亭昇)が語り合う。
(左から)三遊亭仁馬、春雨亭昇りん、昔昔亭昇

■動画がバズり「絶対にスベれない」戦いがスタート
――若手落語家8名&講談師1名によって結成された「ルート9」は、昨年4月に活動をスタートしました。ユニット内でさらに「3(three)」(メンバーは笑福亭茶光、昔昔亭昇、春風亭昇咲)、「メガネちーむ」(同 春雨や晴太、三遊亭花金、春風亭昇りん)、「さば弁」(同 春風亭弁橋、神田桜子、三遊亭仁馬)の3チームに分かれ、集客数、グッズ売り上げ、YouTubeのイイね数で順位を競い、新しい形の会として話題となっています。本日は各チームのリーダーである御三方に集まっていただきました。まずは結成までの経緯から伺えますか。
昔昔亭昇​(以下、昇) 僕たち3人は、2016年5月に楽屋入りをしたまったくの同期なんです。前座修行中からみんなで勉強会をしたいって相談はしてたよね?
三遊亭仁馬(以下、仁馬) 「ルート9」につながるようなコンセプトの話は、前座時代すでにしてたと思う。
昇 「新しいことやりたいぜ」「ポイント制なんて面白いんじゃね?」ってベロベロに酔っぱらいながら(笑)、いろんな話をした記憶があります。当時僕はすでに今の「3」のメンバーと一緒に落語会をやっていましたし。
――なるほど、同期飲み会からアイデアの種が生まれ、さらに芸歴の近いお仲間で集結したと。スタート直前の3月、突如SNSで流れ始めた宣伝映像(下記)は、皆さんが所属する落語芸術協会の先輩である神田伯山さんや桂宮治さんをはじめ売れっ子の先輩たちがYouTubeやTwitterで「これはいける」「未来を感じる」と“いじった”効果もあり(笑)、大いにバズりました。
【動画】ルート9始動。(落語芸術協会若手ユニット)

昇 ありがたいの一言ですよね。あの動画は半年以上前、2020年の夏にはすでに撮り終わっていて、実は配信するまで随分と寝かせたんです。
仁馬 本当は昇咲さんの前座修行が終わる2020年9月、つまりメンバー全員が二ツ目に上がったタイミングでスタートしようとしてたから。
昇 でもコロナで大変な世の中になって、スタート時期を半年伸ばすことになった。準備万端なのに、冬場にかけてどんどん感染者数が増えていって……おそらくあの時期「もうできないかも」って諦めはじめたメンバーもいると思う。どうだった?
仁馬 うん、一時は企画自体がお蔵入りになっちゃうと思った。
昇 どこまで延ばせば安全なのかも見えないし、延ばせば延ばすほどみんなのモチベーションも下がっちゃう。だけどやっぱりやろう!と決めて宣伝動画を上げたら、諸先輩方が応援してくれて、思った以上の反応がいただけた。ありがたかったですね。「これはちゃんとやらないとまずい」と、あそこで全員のギアが入った気がします。
春雨亭​昇りん(以下、​昇りん) 二ツ目になったばかりでコロナ時代に突入し、活動しづらい中であの反響だったから、大きな後押しだったよね。
――多くの舞台が中止となってエンタメ界全体が沈んでいた時期だったので、「新しいことを始める人たちがいるのか、若手はエネルギーがあるなあ!」とワクワクしました。しかも興味を引く情報解禁リリース映像やPVなどスタート当初から「今」を感じる宣伝戦略も効いてましたし。9人がそろう旗揚げ公演も即チケット完売でした。
【動画】ルート9 PV (落語芸術協会若手ユニット)

【動画】ルートナイン始動OP映像

仁馬 何も始まってないのに期待されている空気を感じて、「これは絶対にスベれない……」と思いました(一同笑)。
昇りん メンバーの中に晴太兄さんという映像に強い人、そして桜子姉さんというデザインが得意な人がいたのが大きいですね。あとは9人中たった一人、天性の目立ちたがり屋である昔昔亭昇がいてくれたのがデカいなと。
――通常こういったユニットは一番先輩がリーダーですが、香盤(序列)が下の方の皆さんが各チームのリーダーで、全体リーダーは昇さん。個人業の方たちの集まりですし、先輩たちの意見をまとめるのは大変ですね。
昇 よくぞ聞いてくださいました。やりにくいんですよ!(笑)
昇りん まあでも、“やりたがり”こそがリーダーにふさわしいですから。それに、昇が「これがやりたい」「こうなりたい」っていう目標を高く設定してくれるんで、その分上を目指せる気はします。手堅く現実的なことを考えると普通、低い設定になっちゃうから。
昇 彼は今、非常にイイことを言いました(笑)。
仁馬 目立ちがり屋に、先輩が合わせてくれてるんじゃない?(笑)
昇りん 先輩方がまた優しいんですよ。「ええよ、ええよ、かまへんで」って。
昇 関西弁の先輩、茶光兄さん一人だけど(笑)。でも、先輩後輩だから意見が言いづらいって環境じゃないのは、すごくいいよね。

■業界初! シーズン2の目玉はメタバースでの演芸会
――年間通しての1位は昇さん率いる「3」でした。数字で結果が出るのはシビアですが、観客としてはやっぱり順位が出るのはドキドキして楽しい。これによって決定的に無数に世に存在する若手の勉強会と差別化されました。ドキュメントを見るような手に汗握る感じは観客の応援する気持ちも盛り上がるでしょうし、勝者がギャラ総取りというルールもゲームとして面白いです(笑)。
昇 中間発表と最終結果発表で順位が出ましたが、全員があそこで「ああ、これは勝ちたいわ」と実感したと思うんですよ。発表まではどういうことになるか想像できてなかったというか、「企画として楽しもう」みたいな余裕もあったと思う。でもどこかのチームが本気になったらついていくしかないですから。最終結果発表が終わった後の空気はシビれましたね。
昇りん 最下位がいうのもなんだけど、落語って数字だけじゃその成果がはかれないもんだからね。順位とか気にしないで裏に裏に行くのが「メガネちーむ」だからさ。
昇 そういうことを言っているチームに、絶対に負けるわけにはいかないんですよ!!(一同笑)
――昇りんさん率いる「メガネちーむ」はひねりの効いたYouTube配信、コーヒーやドライフルーツといったグッズのユニークさなど、「あ、戦いとかじゃないのかな?」と思わせるマイペースさがクセになるお客様が多いかと(笑)。「さば弁」は中間発表で最下位だった悔しさをバネに、最後グングン追い上げてゲームを大いに盛り上げました。そうした“それぞれの戦い方”を見るのも面白いです。メンバーの魅力を、各リーダーから教えていただけますか?
昇 では「3」から。最若手の昇咲さんの落語には、今の笑いのセンスが詰まっています。オシャレで、背も高くて、今後ファンも増加するんじゃないでしょうか。茶光兄さんはユニット唯一の上方落語家で、お笑いコンビ「ヒカリゴケ」で活躍した後にこの世界に入ってきた方。場数が僕たちとは違うので、抜群の安定感です。家庭ではいいパパですし(笑)。僕に関しては、一番元気で声が大きいと思います!
3(three)(写真左から笑福亭茶光、昔昔亭昇、春風亭昇咲)
――「3」はメンバー全員が古典も新作も手がけ、漫才やコントなどお笑いライブが好きな若い観客も入りやすい。現代性の高いポップな笑いは間口の広さを感じます。「メガネちーむ」はいかがでしょう。
昇りん 何を考えているのかわからない晴太兄さんはトリッキーな存在ですが(笑)、落語はきちっと聴かせる。そのギャップがイイというファンが急増中です。ミーティングでは全員の考えが凝り固まっている時に、スッと動き出せるような一言を言ってくれる頼もしい兄さんでもあります。花金兄さんは、「落語サイボーグ」と呼ばれていまして、正統派な高座はもちろん、大喜利も謎かけもうまい。何でもできるスーパーマンです。僕は新作派として活動していて、こんな3人でケミストリーを起こしているチームです!(一同笑)
メガネちーむ(写真左から春雨や晴太、春風亭昇りん、三遊亭花金)
―― “古典派”と一言で言えない個性の晴太さんと花金さん、練られた新作の昇りんさんによる「メガネちーむ」は独特のユーモア精神があって、男子の秘密基地感が楽しいです。三題噺をする落語会も定期的に開催していますね。では「さば弁」お願いいたします!
仁馬 まず講談界のポップスター桜子姉さんですよね。(戦記などを語る)講談師だけに戦好きで人一番負けず嫌いの姉さんを、とにかくプレイヤ―として尊敬しています。弁橋兄さんは一番香盤が上だけど、年齢は一番下。高校を卒業してすぐにこの世界に入った人は、迷いがない強さがある。狙っていない天性の魅力があって、まるで名人みたいな高座の上がり方をして、最終的には「可愛い」みたいなことになってズルイです。
昇りん 着地点でほめてないよ。
仁馬 すごいと思ってるわけよ。
さば弁(写真左から春風亭弁橋、神田桜子、三遊亭仁馬)
――「さば弁」は愛されキャラ揃いで、観客の「この子たちを応援したい!」という熱量が客席に座っていてもビシビシ感じられます。……気恥ずかしいかもしれませんが、同期同士でお互いのレコメンドもしていただけますか?
昇りん 仁馬はユーチューバーか?ってぐらい自分のYouTubeチャンネルで動画を上げていて、精力的ですごいんですよ。三遊亭圓馬師匠の“イズム”も強く受け継いでいる気がしますし。
昇 「圓馬師匠みたいになるんだ!」って強い意志が1年目から見えたし、進む方向が明確に見えている凄さ、濃さを感じますね。
仁馬 あざっす!
昇りん まあ、あえてダメ出しすると……。
昇 いやいや、仁馬コーナーこれでよくない?
昇りん じゃあ昇は……いますごく調子がいいんですよ。だからこれ以上調子に乗らせないためにも、あんまほめたくない(笑)。でもあえていうなら、テンポ感。落語はやっぱり音で聴くものなので。
昇 いいね、このやりとり。ムズムズするけど、嬉しいね(一同笑)。昇りんは、芝居・映画・本、常にいろんなことにアンテナを張っていて、新作はどこにも矛盾がない、最初から最後まで、短編小説のように作り込まれた新作が作れるヤツです。
昇りん あざっす……どうですか? 同期が褒め合うの、気持ち悪くないですか?
――友情を感じる時間でした(笑)。3月には落語芸術協会会長・春雨亭昇太師匠をゲストに招いたフェスも開催されました。2時間超、盛り上がり続けて楽しかったですね。
昇 僕がトップで35分もやっちゃって、ほんとすいませんでした! 楽屋に帰った瞬間の昇りんの顔が忘れられない……。
昇りん 昇の高座中ずっと、「治りにくい口内炎できろ!」と思いながら時計を見てたよ(一同笑)。
昇 ほんと申し訳なかった! でもね、俺は本当にあの高座、楽しかったのよ。
昇りん・仁馬 そりゃ楽しいだろうよ!
――最後に、シーズン2の見どころ、意気込みを教えてください。
昇 まずはメタバース(仮想現実空間)でしょうね。「cluster」(スマホ、PC、VR機器など様々な環境からバーチャル空間に集って遊べるアプリ)を利用した企画が今回の目玉です。先日フェス後に開催した「打ち上げ」で初めてお客さんに参加してもらったけれど、これは新たな手応えを感じました。
【動画】[業界初!!] メタバース(仮想空間)に寄席を作る!produced by 「Root9」

――参加しました! ワチャワチャしたイベントに行く抵抗感がある今、アバターを使ったバーチャル空間で、さっきまで同じ会を見ていた人たちと集まる新感覚にワクワクしました。
昇 本当に、みんな試しに一度参加して欲しいです。僕たちはここに寄席空間のようなものをつくって、会が開催できないかなと考えていて。いろんな可能性が広がっていると思います。今のところ全然バズってないけど(笑)。
昇りん 二ツ目時代のいいところは、失敗をしてもいいところ。たとえ失敗で終わったとしても、「あの兄さんたちメタバースまで手をつけてた」と後輩が僕たちの活動をステップにしてもらえたら。あとは、やっぱり動員を増やしていきたい。個人個人の集客力にもつなげていきたいし、やっぱり一人ひとりの高座のクオリティですから。去年ひと通りのネタは出し尽くしたので、力が試される1年になると思います。
昇 使える武器は全部出しちゃったから、あとはオンボロの銃しかないぞ、どうする!?みたいな(笑)。
仁馬 こうして定期的に9人が揃う会をやってると「こいつが一番面白くないと思われたくない」っていう日が頻繁にやってくるじゃない? 次までに何か捻り出さなくちゃと気合が入るし、強制的に成長せざるを得ないところはあるかもね。
昇 仲良しだけど本気のプロレスだから。あとの抱負は健康ですね!
昇りん え? こんなにいろんなこと言って、最後に健康?――(笑)皆様健康第一で、シーズン2も楽しませてください。まずは4月24日、9人全員出演のオープニングを楽しみにしています!
二ツ目は落語家の青春時代。写真左から昔昔亭昇、春風亭昇りん、三遊亭仁馬(text by Jinba)
取材・文:川添史子

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