Nothing's Carved In Stoneがその雄
姿と意志で交わした、未来への約束

Bring the Future 2022.4.20 LINE CUBE SHIBUYA
結成から14年間を休まずに走り続けてきたバンドが、新たな変革の時を告げる重要なライブ。『Bring the Future』=“未来へ繋ぐ”というタイトルのもと、大阪城野外音楽堂とLINE CUBE SHIBUYAで開催された2公演は、素晴らしかった『ANSWER』ツアーのアンコールであり、初めての会場でバンドの力を示す挑戦の場でもある。4月20日18時30分、LINE CUBE SHIBUYA、様々な感情が交錯する特別なライブ、いよいよ開幕。
撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
すさまじい音圧とみなぎる気迫が広いホール空間をいっぱいに満たす、1曲目「Mythology」からメンバー全員の気合の入り方が明らかに違う。村松拓はハンドマイクでステージ最前線へ、生形真一と大喜多崇規はいつも通りのポーカーフェイスで、日向秀和はいつも通りの満面の笑みで、いつも以上に体ごと後ろに吹っ飛ばされそうな爆音グルーヴを叩きつける。「In Future」から「Deeper,Deeper」へ、スモークが派手に吹き上がりライトがギラギラ点滅する。初のホール公演だが、最小限の演出を添えてひたすら音に没頭する姿勢はどんな場所でも変わらない。一瞬でホールがライブハウスの空気に変わる。
撮影=RYOTARO KAWASHIMA
撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
「Falling Pieces」から「PUPA」へ、ミドル/アップテンポを連ねて徐々にスピードを上げて「No Turning Back」へ。「よく来たな渋谷! 会いたかったよ」と村松が叫ぶ。明るい開放感に溢れる「きらめきの花」は、3階席のてっぺんのオーディエンスまでも心地よい一体感に包まれる、幸せなダンスチューンだ。比較的初期の楽曲から『ANSWER』の楽曲へ、えり抜きのライブチューンを揃えたセットリストは現時点でのベストだろう。音のカタマリが風圧として押し寄せてくるが、体に当たる力は心地よくホットでピースフルなのも、14年のキャリアの円熟のなせるわざか。
「アコースティック、やっちゃいますけどいいですか?」
村松の軽やかなMCを合図に、ここから4曲は彼らのヘヴィロックサイドとは別の魅力を深堀りするアコースティックセットでじっくりと。昨年11月のビルボードライブ東京でのパフォーマンスに手応えを感じ、もっとアコースティックでやってみたいという動機があったそうだが、「Isolation」「Midnight Train」と、フォーキーではなくしっかりとグルーヴのあるアレンジで、ロックバンドらしい迫力と力強さをキープするのがナッシングス流のアコースティック。生形の非常に精密なアルペジオ奏法も、村松の完璧な音程と歌詞の表現力も、シンプルな音像だからこそくっきりと際立って聴こえてくる。「Shimmer Song」と「Beautiful Life」の2曲は特に、これまでライブで聴いた中で最も完成度が高いと思えるほど、肯定的な愛と優しさに溢れたベストテイク。きらめく星の光のように、頭上に瞬くライトがとてもきれいだ。
撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
撮影=RYOTARO KAWASHIMA
「まだまだこの先にみんなを連れて行きたい。新曲やります」
3週間前に配信リリースされたばかりの「Fuel」は、超重量級のリズムとサイケデリックに歪むギターが迫り来る、メタルコアとダンスロックが合体した強烈な1曲。和やかなアコースティックから一瞬でラウドロックな世界へ引き戻すと、「Mirror Ocean」「Milestone」とヘヴィな楽曲を畳みかけて波に乗る。カラフルなレーザービームが空間を切り裂き、ライトが激しく点滅する中、日向の狂気じみたスラップ、生形のプログレめいたトリッキーなリフ、シーケンスと一体になって細かい16ビートを刻む大喜多のテクニカルなスティックさばきと、それぞれの必殺技が炸裂する。そんなバケモノめいた演奏を突き抜けて、言葉と感情を朗々と響かせる村松拓。今さらながら、Nothing’ s Carved In Stoneはとてつもないバンドだ。
撮影=RYOTARO KAWASHIMA
「残すところラストブロック。行けるところまでみんなの気持ちを引き上げて、最高の演奏をして、一つになって帰りましょう。行けるか渋谷!」
スモークがガンガンに焚かれる中、フィナーレへ向けての怒涛の5連発は「Spirit Inspiration」から始まる強力なダンスロック祭りだ。「Out of Control」では生形が華麗なピックスクラッチを決め、日向と大喜多が拳を突き合わせて気合を入れる。爆発するエネルギーはメドレーのように途切れることなく、「Scarred Soul」から「Bloom in the Rain」へ、そしてエレクトロニックなシーケンスに乗せた「Impermanence」へと、爽快感が止まらない。精密なダンスミュージックの快感、変拍子や凝ったリフなどプログレッシブな刺激、ラウドロックの迫力、メロディの美しさ、メッセージを伝える真摯な姿勢、すべてが絡み合って音楽は突き進む。ライブはあっという間に残り1曲。
撮影=RYOTARO KAWASHIMA
「俺たちは自分たちを高めて、それはそれは素敵な15周年を迎えたいと思っています。これからもNothing’ s Carved In Stoneをよろしくお願いします」
ここで村松が語った言葉は、最大限の誠意を込めた意味深いものだった。バンドはしばらく充電期間へと入ること。理由は、生形がELLEGARDENの活動に専念したいということ。Nothing’ s Carved In Stoneの素晴らしい十数年に、心から感謝していること。ELLEGARDENの再開とそれによるナッシングスへの影響には嬉しさと悔しさの両面あるが、チャンスでもあること。「だから俺たちは自分たちを高めて」というセリフで締めくくった、村松のまっすぐな言葉は本当に素晴らしかった。その後に歌った「Walk」の、<今を生きる/前を向いて>という歌詞がいつも以上にずしりと胸に届いた。いつだって真実を語るのは音楽そのものだ。ナッシングスはすべての感情と行動を音楽に込めて、休まずに走り続けてきた。これまでも、これからも。
撮影=RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)
「俺にとって、みんなにとってこのバンドはライフワークです。そんなに遠くない未来に帰って来ると思うので、楽しみはその時まで取っておいてください」(生形)
アンコール、吹っ切れたように明るいダンスロック「Sands of Time」を歌い終えた村松が、「言い残したことはないですか? メンバー諸君」と笑顔で話し出す。一瞬の間を置き、「じゃあ俺から」と手を上げたのは生形だった。短く、朴訥で、心のこもった率直な言葉。「言わせちゃったよ」と村松が笑う。とっさのハプニングを装って、誰もが生形の口から直接言葉を聞きたいと思っていた、すべてのファンを納得させる最高のおぜん立て。村松拓は本当にいい男だ。
撮影=RYOTARO KAWASHIMA
ラストチューン「村雨の中で」は、明るいムードの中でどこまでもポジティブにパワフルに。3人がドラム台を囲み、息を合わせて締めくくるいつものエンディングが少しだけセンチメンタルに見えてしまうが、4人の目はすでに未来しか見ていない。『Bring the Future』=“未来へ繋ぐ”の意味が、ここでようやくわかった気がする。このメンバーとファンとが再び集結する日まで、それはお互いを高めてゆく大事な時間。この日の記憶を忘れずに、生きて、高めて、そして未来でまた会おう。

取材・文=宮本英夫 撮影=RYOTARO KAWASHIMA、RUI HASHIMOTO(SOUND SHOOTER)

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