fhána最新アルバム『Cipher』インタ
ビュー「最終的にはドキュメンタリー
的な作品になった――」

2022年4月27日に約4年ぶりのオリジナルアルバム『Cipher』をリリースしたfhána。久々のアルバムは、約2年間の彼らの想い、そしてこれまでの集大成が詰まったものになっている。彼らがこの2年間をどのように過ごしてきたのか、そしてどのような想いがこのアルバムに詰まっているのか。このロングインタビューを読み、そして5月8日から始まる「fhána Cipher Live Tour 2022」を体感して欲しい。
――アルバム『Cipher(サイファ)』がいよいよリリースとなりました。時代に根差した作品をピンポイントにだしてきたな、と感じています。そんな中で、このコロナ禍の時代の流れをひとつにまとめた作品を出そうっていう皆さんのお気持ちからお訊きできればと思っています。
佐藤:『Cipher』の初回特典Blu-rayには2019年ツアーの映像が入っているんです。その映像を見ていたら、MCで「来年アルバムを出します」みたいなことを言っていたんです。あ、2019年当時はそんな話をしていたんだなっていう。
――なるほど。現在は2022年になっているわけですが、2019年の時点ではそういう予定だったという。
佐藤:これは他のインタビューでも言っているんですけど、2019年のツアーの時点で「愛のシュプリーム!」のデモってもうできていたんです。で、来年(2020年※実際の放送は2021年)は『小林さんちのメイドラゴンS』があって、「星をあつめて」までで、アルバムひとまとまりにして、それを2020年にリリースして「愛のシュプリーム!」から次のターンに入る。2019年はそんなプランだったんです。
撮影:池上夢貢
――2019年、2020年の流れはすでに「愛のシュプリーム!」も含めて作られていたわけだったのですが、そんな流れが大きく変わってしまったと。
佐藤:そこから、時代に翻弄され始めるわけですよね。
――そうなってくると当然、最初の構想とはまったく違ったものになってくると思うのですが。
佐藤:2019年の後半に色々あったので、「ちょっとどうなるのかな?」っていう空気はありました。そんなところに年が明けると今度はさらにコロナがやってきて、僕ら含めいろんなアーティストが、そもそもどうなるか分からない状態に入ってしまった。それで最初の緊急事態宣言の時期はみんなで家に引きこもって。なんて言うんでしたっけ? 自宅待機じゃなくて…。
yuxuki:ステイホーム?
佐藤:そう、そのステイホームしている時に、このままだと何も活動がなくなっちゃうから、リモートで曲を作ろうってことで「Pathos」を作って、それをYouTubeにアップして。iPhoneで撮ったMVをアップして配信リリースしたり、それに紐づいたオンラインライブをやったり。そして秋頃には、有観客がちょっとずつ復活。それでも声をだしたり、一緒に歌ったりはできない状況だった。なのでファンの皆さんにコーラスを募集して、音源の中で一緒に歌うみたいな企画で「Ethos Choir Caravan feat.fhánamily」っていう曲を作ったり。それに紐づいたオンラインライブをやったりみたいな感じで、その時にできる最大限のことをやりながら、この2年間ぐらいを過ごしてきたって感じです。
――fhánaはそういう意味でもすごく活発に活動されていましたよね。そんなある意味点として作っていったものは、今回のアルバムにどうつながっていくのか、という構想は当時からあったのでしょうか?
佐藤:当時はそれどころじゃなかったんですよね。
撮影:池上夢貢
――なるほど。今回のアルバムからは遠ざかってしまうのですが、そんな約2年間っていうのを皆さんがどのように過ごしていたのか、どのように感じていたのかをお聞きしたいです。
kevin:コロナ以降ということですよね?
――はい、fhánaとして、そして個人としてもお聞きしたいです。
towana:まぁ、凄く浮き沈みがありましたよね。みんなが初めて経験することだから、先が見えなくて当然なんだけど、その真っただ中にいる時って、このままどうなっちゃうんだろう?っていう不安な毎日という感じで。私自身、歌手でいられなくなってしまうかもしれないと。2020年ってライブハウスへの風当たりがすごく強かったじゃないですか。そういうこともあって、音楽活動ができなくなっちゃうかもしれないっていう不安がすごく大きくて。
――確かにライブハウスへの風当たりはすごく強かったですよね。
towana:そんな中で自分の言葉で絞り出したのが「Pathos」の歌詞だったりするんですけど。その後のオンラインライブだったり、ファンの皆さんと会えない時間がすごく長く続いたことによって、その大切さとか、ありがたみとかもすごく実感しましたね。個人としては、世界の見方というか、接し方とか、自分の考え方とか、成長したなと思います。混乱した世の中で、ずーっと悲しい悲しいと言い続けているわけにもいかないから、ちょっとは強くなったかなって。それが歌にも深みとして出ているかもしれない。聞いてくれている、待ってくれている人と、今年の1月のツアーで本当に久しぶりに会えた時に、こうやって待ってくれていた人たちが本当にいたんだなっていうことを実感して、その喜びも歌に出ている。悲しいこととか苦しいことがいっぱいあるんだけど、プラスで捉えたら、そういう自分の歌とか、人間性とかに、成長があったかなと思います。
撮影:池上夢貢
――towanaさんの中の、歌であったり、リリックであったり、それを発して何か受け止めた人たちのリアクションも含めて、確かにtowanaさんのSNSから非常に感じるものがありました。
kevin:僕個人のプライベートでもちょうど2019年ぐらいから生活がガラッと変わって、人生観も相当変わったんです。コロナ禍だからということよりは、ちょうどタイミングが重なった感じなんですが。それまでは比較的、楽観主義でチャランポランな人間だったと思うんですけどね(笑)。
――世の中の動きだけではなく、プライベートでも動きがあったことで大きく変わられたんですね。
kevin:だいぶ社会の厳しい面とかにも直面して、ポジティブに言うとコントラストが高くなったというか、暗い部分も体感した。だからこそ、なおさら明るい部分がめちゃめちゃ尊く感じるようになったんです。今は暗いニュースばっかりですけど、たまにいいニュースあると、それだけでちょっと泣きそうになるし。それが、作品にどう反映されているかっていうと、ここがこう変わったんですよね、って言えないんですが……。でも何かしら、言葉にできないけど変わっているのかな。意識にならなくても、自分というフィルターを通して出てきたものが音だったりするから、何かしら変化しているのかなと思いつつ(笑)。
撮影:池上夢貢
――言葉にはならなくても、意識の奥が変わっているのであれば何かしら変わっていきますよね。
kevin:1個あるとすれば、元々はすっごい底抜けに明るい曲が好きだったんです。なのでそういう音を作ることも多かったんですけど、最近はもうちょっと混沌とした音を使いだした。それはもしかしたら、いろんなところから影響を受けてそうなっているのかもしれないなって。
――確かにkevinさんのパブリックイメージみたいなものは明るい、ポップな曲だったりっていうのがあると思うのですが、そういった内面からの影響が何かしらの音楽に活かされていっていると。
kevin:具体的に言えないですけど(笑)。それに今後も影響を及ぼし続けていくんだろうなって。今だけじゃなくて、たぶん、この2、3年の大変動がずっと尾を引くんだろうなって思っています。
――なるほど。ではyuxukiさんはいかがでしたか?
yuxuki:凄く音楽と向き合うことが多くなったなと思って。towanaも言ったんですけど、最初はライブハウスへの風当たりが凄かったですよね。元々ライブハウスの文化とか、そういうのが好きで東京出てきたってのもあるので、あれ?って。俺がやりたかったのは何だったんだろう?と。ライブハウスが凄くバッシング受けている様子とかも見ていたし、STUDIO COASTにも一度も出られないまま終わっちゃって凄くショックだった。自分がやりたかったことがどんどんできなくなっていくっていうか。そういうのがいろいろあって、音楽とは何だ?みたいなことを考え始めて。とはいえ俺らみたいな音楽が無いと生きていけない人はまだいるはずだから、そういう人に向けて作らなきゃなって考えた結果、真摯に向き合うようになったというか。あとは家族のことを凄く大事にするようになったりとか。ちょうどコロナになる前に祖父が亡くなって、次の年の一周忌に行けなくなったりとか。家族にも会ってないし。
towana:えーそうなのー!
yuxuki:そういう自分の近くにいる人を大事にしなきゃなって思いがめちゃくちゃデカくなりました。自分の支えは家族と音楽っていう、その2つだから。どっちかが崩れてしまうと、自分という人間が終わるんではないかと思っている。そういう意味では考えることが多かったんですけど、家で曲を作れるようにと思って、家の環境を整えたりとかして。前はスタジオ行けばいいやと思っていたところなんですけど、今の新しい時代の作り方もできるようにならなきゃなと思って、向き合い方が変わったって感じですね。
fhána/4th Album『Cipher』【初回限定盤】

――確かに本当に今はこれまでのやり方を変えざるを得ない。それに自分の中で音楽が好きだっていう部分は変えられないものがあると。
yuxuki:そこがけっこう否定的に言われたのが結構キツかったですね。
――皆さんこの約2年間を過ごされて、それぞれに変わった部分があって改めてfhánaの作品ってどういうものなんだろう、ってなってくると思うんです。その中でどのように今回のアルバムの構想が出来上がっていったのでしょうか?
佐藤:本当に時代のドキュメントみたいな感じになっていて。2019年時点では、こういう世の中になるなんてぜんぜん思ってなかった。仕事で物凄く関わっているところでも、色々なことがありつつ、まだ平和な時代だったんです。そこから2020年になって、どうなるかわからない不安な2年間を過ごし、2022年になったら、そのパンデミックすら形骸化しちゃうくらい、世界情勢が緊迫した状況になりました。どんどん時代が変化し続けていますよね。そんな中で、先々の計画とか予定とが立たない感じもあったし、だからこのアルバムも総括しているわけではなくて、その時々のことが記録されている。一番最後に作った「Zero」は今年の2月末から3月にかけて作っている曲なので、そういう世界情勢のこととかも反映されていたりして、本当にドキュメントっていうか、結果的にこうならざるを得なかったっていう。
――それこそ2019年からの映像を後で編集し直して一本のフィルムにしているというか、時間軸は関係なく、編集していったらこういうものになりましたよ、と。
佐藤:ドキュメンタリーですよね。最初に脚本を書いて、その通りに撮影して作ったんじゃなくて、カメラが密着していて、後でその素材をまとめてこうなりました、みたいな感じ。
――だから今回は特に既存の曲が多いというのもありますけど、凄くその時々を切り取った感じが強いというか。
佐藤:そうですね。改めて振り返ると暗い時代だったと思うんです。今って結構、明るくはないというか、ここ2年も含めてやっぱり重い、大変な時代だった。だからその雰囲気も、アルバムに結果的に入って来ているんだろうなっていう。それこそ、アルバムのトラックリストを考えている時も、「僕を見つけて」とかけっこう重めの、ヘビーな感じの曲が多かった。「Cipher.」も軽い曲ではないし。「Ethos」も切実な感じの曲だし。アルバム制作が現実的に動き始めたのは、今年になってからなんです。最初は重い曲が多いから、箸休めみたいな軽い曲でも入れようかな、みたいな話もあったんですけど。結果的にこういう時代だから、そういう軽い曲のない作品になるのはそれはそれでいいんじゃないかってなりましたね。
fhána/4th Album『Cipher』【通常盤】
――なるほど。このインタビューを読んでアルバムを聴くと、この構成になった経緯が凄くよく分かると思います。
佐藤:だから「Cipher」のfhánaバージョンを作ってアルバムのタイトルも『Cipher』にしようって考えたのは1月の話なんです。「Cipher.」は、fhána結成直前ぐらいに作った曲で、fhánaの前日譚というか。僕がfhánaの前にFLEETというバンドをやっていて、yuxukiくんとkevinくんと知り合って、すごい面白い人たちだな、とちょっと新しいワクワクを感じながら、当時ボーカロイドにすごい興味あったんで、yuxukiくんからボカロの作り方とかちょっと教えてもらって、「Cipher」をボーカロイドの曲として作って、作詞を林英樹くんに初めてお願いして。fhánaデビュー以降も、ワンマンライブとかでたまにカバーしていたんです。それを今年1月のbillboardツアーの時に、towanaが、久々のワンマンだから「Cipher」やりたいって言いだして。ライブでやってみたら、すごい良い曲だなって(笑)。逆に、時代に合っている気もするなと思って。「Cipher」って、暗号という意味もあるんですけど、数字の「0」って意味もあるんですね。fhánaは今活動10年目なんで、一区切りというか、原点回帰みたいな意味で「Cipher.」をタイトル曲にするのもいいんじゃないかってなったんです。
――原点回帰であり、区切りでもあると。
佐藤:「Cipher.」は原点回帰や「還るべき場所に還る」という意味でのゼロなんですが、アルバムラストの「Zero」って曲は、積み上げてきたものがリセットされるような意味での「Zero」ですよね。だから「Zero」と「Cipher.」両方が「0」で、「0」に挟まれているっていう構造のアルバムに最終的になった、という感じです。
――でも凄いですよね。1月にtowanaさんが「Cipher」をやりたいっていう話から、凄い速さで作られていったと。
towana:久しぶりの有観客で、「Cipher」歌いたいなぁって思ったっていう。
――それが結果として大きな意味を持つようになったっていうのは、このアルバムとしてもそうですし、2022年のfhánaとしてっていうのを何か示すものとしてっていうのがあったと思うんですけど。実際「Cipher.」を再録されて皆さんいかがでしたか?
yuxuki:ライブでやった直後だったから、再録で困ったこととかはなくて。逆に元が10年前の曲で、大事なものだと思っていたので、俺はそれを崩さないように結構神経を使いました。フレーズとかも極力コピーして、極力手を加えず、皆が聴き馴染んでいるものが変わったら嫌だなっていうのがあって。最終的なミックスで違う部分はあるんですけど、とりあえずリスペクトとかを込めてやりました。再録しましたって言って、ぜんぜん音違う曲が入っていたら嫌じゃないですか。それで結局、昔のやつ聴くみたいになられても(笑)。
――fhánaのファンにとっては馴染みのある曲ですからね。
佐藤:僕はちょっとアレンジ変えた方がいいのかな?とか判断つかないままレコーディング入っていったんですけど、そしたらyuxukiくんが完コピ路線で来たから、じゃあ完コピでいっか、みたいな(笑)。アレンジに関しては、ドラムとベースが生でレコーディングし直してっていう部分はあるんですけど、原曲を極力再現していて、そこにプラスアルファ、ライブのエモーションも加わって。ただ、歌詞はちょっと変えたんですよ。
撮影:池上夢貢
――それはやぱり時代に合わせたと?
佐藤:改めて歌詞を読んでみたら、2010年前後ぐらいの世界観だなっていう感じはしたんです。そこは今の時代にフィットさせました。
――ではkevinさんは「Cipher.」にどのようにアプローチされたのでしょうか?
kevin:「Cipher.」は僕は応援していただけで(笑)。そもそも佐藤さんが以前に作った曲であって、結構シンプルなんです。だから特に僕がすることも無いというか。単純にみんながやってるのを聴いて、yuxukiさんもさっき言っていましたけど、何か変わっていたら嫌っていうのは完全同意で。やっぱりfhánaがライブでもやっている曲だし、佐藤さんの歴史を追っていっていたら絶対ぶつかる曲なんですよ。だから、やっぱりコアな人はみんな聴いているし、ずっと言われていたんですよ、「Cipher.」の音源化まだですか?みたいなことを。一番どうしようって思っていたのはtowanaさんじゃないかなと思うんですけど。
――確かに、ライブでやってはいても音源化するってなると違いますよね。
towana:でも、ライブでやり始めた時こそ、元々ボーカロイドが歌っている曲なので、それを私が歌うときにどういう風に歌ったらいいんだろうっていうのはあったんですけど。どちらかというと今回は歌詞が所々変わった違和感はやっぱりあって。でも今の時代に合った、今のfhánaに合った、今のfhánaが歌うんだったらっていう「Cipher.」になったので。すごく良い形になったなと思います。
――ただこれが1曲目にくるっていうところの、非常に大きな意味があるなっていう部分があるんです。「Act 1」がここから始まってっていうところで、わりと近年やってきた楽曲たちが入っているのはあって、そんな「Act 1」をひとつにまとめて見ると、ある種アーバンサイド的な部分がある。
kevin:そうですね、アーバンサイドって感じしますよね「Act 1」は。
――最初から「こういう構想があったのかな?」と思ってしまうぐらいすごくまとまりのある、「星をあつめて」までの一連の流れっていうものがあるなと。そしていわゆる2幕構成っていうところはお聞きしなければならないのですが。
佐藤:今、基本的に音楽の聴き方として、配信だったりストリーミングで聴くことが一般的ですよね。まぁ、そういう時代にあって、そもそもアルバムっていうパッケージで何かを提示するって、どういうことなのか? と思った時に、逆に今の方がアルバムの曲順だったりとか、物語性みたいなものは、凄く考え抜いたものにしないと意味がないような気がするなと思ったんです。
――パッケージとして提出する意味を今だからこそ改めて考える必要があると。
佐藤:昔のCDだけの時代は、基本的にはCDを再生したら普通に曲順通りに聴かれましたよね。でも配信では、自由に順番入れ替えたりとか、好きな曲だけお気に入りに入れたりとか、あとはプレイリストで、ぜんぜん違うアーティストの並びで聴いたりとか、自由に聴かれるわけですよね。でもアーティストとしては、こういうコンセプト、こういう物語なんですよ、っていうのを提示するにあたって、なんとなく曲順があるんじゃなくて、考え抜いた曲順で、さらに第1章、第2章、としたほうがよりストーリー性が増すと思って、2幕構成にしたっていうのはあります。それに2019年の年始に中野サンプラザで結成5周年スペシャルライブっていうものをやったんですけど、そのとき3幕構成みたいな見せ方でやったんですよ。それが脳裏に残っていて、今回もいいかもな、って思ったっていうのはあります。
――前半だけでアルバム1枚分のボリュームがあり、それがほぼ既発曲で構成されているのが、すごい見事だなって。
佐藤:でも、曲順は最後まで悩みました。結構、うまくまとまったかなとは思いますね。「愛のシュプリーム!」が、すごいハッピーで明るい曲じゃないですか。どういう風に入れたら浮かないかなとか。「Cipher.」と「愛のシュプリーム!」ってぜんぜん違うので(笑)。
――確かに(笑)。
佐藤:「Cipher.」がアルバムのコンセプトみたいなのを担っているリード曲だとしたら、サウンド的に今のfhánaの最新形が「Air」だと思っています。というのも、2021年のfhánaはやっぱり「愛のシュプリーム!」だったと思います。そのサウンドの発展形を作りたかったっていうのもあるし。「Air」はサウンド的には「愛のシュプリーム!」の延長線にあるもので。だから最新のfhánaのサウンドを伝える「Air」がありつつ、テーマやストーリーは「Cipher.」でありつつみたいな。そういうイメージはありますね。
撮影:池上夢貢
――確かに2曲目に「Air」が入ってから、「愛のシュプリーム!」が流れていくまで、ここはひとつ象徴している流れかなっていう部分は感じました。そしてそんな最新のfhánaの楽曲である「Air」の作詞はtowanaさんが手掛けているわけですが。
towana:まず曲が、ノリがいい感じなので、軽い感じの歌にも歌詞にもしたくて書き始めたんですけど、結構これが、軽い仕上がりのものを目指したところで、軽く書けるわけではなくて(笑)。
――(笑)。
towana:作詞するのに結構悩んでたんですけど。カフェのカップってなんかコメントが書いてあることがあるじゃないですか、そこに書いてあったメッセージが何かいい言葉だなって思うものがあって、そこから広げていったんです。あとはBillboardツアーが終わって制作に取り掛かったので、ライブで得たこととか、みんなに会えて嬉しかったこととか、そういうことも歌詞に入れていって。
――皆を引き連れて行く感じとか、そういった部分が歌詞に感じられますし、まさにライブ後の自分であったりっていうのがありますよね。
towana:こういうリズミカルな曲って、すごく自分の中でも好きな感じの曲。なので、苦労したと言うよりは、楽しく歌ったっていう感じです。
――そういった部分が「Act 1」に強いかなっていう印象がありますよね。そして「Act 2」はまさに「Zero」に向かっていく物語を強く感じました。そんな「Zero」についてもお聞きしたいのですが。
佐藤:決して前向きな曲ではないんですけど、歌詞の中にある「ゼロにもどっても 何度も何度も闇に火を灯す」っていうフレーズに象徴されるように、どんなことになったとしても希望は失わずに光を灯していきたい、最後の最後はそれを残してあるっていう、祈りみたいな曲で。林(英樹)くんには、今回のアルバムは原点回帰でっていう話を元々して「Cipher」の歌詞をリ・クリエイトしてもらったりしていたわけですが、最後の最後に「Zero」を作曲して、その歌詞をお願いする時に、今の世界で起こっていることをそのまま歌詞に落とし込んでくださいってお願いして。そしたら「ちょっとこれは、アルバムの調和を切り裂いてしまう歌詞になっちゃうかもしれないですけど」と言われて。「それでお願いします」って書いてもらったのが「Zero」なんです。
撮影:池上夢貢
――ゼロに戻ってしまった世の中で、それでもなお、っていう部分が何かすごく、身につまされるというか。それがサウンドにも反映しているのを感じました。
佐藤:サウンドというか作曲については、割と初期衝動的というか。例えば「Air」なんかは考え抜いて作っているんですけど、「Zero」に関しては元々好きな感性というか、好きな音楽性でスッと勢いで作っていますね。
yuxuki:ギターとかもわりと、そういう音になっているのかなって気はしますね。
――ギターアレンジにもそういう影響はあった?
佐藤:初期衝動的な(笑)。
yuxuki:やっぱり、曲に引っ張られるところはあると思います。ギターのアレンジを考えていたときは、まだ仮歌の状態だったんですけど、曲のエネルギーが凄かった。それに合わせる感じのテンション感で録った結果、腕が腱鞘炎になるっていう。
――(笑)。
yuxuki:凄く速いんですよ、あの曲(笑)。メタルみたいな感じ。そういうテンション感で録らざるを得ないと言うか。ここはダウンピッキングじゃないとだめだなって。ヒヨってられないみたいな(笑)。
――確かに熱い感じのものがこみあげてくるものを感じました。
kevin:もちろん曲を聴いて引っ張られた部分もありますけど、佐藤さんからかなり明確に、過去のfhánaのこういう曲のこういう音みたいなのが欲しい、みたいなオーダーを最初からもらっていたんです。結構そういうところに近づけて作ったっていうのはありますね。
towana:詞が結構重いので、どうしても感情を込めて歌おうとすると、心が苦しくなってしまうというところがあったんですけど、何とか頑張りました。ツアーのリハーサルがもう始まっているんですけど、この曲は格好よくて演奏が楽しいです。
撮影:池上夢貢
――なるほど。ステージ上で見ると、見え方も含めてご自身の価値観も変わってくるかもしれないですね。構成も含めて今回どんなライブにしよう、というのはあるのでしょうか?
佐藤:基本的には2幕構成で、アルバム全曲を中野サンプラザでやります。で、アルバムに入ってない曲もちょっとはやると思うんですけど、基本的にはこのアルバムを完全再現するので、楽しみにしていてください。
――アルバムの楽曲を受けとめた後に、会場でまたさらに浴びるっていうのは、体験として面白いですし、どういった感情になるのかっていうのが、すごくこ楽しみですね。
佐藤:本当は発売して何カ月間か宣伝したいんですけど、数日後にライブなので(笑)。でもアルバムを買ってくれた人にとっては、それをすぐライブ聴けるっていうのは、新鮮な体験でいいんじゃないかと。
――ではライブについての意気込みも皆さんにお伺いしたいです。
yuxuki:そうですね…アルバムが長いってことはライブも長い(笑)。でもいい感じのボリュームがあるライブになると思うので、やっぱり音源では得られない、時間の進行とともに我々も盛り上がっていく姿というか、客席と一緒に熱量が盛り上がっていく空間を会場で楽しんで欲しいなっていうのはあります。
――楽曲たちを耳で聴くだけではなくて体験して欲しいと。
kevin:このアルバムを経てっていうこととはちょっとズレるんですけど、本当に有観客でライブできる機会っていうのは激減したわけです。もちろん先日やったBillboardのライブとか、いろいろあるんですけね。とはいえ数がめっちゃ激減する中で、久々の有観客のライブで僕は、「ライブはこんなに楽しかったのか」とか「俺こんなにライブ好きだったっけ?」って思ったんですよ。そして今、ライブを早くしたいというモチベーションの中でライブを迎えるので、すごくいいもの見せられると思いますし、それを目撃して欲しいです。たぶんお客さんにいろんなものを持って帰ってもらえるんじゃないかなって。やっぱり会場での空気の振動はね、ぜんぜん違いますよ、って。
towana:確実に愛に溢れた空間になると思います。中野サンプラザは2回目、5年ぶりぐらいなんですけど、その時はベストアルバムのライブで、シングル曲ぜんぶやるみたいな、凄くヘビーなワンマンライブだったんです。そこから5年経って、結構変わった私たちが、次、新しい「Cipher.」っていう、新しいんだけど10年前の曲みたいな。確実に、かっこよく大人になったfhánaを見てもらえると思うので、空気の振動を体験しに来て欲しいです。
――今のfhánaを見た上でもこれは大きなことだと思うので、楽しみにしています。ではお約束ですがファンへのメッセージをお願いします。
佐藤:ライブの話で付け加えるとしたら、やっぱり10年前からファンでいてくれる人も、最近ファンになってくれた人も含めて、ファンの皆さまがいるということに、僕たちfhánaのメンバー自身も、凄く救われるところがあったんです。で、久々に1月に有観客ライブをやって、みんなを見て込み上げるものがあった。でもこの感覚って、2019年までは当たり前のように有観客ライブをやれていて、普通のことだったんですよね。だけどこんなご時世になって、ライブに来てくれるっていうのが、すごいありがたいことだなと。ライブに来てくれるだけじゃなくて、普段から曲を聴いて応援してくれたりとか、その人の生活の中に自分たちの音楽が入り込んでいくっていうのが何か、すごい幸せなことだなって感覚があるんです。僕たちも、ファンの皆さんから、すごくたくさんの愛をいただいているので、僕らも愛をお返ししたい。ぜひ皆さんお越しください。
インタビュー:澄川龍一 構成:林信行 撮影:池上夢貢

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