『THE BLUE HEARTS』/THE BLUE HEARTS

『THE BLUE HEARTS』/THE BLUE HEARTS

THE BLUE HEARTSのデビュー作
『THE BLUE HEARTS』は
リスナーの人生を変えてしまうような
力を持ったアルバムだ

アルバム『THE BLUE HEARTS』

 このアルバム『THE BLUE HEARTS』は12曲で収録時間は約34分。楽曲は概ね3コードのR&Rで、テクニカルな演奏を鼓舞するような箇所や過度なエフェクトはほとんど見られない。歌詞は素晴らしいものばかりだが、難しい言葉は使われていない。シンプルな作品と言っていいと思う。しかし、このアルバムには間違いなく、何かとてつもない成分が入っている。特別な音が入っているということではない(人に聴こえない周波数に何かが収録されているようなこともないだろう)。いいメロディーといい歌詞、ギター、ベース、ドラムの3ピースが醸し出す確かなグルーブ、それらが合わさって産まれるバンドマジックと言ってしまえば簡単なのだが、そんなチープな表現では表すことができない“何か”が確実にある。

 そして、その“何か”は聴く人の世界を変える力を持っている。それは聴いた瞬間に聴く者の気持ちをアゲるという短期的な効果があることはもちろんのこと、人生を変えてしまうほどの力もあるようだ。前者はTHE BLUE HEARTSを聴いて身体を揺らしたり、カラオケで「リンダ リンダ」を歌って狂乱する輩(=先日の筆者)だろうし、THE BLUE HEARTSを聴いてバンドをやろうと思い立ち、今ステージに上がっている人たちが後者に当たるだろう。

THE BLUE HEARTSの影響力

 THE BLUE HEARTSに影響を受けたミュージシャンの名前を挙げるとすると、それこそ枚挙に暇がない。バンドブーム以降のバンドは有形無形、大なり小なりの影響を受けているに違いないが、THE BLUE HEARTSの場合、ミュージシャンのみならずさまざまなシーンに影響を与えたことが見逃せない。劇団・第三舞台の主宰・鴻上尚史や作家の吉本ばなながファンを公言していたことは有名だし、漫画家の森田まさのりはかなりのファンだったのだろう。『ろくでなしBLUES』においてTHE BLUE HEARTSメンバーをモデルとしたキャラクターを登場させている。

 漫画と言えば、『迷走王 ボーダー』(狩撫麻礼原作・たなか亜希夫作画)も外せない。1986年から1989年まで漫画アクションで連載され、バブル期にその流れと逆行するようなその日暮らしを送る主人公たちを描き、カルトな人気を誇った漫画であるが、ラジオから流れてくるTHE BLUE HEARTSを聴いたことをきっかけに物語は主人公・蜂須賀がバンドを始め、東京ドーム公演を行なうという展開になる。つまり、THE BLUE HEARTSの出現がコミックのストーリーを変化させてしまったのだ。THE BLUE HEARTSに接した主人公・蜂須賀はこう言う。「“ブルー・ハーツ”は“実体”などなくなって久しいクソったれた《イメージ社会》がついに飽和点に達したことを告げる者たちだぞ!!」と。《どぶねずみみたいに美しくなりたい 写真には写らない美しさがあるから》「リンダ リンダ」の歌詞を的確に評しているようでなかなか興味深い。興味を持った人はお読みいただきたい。
 
 かように、音楽シーンのみならず、さまざまな影響を及ぼしたTHE BLUE HEARTSのパンクロック。聴く人の世界を変えてきた“何か”は、時代が変化しても損なわれることなくアルバム『THE BLUE HEARTS』に刻み込まれている。今も、そしてこれからもその効力を失うことがないであろう名盤である。

著者:帆苅竜太郎

OKMusic編集部

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