まふまふ 「大きな一歩を踏み出すた
め」の活動休止前ラストライブ・東京
ドーム公演1日目をレポート

ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2022@東京ドーム~『表-OMOTE-』

2022.6.11 東京ドーム
メビウスの輪のように。世における全ての巡りはきっと表裏一体で、ネジレという名の矛盾を常に付随しながら始まりと終わりを幾度となく反芻し続けているのではなかろうか。表はやがて裏へと繋がり、裏もまた何時かは表へと繋がっていく。そんなある種の永遠なる真理を、このたびまふまふというアーティストは東京ドームという晴れやかな大舞台で見事に体現してくれたのである。
「みなさん、こんにちは。まふまふです! いやー、この景色は圧巻ですね。こうやってお客さんがバーッと入ってる東京ドームを観るのは初めてなんですよ。ちなみに、僕がいつもツイートをするとリプライが1000とか2000くらいなので。今回のライブも、1000人くらいしか来てくれないんじゃないかな?って不安だったんです(笑)。おい、みんな見えてるか!(中略)今日は実に2年数ヶ月ぶりの有観客ライブということになりますが、本当にこんなにお集まりいただいてありがとうございます!」(まふまふ)
その尋常ならざる声域と表現力を存分に活かした「神様の遺伝子」を手始めに、この夜のまふまふがステージ上でパフォーマンスを展開していく姿を目にしながら、このとき熱狂のかたわらで深い感慨にふけっていた人も実は多かったのではないかと思う。振り返れば、2020年3月に『ひきこもりでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど2020@東京ドーム~』がコロナ禍勃発の影響により幻のものとなってしまってから、気付けば2年と3ヶ月。
2021年5月には無観客での全世界無料配信ライブが東京ドームから配信されたものの、今回の有観客ライブ『表-OMOTE-』と『裏-URA-』が2デイズというかたちでようやく開催へと至るまでの道程は、決してなだらかなものだではなかっただろう。そのうえ、今回のドーム公演を直前に控えた6月5日には公式に「6月11、12日の東京ドーム公演をもって、まふまふは個人の活動をおやすみします!」と、病気療養を目的とした無期限活動休止が発表されたこともあり、今回のライブはいろいろな意味でまふまふ本人にとってはもちろんのこと、彼の活動を支持してきた多くのファンにとっても非常に大きな節目となったことは間違いないはずだ。
まふまふ
「今日はライブのタイトルが『表-OMOTE-』となっているとおり、明るくハッピーな曲をいっぱいやろうと思ってるんだ。だから、明日とは全然セトリが違うの。多分、こういうライブって初めてなんじゃないかな?とか言いながら、次にやるのは普通に暗い曲なんだけど(笑)。このライブのために新曲を持ってきました。聴いてください、「エグゼキューション」」(まふまふ)
この新曲については既に6月13日より公式YouTubeチャンネルにて公開済となっているが、執行の意を持つタイトルにしても、何かと意味深な表現や〈裏返した夢の夢〉〈裏表〉といったフレーズがちりばめられた歌詞世界、ドラマティックにして複雑な曲調など、全編からそこはかとなく“まふまふのこれまでと今現在の心境、そしてこれからに向けての思惑”までが滲んでくるようなつくりになっているところが見受けられ、まさに“このライブのために”作られた意味が我々の胸へひしひしと伝わってきた。
もちろん、この後には軽やかな調べで切ない恋模様を描いた「携帯恋話」、これから訪れる夏の季節を予感させる「快晴のバスに乗る」をはじめとした『表-OMOTE-』にこそふさわしい曲もあれこれと連打されたほか、「ひともどき」と「栞」ではまふまふが自らギターを弾きながら歌うことで、彼のボーカリストとしての面だけではなくミュージシャンでもあるという部分もいかんなく発揮されることに。
そればかりか、この第1夜『表-OMOTE-』では本編後半にてシークレットゲスト・そらるが登場することになり、まふまふと共にAfter the Rainの楽曲をふたりで久しぶりに生披露するという特別なはからいが実現する一幕もはさまれ、これには場内から“発声禁止ゆえの押し殺したような歓声の気配”が感じられたことをここにご報告しておこう。特に、アニメポケモンの主題歌としても有名な楽曲「1・2・3」のエンディング部分で彼らがステージにしつらえられた花道の先端まで出て、笑顔で歌いながら互いに〈キミにきめた!〉と指差しあった胸熱な場面は、After the Rainのファンにとって極上なエモさが溢れていたとしか言い様がない。
「凄いね、ここ。地元の街より人がいるよ(笑)」(そらる)
「今日は楽しい世界をライブで表現したいなと思った時、僕にとって楽しかった場所ってどこだろう?って考えたら、絶対そこにはそらるさんがいたんですよ。だから、出て欲しいなって思って。出てくれなかったらちょっとどうしよう?って思ってたんです」(まふまふ)
「断んないけど。でも、別にいい時ばかり、楽しいことだけでもないよ。それこそ、病める時も健やかなる時も、一緒にやってきた。とりあえず、今日はあまり出しゃばらないように引き立て役として短い間ですが、最後まで精一杯歌います」(そらる)
気の置けない間柄であることがよくわかる微笑ましいやりとりを交えつつ、ここでの彼らはAfter the Rainとして計3曲を伸びやかに歌い上げてくれたのだが、そらるは去り際にさらりと以下のような言葉を残してくれたのだった。
「これが最後じゃないと思うし、ふたりでまたステージに上がることもあると思うので、その時は会いに来てください。ありがとう」(そらる)
なお、そらるを見送ったあとにはまふまふが“正直今日を迎えるのはとても不安だったが、そらるさんが来てくれて顔を見た途端に安心して勇気づけられた”というリアルなエピソードを披露することになり、それにくわえて将来に向けての前向きな言葉をそこに重ねてみせたのも印象深い場面だった。
「いつもそらるさんには支えられてるなぁ、と思います。だから、またふたりでみんなの前でライブをする日が来たら良いなと思ってるんです。僕もまた歩み出せるように頑張るので、今後ともよろしくお願いします!」(まふまふ)
そしてこの後には、東京ドームの中にまふまふの歌と視覚演出によって銀河の光景が生み出された「水彩銀河のクロニクル」や、ファンタジックな小宇宙へとオーディエンスをトリップさせてくれた「君のくれたアステリズム」、近付いてきた七夕を思わせる「夜空のクレヨン」で本編が一旦は締めくくられたものの、なんとアンコールではまふまふがまふてるデザインのプチ気球に乗り込み、ドーム内を1周しながら「すーぱーぬこになれんかった」と「女の子になりたい」を歌うという、スーパーアイドル級のファンサも実施されたのだった。
まふまふ
「まふまふになって11年。その11年が僕の全てだとずーっと思ってたし、今でも思ってる。でも、僕が生まれてからのこの30年間はつらかったこともあったけど、今回の活動休止を発表した時に昔の友だちとか仲間から連絡をもらったりした時に、ちゃんと全てはつながってるんだなって思ったの。今こうして僕が歩みを止めるのは、皆が何の為に寝るのかっていうのとおそらく一緒です。次の朝にまた元気に起きて歩き出すためだと思うんだ。僕がお休みするのは、また皆と強い一歩、大きな一歩を踏み出すためです。だから、ちょっとゆっくり休んできます。ただ、戻って来た時は最強になってるから。よろしくな!」(まふまふ)
まふまふがアンコールの最後で、この言葉を述べてから歌った「眠れる森のシンデレラ」。それはこれからひとときの眠りにつこうとしている自身をどこかで象徴したものであると同時に、歌詞の中の〈好きだよ〉という言葉はそのままオーディエンスに向けられているものでもあるように感じたのは、筆者の考えすぎだろうか。
華やかなるかたちで幕を閉じた『ひきこもりたちでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど 2022@東京ドーム~『表-OMOTE-』』が、翌日の『ひきこもりたちでもLIVEがしたい!~すーぱーまふまふわーるど 2022@東京ドーム~『裏-URA-』』へと繋がっていった時、さらなる真理がいかにして生まれたのか。それについては、また次の記事にてお伝えすることとしよう。

Text by 杉江由紀
Photos by 小松陽祐[ODD JOB] / 堀卓朗[ELENORE] / 加藤千絵 [CAPS] / 岡部守郎 / 飯岡拓也 [Tenrich]

SPICE

SPICE(スパイス)は、音楽、クラシック、舞台、アニメ・ゲーム、イベント・レジャー、映画、アートのニュースやレポート、インタビューやコラム、動画などHOTなコンテンツをお届けするエンターテイメント特化型情報メディアです。

新着