我儘ラキア・ロングインタビュー<前
編>、新たなフェイズに突入した日本
一カッコいいアイドルの今に迫る

昨年は豪華作家陣を起用した『WAGAMAMARAKIA』『SUPERIORITY』という2作品のリリース。さらにはSTUDIO COAST公演を含むキャリア最大規模のツアー『WAGAMAMARAKIA TOUR』、初となるZEPP東名阪公演を含むツアー『SUPERIORITY TOUR』の大成功と、確実に勢いを加速してきた日本一カッコいいアイドル・我儘ラキア。そんな彼女らが選択したのは、原点に立ち返り自らで生み出し、既に最高傑作との呼び声高い新曲「GR4VITY G4ME」携えた、過去最大の強敵たちを迎えての対バンツアー『WAGAMAMARAKIA “W” TOUR 2022』だった。確実に新たなフェイズに突入している我儘ラキアに、ツアー直前の今約1万2千字のロングインタビューで迫る。
――4月20日、新曲「GR4VITY G4ME」が配信リリース。4月23日からは、全国5箇所を回る対バンツアー『WAGAMAMA RAKIA “W”TOUR 2022』がスタートする、我儘ラキア。まずはSPICE主催として3月22日に開催させて頂いた、奈良育英高校軽音楽部STとの対バンライブ『Link by music supported by SPICE』のお話からお聞きしたいのですが。高校生との対バンを振り返って、いかがでしたか?
星熊南巫:これはライブをやる前から思っていたことだったんですが。若さゆえの美しさとか、鋭いけど淀みないパワーとか、大人になって失ったものをいっぱい持ってるなと思って。自分はそれを無くしていないと思ってたけど、彼女らが演奏している動画を観た時に、「あ、ヤベェ。失ってるわ」と思ったんです。若い子が持ってるパワーやエネルギーというか、「頑張ってます」なんて言ってないのにすごい頑張りが伝わってきて、泣きそうになっちゃうあの感じがあまりに美しくて。一緒にライブをやってそれを生で喰らった時、プロの人の凄い演奏を聴いた時に「ヤバッ!」と思って出てくる涙とも違うけど、それと同じくらいのパワーやエネルギーに涙が出て。自分が浄化されたような気分になりました(笑)。
――僕もライブを観ながら涙がこぼれてきたんですけど、純粋を目の前に突きつけられた時のあの感覚は言葉で説明出来ないものでした。
星熊:そう。彼女たちはただ必死に真剣にやってるだけなのに、自分が知らないうちに失っていたものを突きつけられた気がして。「あ、大人になったら、この光景をこういう風に感じるんだ」と思ったし。自分が高校生だったら「私の方が上手く歌えるな」とか思ってしまうかも知れないけど、上手い下手じゃない、いまの自分に無いものを持ってることに気付かされたし。「とにかく凄い!」って、二重に食らった感覚がありましたね。
――MIRIさんは「私が高校生くらいの頃のラップにすごい似てる」とコメントしていましたが、高校生のライブを観てどう感じましたか?
MIRI:彼女たちのステージにフレッシュさだけでなく、良い意味のトガリがあるように感じて。あの子たちは私たちを喰うくらいの気持ちで本気でライブをやっていて、それがすごく良かったし、すごく新鮮でした。私も中高生の頃はすごいトガッてたから、「プロなんかに負けないし!」じゃないですけど、歌声にそんな気持ちが出ているのが分かったし、すごい自信も感じました。あと、彼女たちとセッションした時、初めてイヤモニでクマ(星熊)以外の声を聴いたのが、めちゃくちゃ新鮮で。私も凄いパワーをもらいました。
星熊南巫
MIRI
――高校生が、礼儀をもって遠慮はしないって姿勢でぶつかってきたのがすごい良かったですよね。ライブで「若さでは勝てへんからさ。パフォーマンスで勝つしかない」と言い切っていた、川﨑さんはいかがですか?(笑)
川﨑怜奈:あはは。高校生というのは知ってましたけど、会ってみると本当に若いし、ピチピチしてるし。若いだけじゃなくて、ラキアを喰ってやろうって気持ちや目の力をめっちゃ感じて。私も高校生の時は真っ直ぐな気持ちでステージに立ってたから、それを思い出したし。ステージに対する負けないぞって気持ちや、若さゆえの勢いもあるから、「これはヤバイ」と思っちゃったんです。それで本番前にスイッチが入って、「絶対に譲れない!」って気持ちが出てきたんです。だから、彼女たちのステージにあの頃の気持ちも思い出したし、思い出したからこそ絶対負けないって気持ちがありました。
――海羽さんは高校生とライブやってみていかがでしたか?
海羽凜:私は色んなアイドルさんやバンドさんと対バンすることはあるけど、高校生と対バン出来ることなんてなかなかないから、すごい貴重な経験になると思ってワクワクしてたんですけど。普段、高校生のバンドと一緒になることなんてないから、彼女たちが挨拶ひとつにしてもライブにしても、すごく丁寧で真面目なことに驚いて。彼女たちの人間性やキラキラさにも刺激を受けたし、「自分が高校生の頃、彼女たちみたいにちゃんと出来てたかな?」と思った時、必死になれるものがあることの大切さを思い知らされたし。一緒にやれて、本当に良かったです。
――高校生から受けた刺激で、今後のラキアに活かせそうなことってありますか?
星熊:めっちゃシンプルやけど、“初心忘るべからず”って気持ちですね。活動していく中で、「もっと売れたい」とか「もっと稼ぎたい」とか、欲や邪念が出てくるものですけど、彼女らにはそんな気持ち無いじゃないですか? 彼女たちを見て、「自分も音楽が好きでやってたはずなのに、そういう気持ちを持った汚い人間になりかけてたな」と思った時、「もっともっと音楽を楽しもう」というのを改めて思いました。それと同時に、「逆にこの子たちに何を与えられるんやろう?」とか、「自分たちは人間としてどれくらい出来てるんだろう?」と思って。高校生の時に受ける影響ってすごくデカイと思うし、そんなターニングポイントに立ってる彼女らとライブして、何を与えられたかな? って考えて。もっと考えられる人間になっていこうと改めて思える、良い機会を与えてもらえました。
――うん、彼女たちにも良い刺激を与えられたと思いますよ。「「SURVIVE」に込められた想い、生きる力を奈良育英にしか出来ないやり方でどうしたら伝えられるか? を考えた」と話してましたが、あれは決して綺麗事じゃなくて、本気で言ってる言葉でした。
星熊:全てが美しいですよね、ジブリみたい(笑)。彼女らに『もののけ姫』みたいな、淀みのない命の綺麗さみたいなものを感じます。自分の歌ってる“生きる”っていうテーマ感は“それでも生きる”ということで……あれ何やっけ? ジブリの動くお城のやつ。
MIRI:『ハウルの動く城』?
星熊:そう(笑)。同じジブリでも『ハウルの動く城』みたいな感じで、邪念がまとっているのを振り払って生きていくってイメージなんですけど。彼女らは『もののけ姫』みたいな高次元なところで“生きる”ってテーマを捉えてて。私たちと彼女らのその混じり合いも面白かったなと思います。
――いま星熊さん、すごい良いことを言ったなと思って。彼女らが思う“生きる”と大人になって思う“それでも生きる”って、似て非なるものなんですよね。
星熊:全然違うと思います。大人になると“それでも”って言葉が付いてきて。彼女たちのようなただ真っ直ぐな“生きる”を目の当たりにした時、逆に影響を受けるっていう。
我儘ラキア
――僕が新曲「GR4VITY G4ME」を聴いて感じたのもそこで。星熊さんがこの曲で歌いたかったテーマって“それでも生きる”ってことですよね。
星熊:まさにそうですね。プロデューサーの小山さんに「我儘ラキアの王者感とか、強さをもう一度表して欲しい」というテーマを与えられて、いろいろ書いたんですが。歌詞の内容に関しては、「思いやりが大事」とか「みんなで手を繋いで」とか言うくせに、契約書とか紙切れ一枚に大事なことを左右されている、いまの日本に対する怒りや疑問を書いていて。<紙様がいなきゃ繋がれない>って歌詞があるんですが、“かみさま”って音だけで聞けば“神様”かと思うけど、“紙様”と捉えることも出来て。それもこれも踏まえた上での“それでも生きる”って気持ちが、<強さも 弱さも すべて 背負いながら>というサビに繋がっていくんです。サビの歌詞は「これは良くない」とか「分かりにくい」って、色んな大人に反対されたんですけど。ラキアのメンバーは「めっちゃ良いよ!」と言ってくれたし、MIRIも一緒に歌詞を作ってる時、「クマの歌詞が良いよ!」ってしつこいくらい言ってくれて。私も大人になった今だから書ける歌詞だと思って、絶対これが良いと思って押し切れたので。歌詞に関しては、メンバーの後押しがめちゃデカかったですね。
――大人になったから書ける歌詞でもあるし、つまらない大人になっていないから書ける歌詞でもあって。自身で作詞をする中で、いま歌いたいこと、伝えたいことをしっかり描けているし、星熊さんにしか書けない歌詞が書けていると思います。
星熊:今回、たくさんの人に聴いて欲しくて、ラキアで初めて転調した曲を作ったんです。それに加えて、誰にも分かる言葉で歌詞を書いたら、「これって星熊っぽくなくない?」って色んな人に言われたんですけど。「はぁ? 私の何が分かるの? あんたの思う、星熊っぽいって概念が古いんじゃないの?」と思ったし、そこまで自信が持てたからリリースしようと思ったし。曲が完成した時、やっぱり押し切って良かったと思いました。
――今回、星熊さんは作曲からガッツリ関わってるんですよね?
星熊:そうです。オケに関しては岸和田(一樹)さんにお願いして。「rain」とか「reflection」とか「Days」とか、初期の楽曲をずっと一緒にやって下さってた方と“もう一度”って意味も込めて一緒に制作しました。曲は岸和田さんがガッツリやって下さったんで、自分はそこにどんなメロを乗せるか? どんな現代感を乗せるか? ってところで色々考えて。私の説明が独特すぎて、「こうして欲しい」というのを理解してくれるのが、ひと握りの人間しかいないんですけど(笑)。岸和田さんはニュアンスをしっかり捉えてくれるので、安心して制作出来たし。いままでは色んな人に曲を提供してもらってたから、私たちはカメレオンになって、曲に合わせることも多かったんですが。久々に自分たちの音だと納得出来るものが作れて、すごい楽しかったです。
――MIRIさんは「GR4VITY G4ME」が出来上がっていく過程はいかがでした?
MIRI:最初聴いた時、<強さも 弱さも>ってサビのメロディは珍しいけど、歌詞はすごい星熊らしいなと思って。いま、コロナだなんだで遊びが制限されたり、人と会えなくなったりして、テンションが落ちることも多くて。周りにも鬱になっている人がいたり、みんなが精神的に落ちてる中で、この曲はみんなに寄り添うってわけでも、元気を与えるってわけでもなく、「ラキアもみんなと同じ人間だよ」というのを伝えてる気がしたんです。一方的に「頑張れ」とか「大丈夫だよ」っていうんじゃなくて、「私たちもこんなに弱い人間だけど、それでもやってるよ。で、あなたはどうするの?」って問いかけの曲でもあるのかなというのをすごく思いました。
――それを受けてのラップパートの作詞はいかがでしたか?
MIRI:メインのラップはちょっと暗めのトーンでラップして、「ここじゃないどこかに行きたいけど、ここでやらなきゃいけない」という葛藤を書きながら、タイトルに「G4ME」って付いてて、私はゲームが好きなので、ここぞとばかりにゲーム用語を使ったり遊びも入れながら書きました。あと今回、怜奈のラップも書かせていただいたんですけど、ここは自分と対比する歌詞にしようと思って。自分のパートはポジティブに聴こえがちですけど、めっちゃネガティブなものがあるので。キャラ的にも明るい怜奈のラップは、聴いただけでテンション上がるようなものにしたくて。怜奈の声に合うようにとか、怜奈が唯一読めるマンガが『東京リベンジャーズ』だから、リベンジャーズの言葉を入れたり(笑)。怜奈をイメージしながら書かせていただきました。
川﨑:私はMIRIの書いてくれたラップを歌うというのが久しぶりで嬉しかったし。レコーディング直前までリリックを書いていて、大好きな『東京リベンジャーズ』をイメージするフレーズを入れてくれたり、レコーディングが始まるまでラップもすごいアドバイスをくれたりして、すごく嬉しかったです。私の声質やキャラもよく分かってくれてて、すごいモチベも上がってテンション高くレコーディングに臨めたし、自分を出しやすいラップが出来るから。自分のパートはめちゃくちゃ気に入ってるし、人生一回だけど、何度でもリベンジ出来るって想いをこめて、「もっと前に前に行こうぜ!」ってポジティブな気持ちを伝えられていると思います。
――海羽さんは「GR4VITY G4ME」に関して、いかがですか?
海羽:曲を作ってる段階の時にくまみちゃん(星熊)から電話がかかってきて、作りかけの曲を聴かせてくれたんです。その時はサビを作っていたみたいなんですけど、「キーが高いし、良い曲だな」と思って聴かせてもらって。電話の後に曲を作っている過程が聴けるアプリをもらって、くまみちゃんと岸和田さんが曲を作っていく過程も初めて聴いた時、「あ~、こうやって心をこめて作ってくれてるんだな」というのも思いましたし、くまみちゃんとみりぽ(MIRI)が一緒に作った歌を歌えるのがなにより嬉しくて、大切に歌おうと思いました。くまみちゃんの歌詞って、いつもは英語が多いんですけど、私は英語の中に入ってくる日本語の胸が苦しくなる感じが好きで。「GR4VITY G4ME」はそこが前面に出ているのも好きだし、丁寧に歌わないとなって思って。自分のパートのところに出てくる“契リノ引キ出シ”って言葉が難しくて分からなかったので、くまみちゃんに意味を聞いたんですけど。「“神さま”じゃなくて“紙さま”なんだよ」っていう説明を聞いて、「すごい歌詞を書いてくれたな!」って感心しました。
川﨑怜奈
海羽凜
――「GR4VITY G4ME」は、「これが世界なんだ、これが自分なんだ」と現実を突きつけて、強い覚悟を歌った星熊さんのメッセージ性の強い歌詞だけを聴いてると、聴く人によっては目をつぶってしまいたくなると思うんです。
星熊:本当にそうです。結構、いい感じに書いてるけど、めちゃくちゃキツイこと書いてますからね。
――だけど、そこにラップパートが入ることで歌詞世界が何層にもなっていて。MIRIさんのラップが広がりを生んで、怜奈さんのラップが救いを生んでいるから、ただキツイだけにならないし、逆に伝えたいメッセージがしっかり耳に入ってくるんですよね。
MIRI:そこは結構、意識してるところで。星熊は歌詞でもメロディでも結構、深いところまで行くんで。「いやでも、星熊はそんな悪い人じゃないんですよ!」ってフォローするじゃないですけど、「この言葉の裏にはこういう意味があって」というのを、言葉数が詰められるラップで、私が分かりやすく伝えたいというのはずっと意識しています。
星熊:前も言ったことあるけど、私たちの歌詞の作り方って特殊で。MIRIと相談をしないで、それぞれが自分たちが聴いた時の想いを書いていて。「これ、もっと歌詞の意味を合わせた方がいいんじゃない?」みたいなことを言われることもありますけど、分かりにくさの良さもあるから、そのやり方を変えてこなかったんです。
MIRI:その方が聴く人も色んな聴き方が出来ると思うし、聴き方や感じ方ってそれぞれ違うから。それを言葉だけで合わせちゃったら、すごいつまんない曲になっちゃう。
星熊:そう。1カメ、2カメみたいな感じで、角度を変えて。同じ絵でもMIRIは全く違った角度から描いてくれるから面白いんです。
――そこが今回、ばっちりハマっているから、転調していく曲調が奥に何層にも広がっていって、歌とラップが縦に何層にも広がっていく印象があって。深く掘り下げていく星熊さんの歌詞を、ラップパートで空の上の上までfar awayしてくれる心地よさがあったり、すごく大きな世界観を作れていると思います。
MIRI:私が「お~!」と思ったのが、<全て背負いながら>って歌詞で。「Days」も<背負い込んだ>って歌い出しで始まるんですけど、同じ歌詞でも「いろいろ乗り越えてきたんだろうな」って伝わるのが良いなと思って。たまたまかも知れないけど、あの頃と比べたらラキアもすごく変わったし、成長したし。その間に色んなことがあった上で、“背負い込む”って言葉をもう一度使って、歌い方も全然変えて。クマが弱さの中にも強さがあるというのを、芯のある歌声で歌えているところに、私はすごくグッときました。
星熊:味が出てきたよね、私たち(笑)。周りが若いアイドルばかりで、フリフリで踊ってるのとか見てると、焦ることもあるんですけど。そこで見せるラキアのステージは、年々渋みを増していて。それが観てる人やアイドルの刺激になればいいなと思いますけどね。

取材・文=フジジュン
我儘ラキア
SURVIVE (LIVE at USEN STUDIO COAST)WAGAMAMA RAKIA TOUR 2021

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