白石加代子、『百物語』シリーズのア
ンコール公演第四弾を2022年10月より
上演

2022年10月21日(金)越谷コミュニティセンターを皮切りに、白石加代子『百物語』アンコール公演第四弾が全国で行われることが発表された。
『百物語』シリーズは、明治から現代の日本の作家の小説を中心に「恐怖」というキーワードで選び、それを白石加代子が朗読するという形で出発した。上田秋成「雨月物語」、泉鏡花「高野聖」、坂口安吾「桜の森の満開の下」、江戸川乱歩「押絵と旅する男」、という幻想文学の傑作作品から、半村良「箪笥」、筒井康隆「五郎八航空」、阿刀田高「干魚と漏電」、高橋克彦「遠い記憶」、宮部みゆき「小袖の手」、小池真理子「ミミ」といった現代作家の人気作品までの幅広いレパートリーと白石の朗読という枠を超えた立体的な語りと動きの上演で人気を博している。
本シリーズは、1992年6月岩波ホール発で始まり、2014年秋、泉鏡花「天守物語」をもって全99話を語り終えた。白石は、当初「肩の荷がおりて、すっきりした」と晴れやかな表情だったが、時を経て次第に、「まるで、愛を失ったかのよう (本人談)」な想いに急激に襲われたと話してくれた。
そしてファイナルを終えて、白石は忙しい仕事の合間を見つけ、アンコール公演を行うことに。第四弾となる今回は、口の中に広がる何とも言えない美味な味、「百物語」には笑いも涙も、苦味も洒落っ気も、いろんな味わいがすべて揃っている。そんなグルメなな二皿をおくる。
一皿目は宮部みゆきの「小袖の手」。宮部みゆきは、舞台を見終わって、「この作品はわたしが書いたものなのに、 その後一体どうなるのかとハラハラドキドキしながら、見てしまいました」とコメントしていた。
娘が古着を格安で買い求めてくる。母親はいきなり、その古着をバラバラにする。いぶかしがる娘に母親は、着物に取り付かれた男の話をする。一皿目は、 宮部みゆきの恐怖とユーモアとが絶妙に味付けされた人情怪談。
二皿目は朱川湊人の「栞の恋(かたみ歌)より」。「花まんま」で直木賞を受賞した朱川湊人の受賞第一作として、「かたみ歌」と いう七つの短編からなる作品集が発表された。「栞の恋」はその中の一本。テレビで「世にも奇妙な物語」という形でドラマ化もされた。
一冊の本に挟まれた栞がとりもつ不思議で切ない恋物語。お互いの顔も知らぬまま想いだけが募る淡く切ない恋の行方は……。この怪談は、ひとつの栞が昭和40年と19年前を行ったり来たりするところにある。白石加代子の現在から、純情な二十歳の乙女へと思い出の時間に入って行き、不思議な恋の時間を生きる。笑って、泣けて、特上の美味な話。
作者のコメント
■「妖しく、愛しい袖」宮部みゆき
このシリーズで取り上げていただいた拙作「小袖の」は、私がまだ作家として駆け出しのころの作品です。初演の際、客席であやうく涙しそうになりました。それほど嬉しかったし、深く感動しました。
数百人の観客を前に、舞台で語る白石さんは、たった一人です。でも本当は、白石さんの後ろに大勢の語り部たちがいる。遙か古の時代から、営々と怪談を 語り継いできた人びとの魂がついているのです。
そのなかには、江戸の闇、江戸の怪異を語っていた人びとの魂もありました。私が作品のネタにした着物の袖よりも、舞台の上の白石さんの着物の袖の方が、はるかに豊穣で神秘的な幻想と怪異を隠していました。語りながら白石さん
が袖をひるがえすと、その断片がひらり、はらりとこぼれ落ちるのが見えました。
私が江戸怪談に魅入られ、憑かれたように書き続けるようになった理由を、察していただけるでしょう。駆け出しの身で、こんな贅沢で劇的な体験をしてしまった以上、もう逃げられません。というわけで、白石さんには責任をと
っていただきたく――私は今日も、「また舞台で読んでもらえるといいなと思いつつ、江戸怪談を書くのです」
(白石加代子「百物語」シリーズ第二十九夜 「お文の影」「ばんば憑き」パンフレット原稿より転載)
■「ミラーボールのような百面体 」朱川湊人
私にとって白石加代子さんは、長い間、“怖い人”であった。
その演技に初めて接したのは金田一耕助シリーズの映画だったが、当時は中高生だったので、「何だか映ってるだけで、迫力がある人だなぁ」くらいの認識しか持っていなかった。しかし、その後にビデオで『女囚さそり 第41雑居房』を見て、そう感じたのは気の迷いでなかったと強く実感した。その劇中の白石さんは、まさしく迫力の塊であったからだ。本当に何かが憑りついているとしか思えない演技で、「役が憑依してしまう役者さんがいると言うけど、ちょっと憑き過ぎなのでは」と、こちらが心配になってしまうくらいだ。
以来、白石さんを“怖い人”と思い続けてきたのであるが、言うまでもなく、それは大きな間違いである。何のことはない、単に私が演劇に疎く、舞台の上の白石さんを見る機会を持てなかっただけのことだ。
拙作の『栞の恋』を百物語の演目に選んでいただき、その舞台を拝見した際に私はそれを思い知り、己の考えの浅さを恥ずかしく思った。その時に感じた通りに言えば、白石さんの舞台は、“ちょっとばかり何かに憑かれたくらいで、できるものではない”ということだ。もしかすると白石さんの中に何十通りもの白石さんがいるか、あるいはミラーボールのような百面体の心を持っているのかもしれない――そう考えることで私は自分を納得させたが、その時から白石さんは、もう“怖い人”ではなくなってしまった。
是非みなさんにも、おちゃめで可愛くて、黒目がちでおさげが似合う白石さんをご覧いただきたい。

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