「舞台仲間? 友達? いや、もはや“
親族”です!」 ~西川大貴・桑原あ
い・昆夏美が語る『雨が止まない世界
なら』と美しい思い出~

子どもの頃にミュージカルの現場でキャストとエレクトーン奏者として出会って以来、たびたび共に音楽活動やクリエイション活動をしている西川大貴と桑原あい。二人の新作ミュージカル『雨が止まない世界なら』が、昨年2021年4月の朗読動画公開、7月のワークショップ公演を経て、この度コンセプトアルバムを発売することに! レコーディングに参加した21名の豪華キャストより、二人ともと親交の深い昆夏美を迎え、手応えを語ってもらった。
高校の同級生+クリエイション仲間+仲良しの共演者=親族!
――本題に入る前に、お三方の関係性を確認させてください。まず、昆さんと西川さんは2013年の『レ・ミゼラブル』が初共演ということで合ってますか?
昆:そうなんですけど、私は実は、もっと前にあいのライブで大貴を観ていて。
桑原:あれでしょ? 私が高校を卒業してすぐにやったライブ。タップダンスとピアノでやりたかったんですけど、当時まだ人脈がなくて。小中学生の時にアルゴミュージカルで一緒だった大貴が、一人だけやたらタップがうまかったことを思い出して、「あいつしかいない!」って(笑)。それで5~6年ぶりに連絡して出てもらったんです。
昆:そんな久しぶりだったんだ! あいとは高校の同級生なので、私はそのライブを観に行っていて。だから13年に現場で大貴に会った時、「あれ……?」って(笑)。
西川:あ、そうだったんだ。
昆:大貴にもその話、したと思うよ。だって、この私がしないわけなくない?(笑)
西川:確かに(笑)。いや、けど忘れてたわ。
昆:13年の『レミ』では、そこまで話さなかったもんね。仲良くなったのは、14年の『ミス・サイゴン』。よくご飯食べに行ったよね。
西川:行ったね~。あの時って、現場にここの年代があんまりいなくて。特に男は木内健人以外みんな先輩だったから俺、ほぼ女の子といたんですよ。アルゴとか『アニー』で女の子のほうが圧倒的に多い環境に慣れてたのもあって、男の先輩と繁華街でワッショイみたいなのより(笑)、女の子と芝居の話とかしてるほうが自然だった。
昆:私も、当時は周りみんな先輩だったから、歳が近かったのが仲良くなったきっかけかな。それから、ずっと仲いいよね? 考えたら、共演ってもう7年くらいしてないのに(笑)。
西川:そんな人、俺マジで一人もいないよ! 共演して仲良くなっても、1年くらい連絡取らないと距離感分かんなくなったりするじゃん。けど昆とは、絶対定期的に会うから。
昆:会ってる会ってる。本当、なかなかないくらい仲がいいですね。
――昆さんと桑原さんは、高校在学中から仲が良かったんですか?
昆:苗字が「くわばら」と「こん」なので。
桑原:そう。3年間、後ろを向けば夏美がいたんです(笑)。めっちゃ喋りまくって、先生からす~ごい怒られてた記憶がある(笑)。
昆:確かにそうだけど! ねえ、もっと美しい思い出があるでしょ!(笑)
桑原:入学式の次の日くらいに、カフェテリアに夏美と二人で行ったこととか?
昆:ええ、そうだっけ? 全然覚えてないわ。
西川:せっかく美しい思い出喋ろうとしてたのに(笑)。
昆:それは覚えてないけど(笑)、当時からあいはほんっとに音楽センスがズバ抜けてて! 教室にグランドピアノがあって、あいに「ねえねえ、あの曲弾いて」って言うと本当に何でも弾いてくれるんです。あと、私の歌の試験の伴奏は3年間、ずっとあいにお願いしてて。大人になったらプロになって一緒に何かやりたいねって、二人でよく話してましたね。……っていう美しい思い出をちゃんと言わないと!(笑)
桑原:ごめん、その試験の練習でも、2時間くらい部屋は取るけど練習するのは15分くらいであとはずっと喋ってたな、とかそういう思い出しか浮かばなくて(笑)。でも、音楽高校って言っても本気でプロを目指してる子はそこまで多くない中で、夏美と私は超本気だったよね。話す熱さが一緒だったことはめっちゃ覚えてる。
昆:ね。いつか一緒にって言ってたことがベースにあるから、コンサートをやる時は、あいはあいで忙しいの分かってるけど絶対1回はお伺いを立てるようにしてて。去年の10周年のコンサートでもあいが音楽監督をしてくれたの、本当に嬉しかったし頼もしかった。
桑原:声かけてくれて、私もすっごい嬉しかったよ。
西川:……ちょっと、美しすぎるな(笑)。
昆:だって本当のことなんだもん!(笑)
西川:そうなんだろうけど(笑)。昆もやっぱり、当時からズバ抜けてたの?
桑原:それはもう、上手いのは当たり前で、なんといってもオーラ、存在感が圧倒的だったと思います。歌う瞬間の爆発力みたいなものは、高校生の私でも気付くくらい違ってた。だから記憶に残ってる。今でも、夏美が高校の時にステージで歌ってた姿は思い出すよ。
昆:ええ~? いやいや……。
桑原:本当に本当に。あと夏美はとにかく、みんなめっちゃ緊張する試験中もずーっとこのまま天真爛漫で、それが私は羨ましかった。でもそういう人だから……『ロミオ&ジュリエット』(2011)が決まった時は、嬉しかったけど、「大丈夫か!?」とも思って(笑)。
昆:あはは! それはね、私のこと分かってる人の反応(笑)。
桑原:『ハムレット』(2012)のオフィーリアとかも、「夏美が儚いヒロイン!?」みたいな(笑)。どっちももちろん大丈夫だったんだけど、最初は心配だったから、『アダムス・ファミリー』(2014)が決まった時は「来た!」って(笑)。
西川:思った思った思った思った! ウェンズデー役の昆はマ~ジで良かったよ。
桑原:分かる分かる。私もあれ観て、「夏美だー(拍手)!」って(笑)。
――ウェンズデーは、観客からすると昆さんの新境地を観た思いのする役でしたが、お二人からすると逆だったのですね(笑)。ちなみに、3人で共演したことは?
西川:俺と桑原がやってる「かららん」のライブ(2018)に、昆がゲスト出演してくれたことはあるんですけど、それくらいかな?
桑原:そうだね、3人で集まること自体あんまりないかも。でも大貴づてに夏美の話聞いたり、夏美づてに大貴の話聞いたりいつもしてるから、今回のリハーサルで久しぶりに集まった時も全く違和感はなくて。
西川:なかったね。この二人に関しては、舞台仲間とか共演者とか友達っていうより……なんかもう“親族”みたいな感じなんですよ(笑)。
桑原:分かる分かる分かるー! めっちゃ分かります。
昆:確かに(笑)。やっぱり喩えが上手いよね、大貴って。
西川:正月に親族が集まったら、今年は来てない従兄弟とかについても話したりするじゃないですか。それと同じ感じだから別に、3人で揃おうが揃うまいが関係ない。
桑原:逆に、ミュージカルの現場で会った時のほうが変な感じになりそうだけど、『サイゴン』の時ってどうだったの? あんなに直接的な絡みが多い役は初めてでしょ。
西川:前回の稽古は段取りがついたくらいで中止になっちゃったから、今回がどうなるかだな。キムとトゥイとしては仲が良すぎるから、ちょっと距離を取りますかね(笑)。
昆:やだー! 悲しい。
西川:嘘うそ(笑)。前回ちょっと稽古しただけでも、昆の目がすごくて俺、ちょっとひるんだんですよ。それくらい役に入ると変わる人だから、普段は今のままで大丈夫かなと。
昆:大貴もすごかったよ! だからまた一緒に稽古できるの、私は楽しみ。
桑原:いちばん辛いのはさ、たぶん私なんだよね。
西川:確かに、親族同士が争うのを観なきゃいけないからね(笑)。
桑原:そうそう(笑)。でも親族の久々の共演なので、つらいけど楽しみです。
親族だから引き出せた、生身の昆夏美をお楽しみに!
――といったあたりで、そろそろ本題の『雨が止まない世界なら』の話に。
桑原:そうか、これからか!
西川:そうよ、“親族大集合”が本題じゃないのよ(笑)。
昆:仲良すぎてごめんなさい(笑)。
――いえいえ(笑)。まずは西川さんから基本的なコンセプトと、昆さんのソロ曲に《We’ re Singin’ in the Rain》を選んだ理由などお聞かせいただけますか?
西川:コロナ禍で演劇が止まってしまった時に、「何かやらねば」となりまして。世界中の人が同じ状況をシェアできてしまってる状況を、“雨が降り続いてる世界”に置き換えて、それぞれの立場で感じてることを歌うソングサイクルにしたら面白いんじゃないか、と思い。実はまだそのアイデアしかない段階の時、昆に電話してるんですよ。
昆:そう。私はそれを聞いて、もちろんコンセプトもめちゃくちゃ素敵だと思ったんですけど、大貴の行動力がほんっとにすごいな!って。『サイゴン』の稽古が止まって何もなくなっちゃったのは大貴も私も同じで、大貴にも私にも同じ時間が流れてるのに、私は何をしてるんだろうって思っちゃうくらいでした。それから、そのアイデアをどんどん形にしていく大貴とあいを見てずっと尊敬してたから、今回参加させてもらえてとても光栄で。
西川:昆には、どこかのタイミングで絶対参加してほしいって最初から思ってました。どれを歌ってもらうかについては、2曲候補があって。桑原と話してる中で、《Singin’ 》に子どもたちの声を入れるってアイデアが浮かんだんですよ。なんの時だっけ?
桑原:あれはもう、本当にふとした時だったと思うよ。
西川:そうだよね。その時に、昆は絶対こっちだって。ソングサイクルということで、1曲の中に起承転結が詰まってて、聴くほうもスタミナを使うような歌が多い中、これは楽に聴ける歌。だからって、のぺ~っとしたただの楽しい曲じゃなく、息が抜けてほろっとするようなものにしたくて、昆ならそういうアプローチができると思ったんです。
――実際にレコーディングをした感想は?
昆:最初は私、歌詞とか曲調とか、子どもたちと歌うっていう話から、明るくてフワフワした感じを勝手にイメージしてたんです。でも大貴から、「♪強がるのは恥ずかしくない」とかそういう歌詞を、上から言うんじゃなく目線を合わせて伝える感じでって言われて変わっていって。あいはあいで、私の性格を分かった上でディレクションしてくれて、本当に分かりやすくて楽しかったですね。二人とも、ほんっとに良いクリエイターだな!って。
西川:やったー(笑)。昆に演出する側として接するのは初めてだったので、どうしたら伝わるのか、俺もやりながら掴んでいったんですけど。野球に喩えると、昆って何か一つディレクションすると、スピードとかパターンじゃなく球種まで変わる感じなんですよ。
昆:……球種って何??
西川:分かんないか(笑)。とりあえず、変化量が人より大きいってこと!
桑原:夏美は、自分の中にちゃんと落とし込んでからじゃないと出さないんだよね。やりながら落とし込んでいくってことをしないから、1回で角度がすごく変わるんだと思う。
昆:そうなんだ。そこは自分では分からないけど、私はとにかく、尊敬する親族の二人が書いた作品に参加させてもらえることが本当に光栄で感慨深くて。絶対に自分も力になりたくて、色々試させてもらっちゃったんですよね。大丈夫? うるさくなかった?
西川:大丈夫です! 確かに、俺たちがOK出してるのに「あのさ、ここさ!」って言ってくることは多かったけど(笑)、腑に落ちてないのにごまかして進まれるより、そのほうがこっちもディレクション出しやすいから。
昆:二人が私のモヤモヤも全部汲み取ってくれるから、それも楽しくて。大貴とあいがお互いを理解し合ってるのも改めて感じたし、すごく貴重な経験でしたね。
西川:そうですね、桑原あいとじゃなきゃこの企画はできなかったなっていうのは僕も思ってます。……どう今の、美しかった?(笑)
桑原:もういいよそこは(笑)。大貴が何をやりたいかは、ちょっとした言動でもう分かるからね。大貴のオーダーを音楽に昇華するのが私の作業だから、逆に大貴の言うことは全部オーダーみたいっていうか、普通の会話のほうが難しくなってる(笑)。
西川:ふはは! それはそうかも(笑)。なんかもう、漫才コンビみたいな感覚だよね!
昆:確かにそんな感じする(笑)。
桑原:ハイどーも~!から始まる感じだよね(笑)。
――ロジャース&ハマースタインみたい、とかではないんですね(笑)。オールキャストによる《世界は変わってない》についても少しお聞きしたいのですが、これはワークショップでは4人で歌われたのが、今回20人編成になるそうですね。
桑原:最初に大貴からオーダーが来た時に、「ソロ曲をツギハギで歌ってるイメージ」って言われたんですよ。でも音楽的にちゃんと“良い曲”にもしたいから、その中でぶつ切りにするにはどうしたらいいんだろうって元々考えていて。4人だと“ぶつ切り感”ってそんなには出ないので、今回やっと本当にぶつ切る時が来たぞって感じでした(笑)。
西川:ははは!「ぶつ切る」(笑)。
桑原:そう(笑)。ずっと考えてたことだから、パート分け自体はすぐできたし大貴とも意見が一致したんですけど、どこを誰に歌ってもらうかはけっこう悩みましたね。大貴とも色々相談したんですけど、「♪さあ味噌汁が冷める 早く食べよう」ってところを夏美にしたのはもう、私が夏美を好きすぎるからで(笑)。
昆:優しいな~。ありがとうね。
桑原:頭の中で夏美の声が鳴ってたんです。それが大貴のディレクションで、もっと膨らんでいったのが今日のレコーディングでした。
西川:あのニュアンスの昆って、形としては残ってないんじゃない?
昆:確かにそうだね! 仕事用の声じゃない(笑)。
西川:皆さんご存知の昆夏美とは違う、親族だから引き出せた、カラオケのソファーで飛び跳ねながら歌ってる昆をお楽しみいただけると思います(笑)。今回って2曲とも、いわゆる昆が「私これ得意」と思ってる曲ではないと思うんですよ。でも、だからこそ零れ落ちるニュアンスみたいなものって絶対あって。生身の昆らしい声が録れたと思ってます。
――確かに、このトークだけでも通常の取材時とは違う、生身の昆さんという感じがしています……(笑)。
西川:そうでしょう? 俺、歌番組とかですごいちゃんとしたコメント言ってる“昆夏美さん”見ると、いっつもなんか微笑んじゃうんですよ(笑)。
桑原:分かるー! 「もっとぶっこめ!」って思うよね(笑)。
西川:そう、「この曲はナントカナントカで……」「それではお聴きください」とかじゃなくて、「ぶっちゃけムズかったっすこれは!」「でもとりあえず頑張ったんで聴いてください!」みたいな、普段の昆バージョンも見てみたい(笑)。
昆:やめてよ恥ずかしい! 人様に暴露しないで!(笑)
西川:なんでよ、いいじゃん!
昆:そっか、いっか! 人柄は隠せないですからね(笑)。
西川:そういうことよ(笑)。『雨が止まない世界なら』は、今日のこの感じの昆夏美さんが飛び出してくるアルバムになってますので、皆さん楽しみにしててください!
取材・文=町田麻子 撮影=鈴木久美子

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