INTERVIEW / NIKO NIKO TAN TAN 「現
時点での答えであり、聴いてくれる人
たちへの新たな問いかけ」――BIGYU
KIやCLW参加のEP『?』に込められた想

NIKO NIKO TAN TANが1st EP『?』(読み:クエスチョン)を6月29日(水)にリリースした。
音楽と映像を全てメンバー内で自作するクリエイティブ・ミクスチャー・ユニット、NIKO NIKO TAN TAN。今作には昨年から今年にかけてコンスタントに発表されたシングル曲に加え、BIGYUKIやカメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-参加の新録曲も含む全7曲を収録。既発曲には新たにミックス/マスタリングが施されており、より進化した音像を展開している。ユニークな音色や展開などはそのままに、より外へ開けたような風通しのよさと、求心力の高いポップネスを湛えた作品となった。
今回も音楽担当のOchanとAnabebeにインタビュー。今夏には『FUJI ROCK FESTIVAL’22』にも出演決定。昨年からの勢いそのままに、今まさに羽ばたかんとしているNIKO NIKO TAN TANの現在地を訊いた。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi(https://www.instagram.com/maho_korogi/?hl=ja)
レコーディングで変化したドラムの打点とグルーヴ
――昨年は3ヶ月連続シングルのリリースと、初のワンマン公演も開催しました。それ以降のNIKO NIKO TAN TANはどのような状況ですか?
Ochan:去年、色々な動きを見せれたからか、最近――特に「水槽」をリリースして以降は多くの人に聴いてもらっているんだなという実感を得られることが多いです。それは再生数などの数字的な面でも感じますし、ライブでも「あ、曲を知ってくれてるんだな」と思える瞬間が増えて。
Anabebe:そういうことを実感することによって、純粋にモチベーションも上がりますね。
Ochan:そうだね。改めて、もっと広いところへ向けて発信したいという気持ちが強くなってきたと思います。それは曲作りでもライブにおいても言えることで。
――今年に入ってからはLIQUIDROOMでのイベント出演やドミコのツアーに出演したりと、ライブの規模も大きくなっていますよね。何か意識などは変化しましたか?
Ochan:気持ち的には変わらないと思いますね。
Anabebe:演出面ではこれまではやっていなかった“煽り”を入れてみたりしたので、それは変化のひとつなんじゃないかな。
Ochan:確かに。2人で変な踊りを入れてみました(笑)。それは前よりも反応をくれる方が増えたことで起きた変化なのかもしれません。前だったら怖くてできなかったと思うし、我々のメンタルもちょっとは強くなったと思うので。
――バンドでの活動に加えて、OchanさんはTempalayのサポートも務めるようになりましたよね。
Ochan:Tempalayの綾斗はNIKO NIKO TAN TANを組む前からの友人で。会わない期間も長かったんですけど、今年の頭くらいに久しぶりに連絡をもらって、ワンマンのサポートをやらせてもらいました。自分たちのライブとは違って、サポートではいち構成員としてプレイヤーに徹することができるので、また違った体験というか、得るものがありますね。それをNIKO NIKO TAN TANにも還元できたらいいなと思います。
Anabebe:しかも、Ochanが初めてサポートを務めた翌日がちょうど「水槽」のリリース日で。
Ochan:そうそう。そのおかげで知ってくれた方も多いと思いますし、ありがたいです。
――今回のEP『?』には新曲が3曲収録されていますが、一番最初にできたのはどの曲になりますか?
Ochan:「多分、あれはFly」ですね。かなり初期からあった曲で、ライブでは披露していたんです。音源化もしたかったんですけど、なかなかタイミングがなかったというか。これまではシングル中心のリリースだったんですけど、この曲はシングルというイメージではなかったんですよね。わかりやすいキャッチーさはあまりないかもしれないけど、自分たちにとっては大事な曲というか、他の曲と並ぶことで真価を発揮する曲という感じです。
――作った当時のことを覚えていますか?
Ochan:何年前かもう忘れてしまったんですけど、メインのシンセ・リフになっているフレーズが頭に浮かんできて、サウンドはそこから肉付けしていきました。
Anabebe:あのリフ、Daft Punkっぽさもあって好きやわ。
Ochan:あのリフはソフト・シンセで二胡の音色にアルペジエーターというエフェクトをかけて作りました。
Anabebe:あれ二胡の音なんや。知らんかった。
Ochan:そうそう。オリエンタルな雰囲気が好きで、「多分、あれはFly」は二胡の音色で統一しています。
――ドラムやビートの面ではいかがですか?
Anabebe:最初はもっと細かい16ビートだったんですけど、今回のレコーディングでシンプルな8ビートに変更したんです。結果としてノリやすくなったんじゃないかなと。
――どのような流れでリズム・パターンの変更に至ったのでしょうか。
Anabebe:今回レコーディングを担当してくれたエンジニアの吉川(昭仁)さんという方が凄腕のドラマーということもあり、最初に軽く叩いてみたら「全然違う」「ダンス・ミュージックとは何なのかわかってない」と言われ(笑)。正直、今回の新曲3曲に関しては、吉川さんにディレクションしてもらったと言っても過言ではない。
Ochan:ドラム・ディレクションっていう感じだよね。
Anabebe:もちろんベーシックな部分は自分で作ったんですけど、吉川さんからアドバイスをもらったことでかなりカッコよくなったと思います。パンチイン(録音したテイクの一部分だけを上書き録音すること)などはせずに、1曲に10時間くらいかけてレコーディングしていきました。
――でも、その経験ってライブにも活かされそうですね。
Anabebe:そうなんですよ。それまではスネアやキックの打点をあまり意識できていなかったということに気付かされて。ビートは打点がめちゃくちゃ大事だっていうことをレコーディングで叩き込まれたので、ライブでもすごく意識するようになりました。
――それがグルーヴに影響してくると。
Ochan:だいぶ変わりましたね。「水槽」のドラムの入りとか、一打目から全然違うなって感じます。一気に引き込まれるようなドラムになったなと。
――「多分、あれはFly」の歌詞はどのように作っていったのでしょうか。
Ochan:フックの《多分、あれはFly》というラインが何となく浮かんできて、Samsonがそこから歌詞を膨らませていきました。初期の頃の作り方は今とは少し違って、言葉遊びの要素が多いんです。実は裏テーマもあるんですけど、それは内緒ということで(笑)。
無意識下で共有していた“夜明け”
――先ほどからお話に上がっている「水槽」の制作についても教えてもらえますか。
Ochan:「水槽」は一部、フックの部分だけめちゃくちゃ前からストックしてあって。なかなかそれを活かせるような構成、展開が作れなくて。
Anabebe:色々なパターンあったな。
Ochan:何回も作り直して、Anabebeに送ってたんですけど、彼は微妙な曲だと返信しないんですよ(笑)。一向にしっくりくるものが作れなくて、お蔵入りにしようかなとも思ったんですけど、やっぱり未練があって。去年のワンマン終わりに、これで最後だと思って作りました。デモにはいつもめちゃくちゃ適当な仮タイトルを作って送るんですけど、「アメリカver.」みたいなタイトルでAnabebeに送ったらまた返信がなくて(笑)。
Anabebe:「お、新曲か」と思って聴いたらまたあのフックで(笑)。
Ochan:自分の中ではもうこれでいこうと考えていたので、Anabebeに電話したんですよ。そしたら「もう色々聴きすぎてようわからん」って言われ(笑)。
Anabebe:「Life Goes On」みたいなタイトルが付いたバージョンもあったよな。
Ochan:あったね。あれはお店で2Pacの「Life Goes On」を久しぶりに耳にして、めっちゃいい曲だなと思ってそのメロウなテイストを落とし込みました。それが思いの外反応よかったので、自分なりにアップデートしたバージョンが、結果として「水槽」になりました。
――アレンジやサウンド・プロダクションではどのようなことを心掛けていましたか?
Ochan:冬に作ったということもあって、どこかメロウで切ない感じの曲にしたくて。歌メロを活かすためにあまりガチャガチャとさせずにシンプルな構成にしました。あとはエレピの音がずっと鳴り続けているんですけど、普段は色々な音を盛り込むことが多いのに対して、この曲はミニマルなバンド構成でも成立するような、人間味溢れるアレンジになったんじゃないかなと思います。
――NIKO NIKO TAN TANとしてはあまりなかったタイプの曲というか。
Ochan:珍しいタイプの曲ですね。ラスサビ前のブリッジに変化を付けて、山場みたいな感じにしました。
――「水槽」というタイトル、そしてテーマはどのようにして生まれたのでしょうか。
Ochan:最初は別のタイトルが付いていたんですけど、ニッチな感じではなく誰に対しても開かれているようなイメージがあったので、それに適したテーマやタイトルをチームで話し合った結果、生まれてきました。MVもSamsonのアイディア一発勝負という感じで。
――残る2つの新曲はどちらもコラボレーション作品となっていますよね。まずはBIGYUKIさんが参加した「The Dawn」の制作ついて教えてもらえますか?
Ochan:これもエンジニアの吉川さんのおかげで。スタジオでのレコーディングがいい感じに終わったんですけど、何か物足りないなと。もうひとレイヤー欲しいよねっていう話になったとき、吉川さんが「いい人おんねん」って言っていきなり電話し始めて、「今空いてる? ちょっと来てくれん?」って言ってスタジオに現れたのがBIGYUKIさんで。
――それはヤバいですね(笑)。
Ochan:たまたま同じビルのスタジオに入っていたみたいなんです。その日は僕らの曲を聴いてもらって、「もし機会があれば……」っていう感じで帰られたんですけど、翌日また来てくれました。
――BIGYUKIさんのレコーディングはいかがでしたか?
Ochan:簡易的なコード譜だけ書いてお渡ししたんですけど、それを見たら「OK! じゃあセクション毎に録っていこうか」って言われて。吉川さんとも親交が深いので、とにかくスピーディーに進んでいきました。
Anabebe:僕らの曲を1曲聴いただけでどんどんアイディアを投げてくれて。
Ochan:「こんなんどう?」「嫌だったら言ってね」って気遣いもありつつ。僕らもそのまま残したいフレーズなどはお伝えして、あとは自由に弾いてくださいってお願いしました。シンセベースもその場で入れて頂いて、全体で1時間くらいで終わったんじゃないですかね。そこから吉川さんと一緒に編集したりアレンジしていって完成させました。
――歌詞はどのようなイメージを共有していますか?
Ochan:この歌詞はSamsonが僕らのことを題材にして書いてくれて。夢だったり音楽だったり、何かにしがみついている主人公がいて、曲が進むにつれて1歩ずつ歩んでいくというか。それが始まりでもあり、夜明け(Dawn)であると。
……後で気がついてハッとしたんですけど、そもそもこの曲は大晦日の除夜の鐘のようなインパクトのある曲にしたいなと思って作っていて、イントロの感じとかは思いっきり意識してるんです。夜明けというのはそのイメージにも繋がるし、もうひとつ、自分が2年前くらいに計画をしていた3度目の個展のタイトルが『Gathering The Dawn』だったんです。結局コロナ禍で中止になってしまったんですけど、その当時も「これからがスタートだ」という同じようなことを考えていたんですよね。偶然の一致なんですけど、そういうこともあってこの曲は「イケるな」って思ったんですよね。
――夜明け、つまりは新たなスタートを切るという雰囲気やムードがNIKO NIKO TAN TAN全体としても漂っていたからこそ生まれた作品だと言えそうですね。
Ochan:具体的にそういったことを話し合ったことはないんですけど、そういったことを自然とみんなが感じていたのかもしれません。
「創作という行為は自分に対する問いかけ」
――では、カメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-さんをフィーチャーした「胸騒ぎ」についても教えて下さい。そもそもカメレオン・ライム・ウーピーパイ、そしてChi-さんとの出会いは?
Ochan:カメレオン・ライム・ウーピーパイとは2〜3年前くらいに対バンしたことがあって。ライブを観て、Chi-ちゃんの声が好きなテイストだったのですぐに一緒に曲をやりたいなと思いました。それ以降も何度か考えは浮かんできたんですけど、タイミングが合わず。今回ようやく実現したという形ですね。
――最初からChi-さんが参加する前提で曲を作っていたのでしょうか。
Ochan:Chi-ちゃんありきで作りました。それこそ最初は僕は歌わない想定で、全部Chi-ちゃんに歌ってもらおうと思ってたんです。それがレコーディング中に、掛け合いにした方がいいんじゃないかというアイディアが出てきて、変更しました。彼女の声質やアイコンちっくな存在感に合うようなパーティ・ソングを想定して作ったので、自分たちとしても今までなかったタイプの曲に挑戦できたんじゃないかなと思います。
――ラップ調のボーカルや言葉遊びが散りばめられた歌詞も印象的です。
Ochan:《まるでジノビリ》とか《Ask Hey Siri?》といった固有名詞を使ったり、《everybody gotta be B・A・D》と歌ったり。この不安定な世の中について綴っています。この世の中に対する皮肉というか。
――出だしのChi-さんのフロウも低空飛行な感じで新鮮ですよね。
Ochan:低空飛行からのフックで開ける感じが気に入っています。
――ラスサビの前のアグレッシブなドラムも耳を引きますが、Anabebeさん的に意識したことは?
Anabebe:これはロックなイメージで叩きました。
Ochan:これもレコーディングで変わったよね。デモはもうちょっと軽やかな感じだったんです。
Anabebe:吉川さんのディレクションを受けて激しめのドラムに変化させました。
――このインタビューが掲載される頃にはMVも公開予定だとか。
Ochan:アメリカ風のモーテルを舞台に、そこの従業員に扮した俺ら2人とChi-ちゃんが閉店後のフロアでパーティを繰り広げるという感じで、さっきお話した歌詞の部分ともリンクする作品になっていると思います。
――最後になってしまいましたが、このEPのタイトル『?』にはどのような想いが込められているのでしょうか。
Ochan:作品は外の世界に対する問いかけであり、創作という行為は自分に対する問いかけだと考えていて。ひとつ作品を完成させたらまた新しい問いかけが出てきて、答えを探し続けなければいけない。それが大事なことだと思うんですよね。なので、この作品はNIKO NIKO TAN TANを結成してから自分たちに問いかけてきたことに対する現時点での答えであり、聴いてくれる人たちへの新たな問いかけ。そういったイメージで『?』というタイトルを付けました。
――この作品を発表した後も、自問自答は続いていくと。
Ochan:そうですね。このEPは今の僕らを切り取った作品という感じなので。環境が変わればまた異なるクエスチョンが生まれてくると思うので、それに向き合って答えを導き出していく。それが音楽家としての在り方なのかなって思います。
――なるほど。今後について具体的な目標などはありますか?
Anabebe:Zeppワンマン・ツアーとかやりたいですね。せっかく映像チームもいるんだから、VJもがっつり入れてライブしたいです。
【リリース情報】
==
※7インチ・レコード
【イベント情報】
2022年11月3日(木・祝) at 東京・渋谷 WWW X
2022年11月13日(日) at 大阪・梅田Shangri-La
■ チケット詳細(https://l-tike.com/nikonikotantan/)
■ NIKO NIKO TAN TAN オフィシャル・サイト(https://www.nikonikotantan.com/)
NIKO NIKO TAN TANが1st EP『?』(読み:クエスチョン)を6月29日(水)にリリースした。
音楽と映像を全てメンバー内で自作するクリエイティブ・ミクスチャー・ユニット、NIKO NIKO TAN TAN。今作には昨年から今年にかけてコンスタントに発表されたシングル曲に加え、BIGYUKIやカメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-参加の新録曲も含む全7曲を収録。既発曲には新たにミックス/マスタリングが施されており、より進化した音像を展開している。ユニークな音色や展開などはそのままに、より外へ開けたような風通しのよさと、求心力の高いポップネスを湛えた作品となった。
今回も音楽担当のOchanとAnabebeにインタビュー。今夏には『FUJI ROCK FESTIVAL’22』にも出演決定。昨年からの勢いそのままに、今まさに羽ばたかんとしているNIKO NIKO TAN TANの現在地を訊いた。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi(https://www.instagram.com/maho_korogi/?hl=ja)
レコーディングで変化したドラムの打点とグルーヴ
――昨年は3ヶ月連続シングルのリリースと、初のワンマン公演も開催しました。それ以降のNIKO NIKO TAN TANはどのような状況ですか?
Ochan:去年、色々な動きを見せれたからか、最近――特に「水槽」をリリースして以降は多くの人に聴いてもらっているんだなという実感を得られることが多いです。それは再生数などの数字的な面でも感じますし、ライブでも「あ、曲を知ってくれてるんだな」と思える瞬間が増えて。
Anabebe:そういうことを実感することによって、純粋にモチベーションも上がりますね。
Ochan:そうだね。改めて、もっと広いところへ向けて発信したいという気持ちが強くなってきたと思います。それは曲作りでもライブにおいても言えることで。
――今年に入ってからはLIQUIDROOMでのイベント出演やドミコのツアーに出演したりと、ライブの規模も大きくなっていますよね。何か意識などは変化しましたか?
Ochan:気持ち的には変わらないと思いますね。
Anabebe:演出面ではこれまではやっていなかった“煽り”を入れてみたりしたので、それは変化のひとつなんじゃないかな。
Ochan:確かに。2人で変な踊りを入れてみました(笑)。それは前よりも反応をくれる方が増えたことで起きた変化なのかもしれません。前だったら怖くてできなかったと思うし、我々のメンタルもちょっとは強くなったと思うので。
――バンドでの活動に加えて、OchanさんはTempalayのサポートも務めるようになりましたよね。
Ochan:Tempalayの綾斗はNIKO NIKO TAN TANを組む前からの友人で。会わない期間も長かったんですけど、今年の頭くらいに久しぶりに連絡をもらって、ワンマンのサポートをやらせてもらいました。自分たちのライブとは違って、サポートではいち構成員としてプレイヤーに徹することができるので、また違った体験というか、得るものがありますね。それをNIKO NIKO TAN TANにも還元できたらいいなと思います。
Anabebe:しかも、Ochanが初めてサポートを務めた翌日がちょうど「水槽」のリリース日で。
Ochan:そうそう。そのおかげで知ってくれた方も多いと思いますし、ありがたいです。
――今回のEP『?』には新曲が3曲収録されていますが、一番最初にできたのはどの曲になりますか?
Ochan:「多分、あれはFly」ですね。かなり初期からあった曲で、ライブでは披露していたんです。音源化もしたかったんですけど、なかなかタイミングがなかったというか。これまではシングル中心のリリースだったんですけど、この曲はシングルというイメージではなかったんですよね。わかりやすいキャッチーさはあまりないかもしれないけど、自分たちにとっては大事な曲というか、他の曲と並ぶことで真価を発揮する曲という感じです。
――作った当時のことを覚えていますか?
Ochan:何年前かもう忘れてしまったんですけど、メインのシンセ・リフになっているフレーズが頭に浮かんできて、サウンドはそこから肉付けしていきました。
Anabebe:あのリフ、Daft Punkっぽさもあって好きやわ。
Ochan:あのリフはソフト・シンセで二胡の音色にアルペジエーターというエフェクトをかけて作りました。
Anabebe:あれ二胡の音なんや。知らんかった。
Ochan:そうそう。オリエンタルな雰囲気が好きで、「多分、あれはFly」は二胡の音色で統一しています。
――ドラムやビートの面ではいかがですか?
Anabebe:最初はもっと細かい16ビートだったんですけど、今回のレコーディングでシンプルな8ビートに変更したんです。結果としてノリやすくなったんじゃないかなと。
――どのような流れでリズム・パターンの変更に至ったのでしょうか。
Anabebe:今回レコーディングを担当してくれたエンジニアの吉川(昭仁)さんという方が凄腕のドラマーということもあり、最初に軽く叩いてみたら「全然違う」「ダンス・ミュージックとは何なのかわかってない」と言われ(笑)。正直、今回の新曲3曲に関しては、吉川さんにディレクションしてもらったと言っても過言ではない。
Ochan:ドラム・ディレクションっていう感じだよね。
Anabebe:もちろんベーシックな部分は自分で作ったんですけど、吉川さんからアドバイスをもらったことでかなりカッコよくなったと思います。パンチイン(録音したテイクの一部分だけを上書き録音すること)などはせずに、1曲に10時間くらいかけてレコーディングしていきました。
――でも、その経験ってライブにも活かされそうですね。
Anabebe:そうなんですよ。それまではスネアやキックの打点をあまり意識できていなかったということに気付かされて。ビートは打点がめちゃくちゃ大事だっていうことをレコーディングで叩き込まれたので、ライブでもすごく意識するようになりました。
――それがグルーヴに影響してくると。
Ochan:だいぶ変わりましたね。「水槽」のドラムの入りとか、一打目から全然違うなって感じます。一気に引き込まれるようなドラムになったなと。
――「多分、あれはFly」の歌詞はどのように作っていったのでしょうか。
Ochan:フックの《多分、あれはFly》というラインが何となく浮かんできて、Samsonがそこから歌詞を膨らませていきました。初期の頃の作り方は今とは少し違って、言葉遊びの要素が多いんです。実は裏テーマもあるんですけど、それは内緒ということで(笑)。
無意識下で共有していた“夜明け”
――先ほどからお話に上がっている「水槽」の制作についても教えてもらえますか。
Ochan:「水槽」は一部、フックの部分だけめちゃくちゃ前からストックしてあって。なかなかそれを活かせるような構成、展開が作れなくて。
Anabebe:色々なパターンあったな。
Ochan:何回も作り直して、Anabebeに送ってたんですけど、彼は微妙な曲だと返信しないんですよ(笑)。一向にしっくりくるものが作れなくて、お蔵入りにしようかなとも思ったんですけど、やっぱり未練があって。去年のワンマン終わりに、これで最後だと思って作りました。デモにはいつもめちゃくちゃ適当な仮タイトルを作って送るんですけど、「アメリカver.」みたいなタイトルでAnabebeに送ったらまた返信がなくて(笑)。
Anabebe:「お、新曲か」と思って聴いたらまたあのフックで(笑)。
Ochan:自分の中ではもうこれでいこうと考えていたので、Anabebeに電話したんですよ。そしたら「もう色々聴きすぎてようわからん」って言われ(笑)。
Anabebe:「Life Goes On」みたいなタイトルが付いたバージョンもあったよな。
Ochan:あったね。あれはお店で2Pacの「Life Goes On」を久しぶりに耳にして、めっちゃいい曲だなと思ってそのメロウなテイストを落とし込みました。それが思いの外反応よかったので、自分なりにアップデートしたバージョンが、結果として「水槽」になりました。
――アレンジやサウンド・プロダクションではどのようなことを心掛けていましたか?
Ochan:冬に作ったということもあって、どこかメロウで切ない感じの曲にしたくて。歌メロを活かすためにあまりガチャガチャとさせずにシンプルな構成にしました。あとはエレピの音がずっと鳴り続けているんですけど、普段は色々な音を盛り込むことが多いのに対して、この曲はミニマルなバンド構成でも成立するような、人間味溢れるアレンジになったんじゃないかなと思います。
――NIKO NIKO TAN TANとしてはあまりなかったタイプの曲というか。
Ochan:珍しいタイプの曲ですね。ラスサビ前のブリッジに変化を付けて、山場みたいな感じにしました。
――「水槽」というタイトル、そしてテーマはどのようにして生まれたのでしょうか。
Ochan:最初は別のタイトルが付いていたんですけど、ニッチな感じではなく誰に対しても開かれているようなイメージがあったので、それに適したテーマやタイトルをチームで話し合った結果、生まれてきました。MVもSamsonのアイディア一発勝負という感じで。
――残る2つの新曲はどちらもコラボレーション作品となっていますよね。まずはBIGYUKIさんが参加した「The Dawn」の制作ついて教えてもらえますか?
Ochan:これもエンジニアの吉川さんのおかげで。スタジオでのレコーディングがいい感じに終わったんですけど、何か物足りないなと。もうひとレイヤー欲しいよねっていう話になったとき、吉川さんが「いい人おんねん」って言っていきなり電話し始めて、「今空いてる? ちょっと来てくれん?」って言ってスタジオに現れたのがBIGYUKIさんで。
――それはヤバいですね(笑)。
Ochan:たまたま同じビルのスタジオに入っていたみたいなんです。その日は僕らの曲を聴いてもらって、「もし機会があれば……」っていう感じで帰られたんですけど、翌日また来てくれました。
――BIGYUKIさんのレコーディングはいかがでしたか?
Ochan:簡易的なコード譜だけ書いてお渡ししたんですけど、それを見たら「OK! じゃあセクション毎に録っていこうか」って言われて。吉川さんとも親交が深いので、とにかくスピーディーに進んでいきました。
Anabebe:僕らの曲を1曲聴いただけでどんどんアイディアを投げてくれて。
Ochan:「こんなんどう?」「嫌だったら言ってね」って気遣いもありつつ。僕らもそのまま残したいフレーズなどはお伝えして、あとは自由に弾いてくださいってお願いしました。シンセベースもその場で入れて頂いて、全体で1時間くらいで終わったんじゃないですかね。そこから吉川さんと一緒に編集したりアレンジしていって完成させました。
――歌詞はどのようなイメージを共有していますか?
Ochan:この歌詞はSamsonが僕らのことを題材にして書いてくれて。夢だったり音楽だったり、何かにしがみついている主人公がいて、曲が進むにつれて1歩ずつ歩んでいくというか。それが始まりでもあり、夜明け(Dawn)であると。
……後で気がついてハッとしたんですけど、そもそもこの曲は大晦日の除夜の鐘のようなインパクトのある曲にしたいなと思って作っていて、イントロの感じとかは思いっきり意識してるんです。夜明けというのはそのイメージにも繋がるし、もうひとつ、自分が2年前くらいに計画をしていた3度目の個展のタイトルが『Gathering The Dawn』だったんです。結局コロナ禍で中止になってしまったんですけど、その当時も「これからがスタートだ」という同じようなことを考えていたんですよね。偶然の一致なんですけど、そういうこともあってこの曲は「イケるな」って思ったんですよね。
――夜明け、つまりは新たなスタートを切るという雰囲気やムードがNIKO NIKO TAN TAN全体としても漂っていたからこそ生まれた作品だと言えそうですね。
Ochan:具体的にそういったことを話し合ったことはないんですけど、そういったことを自然とみんなが感じていたのかもしれません。
「創作という行為は自分に対する問いかけ」
――では、カメレオン・ライム・ウーピーパイのChi-さんをフィーチャーした「胸騒ぎ」についても教えて下さい。そもそもカメレオン・ライム・ウーピーパイ、そしてChi-さんとの出会いは?
Ochan:カメレオン・ライム・ウーピーパイとは2〜3年前くらいに対バンしたことがあって。ライブを観て、Chi-ちゃんの声が好きなテイストだったのですぐに一緒に曲をやりたいなと思いました。それ以降も何度か考えは浮かんできたんですけど、タイミングが合わず。今回ようやく実現したという形ですね。
――最初からChi-さんが参加する前提で曲を作っていたのでしょうか。
Ochan:Chi-ちゃんありきで作りました。それこそ最初は僕は歌わない想定で、全部Chi-ちゃんに歌ってもらおうと思ってたんです。それがレコーディング中に、掛け合いにした方がいいんじゃないかというアイディアが出てきて、変更しました。彼女の声質やアイコンちっくな存在感に合うようなパーティ・ソングを想定して作ったので、自分たちとしても今までなかったタイプの曲に挑戦できたんじゃないかなと思います。
――ラップ調のボーカルや言葉遊びが散りばめられた歌詞も印象的です。
Ochan:《まるでジノビリ》とか《Ask Hey Siri?》といった固有名詞を使ったり、《everybody gotta be B・A・D》と歌ったり。この不安定な世の中について綴っています。この世の中に対する皮肉というか。
――出だしのChi-さんのフロウも低空飛行な感じで新鮮ですよね。
Ochan:低空飛行からのフックで開ける感じが気に入っています。
――ラスサビの前のアグレッシブなドラムも耳を引きますが、Anabebeさん的に意識したことは?
Anabebe:これはロックなイメージで叩きました。
Ochan:これもレコーディングで変わったよね。デモはもうちょっと軽やかな感じだったんです。
Anabebe:吉川さんのディレクションを受けて激しめのドラムに変化させました。
――このインタビューが掲載される頃にはMVも公開予定だとか。
Ochan:アメリカ風のモーテルを舞台に、そこの従業員に扮した俺ら2人とChi-ちゃんが閉店後のフロアでパーティを繰り広げるという感じで、さっきお話した歌詞の部分ともリンクする作品になっていると思います。
――最後になってしまいましたが、このEPのタイトル『?』にはどのような想いが込められているのでしょうか。
Ochan:作品は外の世界に対する問いかけであり、創作という行為は自分に対する問いかけだと考えていて。ひとつ作品を完成させたらまた新しい問いかけが出てきて、答えを探し続けなければいけない。それが大事なことだと思うんですよね。なので、この作品はNIKO NIKO TAN TANを結成してから自分たちに問いかけてきたことに対する現時点での答えであり、聴いてくれる人たちへの新たな問いかけ。そういったイメージで『?』というタイトルを付けました。
――この作品を発表した後も、自問自答は続いていくと。
Ochan:そうですね。このEPは今の僕らを切り取った作品という感じなので。環境が変わればまた異なるクエスチョンが生まれてくると思うので、それに向き合って答えを導き出していく。それが音楽家としての在り方なのかなって思います。
――なるほど。今後について具体的な目標などはありますか?
Anabebe:Zeppワンマン・ツアーとかやりたいですね。せっかく映像チームもいるんだから、VJもがっつり入れてライブしたいです。
【リリース情報】
==
※7インチ・レコード
【イベント情報】
2022年11月3日(木・祝) at 東京・渋谷 WWW X
2022年11月13日(日) at 大阪・梅田Shangri-La
■ チケット詳細(https://l-tike.com/nikonikotantan/)
■ NIKO NIKO TAN TAN オフィシャル・サイト(https://www.nikonikotantan.com/)

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